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精力善用(過去編)

レタル・レギウス

~投げは必殺~


【大外刈り一発。気絶】


レタル・レギウスの大外刈りを受けた人は気絶する。

例外はない。

15歳の少年が放つ一撃が、大の大人を意識の彼方へと送り飛ばす。畳に叩きつけられる音は、通常の投げ技とは全く違っていた。鈍く、重く、そして致命的な響きを持っていた。


【投げ技の概念を変えた少年】

「投げはグラウンドに移行するための牽制」

そう考えていた柔術家がいた。名を、グレイヴ・ナイトフォール。この世界の格闘技において投げ技とは、相手を倒してマウントポジションを取るための手段でしかない。投げ技そのもので勝負が決することなど、ありえないと思われていた。

しかし、レタル・レギウスは違った。

彼にとって投げ技、特に大外刈りは文字通りの「必殺技」だった。相手を投げた瞬間、試合は終わる。なぜなら相手は既に意識を失っているからだ。

大外刈りの真髄

レタル・レギウスの大外刈りは、技術的に完璧だった。

組み手:右組みの完璧なグリップ - 右手(釣り手)で相手の襟を掴み、左手(引き手)で相手の袖を制する

間合い:相手が反応する前に一歩で踏み込む距離感

タイミング:相手の体重移動の瞬間を見逃さない観察眼

釣り手の威力:右手で相手の重心を完全に浮かせる圧倒的な引き上げ力

引き手の精度:左手で相手の袖を引きながら、完璧に体勢を崩す技術

刈り足:右足で相手の左足を確実に刈る強靭な脚力

釣り手と引き手の連携:右手(釣り手)と左手(引き手)の連携で相手を畳に叩きつける絶対的な破壊力

これら全ての要素が、15歳の少年の身体に宿っていた。


【柔道の原点回帰】


柔道は「一本を取る」ことが目標とされている。しかし、レタル・レギウスの柔道は違う。彼の目標は「相手を無力化する」ことだ。

技ありでも、有効でもない。相手が気絶するか死ぬまで、力強く投げ抜く。それがレタル・レギウスの柔道哲学だった。

古来の柔術がそうであったように、彼の技は実戦を想定している。道場での試合ではなく、生死を分ける戦いの中で磨かれた技術。それがこの世界に蘇ったのだ。

15歳という驚異

レタル・レギウスは右組みの柔道家だった。右手(釣り手)で相手の襟を掴む瞬間、すでに勝負は決している。

組み手争いなど存在しない。彼が望むグリップを取った時、相手の運命は決まっていた。釣り手の握力は常人の倍以上、引き手の制御力は機械のような精密さを誇る。

右組みから放たれる大外刈りは、技術書に載っている理想形そのものだった。しかし、その威力は理論値を遥かに超えていた。

通常、柔道家が真の強さを発揮するのは20代後半から30代にかけてとされている。筋力、技術、経験、全てが揃って初めて頂点に立てる。

しかし、レタル・レギウスは15歳にして既に完成している。

体格こそ同年代の標準的なものだが、その技には年齢を超越した何かが宿っていた。まるで生まれながらにして柔道を知っていたかのような、天性の技術。

対戦相手の証言

「組み手を取られた瞬間、もう抵抗できなかった」

「釣り手で持ち上げられて、引き手で引かれた時には体が宙に浮いていた」

「右足で刈られる感覚すら覚えていない」

レタル・レギウスと対戦した者たちの証言は、驚くほど一致している。彼らは皆、大外刈りの瞬間の記憶を失っているのだ。

あまりの衝撃で、脳が防衛反応を示すのか。それとも、技のスピードが人間の認識限界を超えているのか。

いずれにせよ、レタル・レギウスの大外刈りは、相手から記憶すら奪う技となっていた。


【練習風景の異常性】


レタル・レギウスの稽古風景は、一般的な道場のものとは全く違っていた。

彼は道場には通わない。代わりに、とある人物と日々稽古を重ねている。その人物が何者なのか、詳細は明かされていない。ただ一つ確かなのは、レタル・レギウスの圧倒的な技術は、その特別な指導によって磨かれたということだ。

時折、他の格闘家たちが彼に挑戦する機会がある。しかし結果は常に同じ。挑戦者は次々と気絶していく。それでも彼と対戦したがる者は後を絶たない。なぜなら、彼の技術を間近で見る機会は貴重すぎるからだ。

投げられる瞬間の感覚を覚えている者はいない。だが、投げられた後の体の軽さ、まるで生まれ変わったかのような感覚を語る者は多い。

レタル・レギウスに投げられることは、ある種の通過儀礼となっていた。

技術指導者としての一面

興味深いことに、レタル・レギウス自身は非常に丁寧な技術指導者でもあった。

彼は自分の技を隠そうとしない。「釣り手はここを持って、引き手はこう引く、そして右足で刈るんだ」と、大外刈りのコツを惜しげもなく教える。右手での襟の持ち方から、左手での袖の引き方まで、全てを丁寧に解説する。

しかし、教わった者たちが同じ威力を出せることはなかった。

技術は伝えられても、その根底にある「何か」は伝えることができない。それが天才と凡人の決定的な差なのかもしれない。

柔道界の古老たちは、レタル・レギウスを見て伝説の柔道家たちを思い浮かべる。

かつて語り継がれてきた絶対的な柔道家の逸話。15歳で大人を投げ飛ばした天才の物語。

レタル・レギウスは、そうした伝説の再来なのか。それとも、それを超える存在なのか。

これから始まる物語

やがてレタル・レギウスは学園に入学することになる。そこで彼はどのような相手と出会い、どのような戦いを繰り広げるのか。

「とある人」との稽古で培った技術が、学園という新たな舞台でどう発揮されるのか。

今日もどこかで、レタル・レギウスの技が炸裂している。

新たな挑戦者が現れ、そして気絶していく。その繰り返しが、彼の伝説を日々更新している。

15歳の少年が放つ一撃が、この世界の常識を打ち砕き続けている。

学園入学を控えた彼の物語は、まさに今から始まろうとしていた。

投げは必殺。

それがレタル・レギウスの柔道哲学である。

技一発で相手を気絶させる15歳の少年。

現代柔道界に現れた、生きる伝説。

彼の前に立つ者は、覚悟を決めなければならない。

なぜなら、次に目を開けるのは救護室のベッドの上だからである。

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