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Unmade -歪みし世界の中、人身御供となりて奏でた仮初めの青春譚-  作者: イチジク浣腸
仲間

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戦場の雷獣と悪喰の剣杖士

――特別講義告知の日


セラフィエル学園、正午の鐘が鳴り終わるその刹那、学年全体に向けて一斉通達が掲示された。まるで時が止まったかのように、生徒たちの目線が一斉に掲示板に集まる。その掲示物には、これから行われる特別講義についての詳細が簡潔に、しかしその内容に一層の不安と絶望を抱かせる形で書き記されていた。


《特別座学および実戦訓練告知》


今般も、国の許可を得て、下記の通り特別座学及び特別実戦訓練を執り行う運びとなり候。

学問と武芸の両面にて、己が至らぬを省み、志を高くせられたし。


対象:第一学年

日時:第1学期・第4週初日(来週)午前7時より

場所:学内・第五訓練場、第一座学ホール

講師:イデアトラ王国軍将軍アストラ・ヴォルト・レギウス卿

副講師:皇帝直属近衛騎士団《暁の鷲》団長 ベレト・マグナリア卿


学生諸君は、午前六時半までに第五訓練場へ集合のこと。指定された訓練装備を事前に受領し、着用して参加せよ。

いかなる遅刻・無断欠席も許されぬものとする。


セラフィエル学園総監:シュヴェルト・レギウス


廊下に掲げられたその告知を見た瞬間、学生たちは一様に動揺した。


「ア、アストラ・レギウス将軍って、“戦場の雷獣”って呼ばれてるあの……?」

「下手に魔獣の群れに囲まれた方がマシって噂だぞ、現役の戦場帰りだって……」

「しかも、副講師にベレト?“悪喰の剣杖士”って異名の……」


ざわめきが廊下に満ちる。

それは単なる講義ではない――“選別”があるのでは、と皆が直感的に悟ったからだ。


その場にいたノア・エヴァンスは、掲示を見上げながら鼻を鳴らした。


「ふーん、ガチの軍人を呼ぶってことは……また、面倒ごとが来るってことかな。おもしれぇ....」


「“面倒”って……それをあなたが言う? 正直ね、ノア。私から言わせてもらえば、あなたがいちばん面倒くさいんだから。ま、頑張って来なさい。あとで泣きついても、知らないからね?」と、エレナが淡々と突っ込む。だが彼女の指先は、掲示の名前に微かに震えていた。


その背後で掲示板を一瞥し、レタル・レギウスは、興味があるのかないのか、ぼそっと呟いた。


「……アストラ・ヴォルト・レギウス。」


この名を耳にしたエゼル・ノクスが、眼を細めて口の端を少し吊り上げる。


「へえ、マジか。苗字がまるっと一緒じゃねぇか。次の講義じゃ、“一族の恥”とか言われるんじゃないの?」


レタルは一拍、溜息のような沈黙を置いたのち、死んだ魚のような目をしてエゼルに向けて、悲しみを含み彼は言った。


「……帰っていい?」


その声音には冗談を冗談と受け止められぬほどの繊細さが宿り、エゼルの言葉が、思いのほか深く心を射抜いたものと知れるのであった。



その日から、学園には妙な緊張が走り始めた。

図書の本がいつもより借りられ、訓練場の使用率が上がり、学園の食堂では「体力つけとけ」という言葉が日常の挨拶になった。


そして、誰もが心の奥で、同じことを思っていた。


――何かが始まる。


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