プレーロマの咎(とが)
【神域】
― 堕ちた神々の終焉と始原の地 ―
それは、“堕ちた神々の世界”。
かつて神に座していた者たちが、
あるいは敗れ、あるいは忘れ去られ、
あるいは自ら王冠を砕き、
この場所に還った。
プレーロマ――それは、“神々の観念が、物理法則を超えて矛盾し、干渉する場”。
存在とは定義されず、定義されることで生まれ、崩れ、また立ち上がる。
そのすべてが、思考と祈りと忘却によって揺らぎ続けている。
漆黒の空が、いっそ冗談のように静かだった。
音のない空に、白銀の羽根が――堕天の残滓が、ひとひら、またひとひらと降り続けている。
「……まさか、帝都を襲うとはな、ベルゼブブ。
大勢の人間が、無惨に死んだぞ。」
ルシファーの声は、もはや光よりも鋭かった。
かつて栄光を司ったその眼差しが、今はただ、断罪の焔を宿している。
ベルゼブブは笑った。声はなかった。ただ、虚空が震えた。
「そう怒るな。ルシファー。いや、もう――“そう”ではないのだったな」
背後に浮かぶのは、あらゆる神性を腐食する黒の光輪。
欲望の象徴、それ自体が彼の名を象っていた。
「……お前の望む結果にはなっただろう?」
「だから、教えてくれよ。私の“パートナー”は誰だ?」
「……レタルじゃ、駄目か」
微かな揺らぎ。それだけが、ルシファーの感情の残響だった。
「駄目だ」
ベルゼブブの言葉に、世界がひとつ、喰われた。
「“あいつ”が唾をつけた。もう、あれは私の《領域》じゃない」
静寂。
「……そうかい」
「なら、教えよう――帝国直属騎士団、《暁の鷲》団長。ベレト・マグナリアだ。」
その言葉を聞き、ベルゼブブはただ笑みを浮かべた。
「そうか、再び向かわなければならないな。下界に。」
次の瞬間、神域の空が“破られた”。
世界が、高次元の存在を迎え入れるために、一瞬だけ目を閉じたのだ。




