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異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)  作者: ニキ
1-1:出会いを見せずに最初から関係値MAXのヒロインが出てくる作品は基本的に駄作らしい

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1-S:単行本に付いてる4Pリーフレットのようなもの①

 RPGやアクションゲーを齧ったことがあるなら分かると思うが、この手のゲームの敵キャラにMPが設定されていることは稀だ。

 或いは設定されていても戦闘が短期決戦だったり、馬鹿みたいな数値でそもそも使い切られるよう想定されてない場合もあるが……つまるところ言いたいのは『ボスキャラってプレイヤー側と違ってMPが尽きないからクソだよね』という話。


 魔力が無限である設定を『是』とした場合、使える技のランクが低かったりするのは辻褄が合わないけれど、開発側の『難易度調整』という何よりも優先される真理の前では、きっと考えるに値しないことなのだろう。




 ──畢竟、エミはそんな屁理屈を現実に落とし込んだ奴だった。



「──もしも魔力が無限なら総出力に物を言わせてゴリ押せばいいだけだ。なのに属性で有利取ってんのにホンに出力で負けてんだ、保持魔力上限が低い代わりに無尽蔵に回復するとかそこら辺か?」

「……ははっ! 誰が聞いても信じないわよその推理!」

「俺にさえ説明が付けばそれでいい。……さて?」


 覇天祭と呼ばれる行事がある。

 学園物のラノベでありがちな『各学校の代表チーム同士を戦わせ、優秀者はどんな願いでも叶えられる』的な大会たるそれに向け、姉妹校での交流戦が行われることになった。

 舞台はその交流戦の最終局面(・・・・)、総大将として俺が対面したのは頭が痛くなる程のチートスペックボス(・・・・・・・・・)


 ゲーム特有の仕様を現実(作品内の設定)に落とし込んだ結果、バグみたいな挙動(魔力が切れない)をするキャラクターが如く、その少女に(・・・・・)消耗は何一つ無い(・・・・・・・・)


 ここまで来るのに不備は無かった。消耗も最低限だったし、学園側が選抜したのはこの学年の最高戦力上位五名だ。だっていうのに……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ジャ〇プなら普通こっちの味方全員が都合良く勝ってる展開だろ、何で揃いも揃って負けてんだろう俺のお仲間達は。


『マズイぞアラタ(・・・)、ゴリラが動き出した!』

(後こっちは誰が動ける?)

『ホンはエミに落とされた、エドワードもクソゴミメガネを道づれに自爆済み。馬鹿は無様に気絶中、ハルトはボロ雑巾で転がってる!』

(……ゴリラの状態は?)

『ダメージは入ってるが……削れてて半分』

(あんまりにも終わってるってぇ!)


 ついさっき形成不利と見て切り札切って無理矢理一枚落としたってのに、相手側の残りはエース(ホン)ぶつけてんのに軽傷で済んでる化け物女+軽傷のフィジカルゴリラの二枚らしい。やってられるかこんなんよぉ! なんで理想編成組んでんのに勝つのに三タテ要求されてんの? どこかミスがあったなら後でもいいから誰か教えてくれよ。


(ああもう大方察したわ、どうせこれあの馬鹿(・・)の覚醒イベントか何かだろ。心強い筈の仲間が全滅してから勇者の資格か何かに目覚めて覚醒ちゅどーん無双してGG主人公様カッコイーってか? 冗談じゃねぇ! シナリオの都合(忖度)で俺を負けイベに巻き込むんじゃねぇクソ神が……!)


「──ッハルトォォォォォ!!!」


 この体を絶対に傷付ける訳にはいかない。

 ()がどれだけ痛みを受けようがそんなのはどうでもいいけど、アラン君(・・・・)にも痛覚のフィードバックがある

 以上、無傷以外の勝利は断固として許さない。

 これ以上この子(アラン君)を酷い目には遭わせない。それが俺に出来る贖罪で、それだけが今俺が生きている理由なのだから。

 例えどんな理不尽が前に現れようと、例えどれだけの他の夢ある子供(友達)を踏み潰そうとも。この子(・・・)の痛みと天秤に掛ければ、俺の心なんざ幾らでもブチ殺して非情になってやる。


『おいアラタ何を考えてる!? ハルトはもう限界だ! それならまだ寝てるだけの馬鹿を起こした方が──』

(今この状況に必要なのは根性(・・)だ。俺達が負けずに勝利するならハルトに死んでも時間を稼いでもらうしかない……2対1は無理でも1対1を二回ならギリどうにかなる、ていうかする)

『……お前、』


 戦場に響き渡る魂の点呼。

 今にも突っ込んできそうな相手さんちの肉達磨だが、お前の相手は俺じゃねぇ。

 主と仰ぐ俺に名を呼ばれ、離れた場所から小さな物音が鳴った。微かに、それでも確かに鳴った。

 誰よりも信頼してる、誰よりも仲間思いの幼馴染が、届いた声に限界を押し切って応えようとしてくれている。……捨て駒として使われることを理解して、尚。


「──今からコイツを秒殺する! 見たけりゃとっととその肉達磨叩き潰して観戦してろ!」

「……随ッ分と余裕綽々じゃない? これでも私、そっちのエースにタイマンで勝ってるんだけど?」

「オマケに魔力の消耗も無いと来た……俺が相手なんだ、いいハンデだと思わないか?」

「……あまり、私を舐めるなよ……!」


 大声で最後の激励を言い放つ。こう言えばあいつ(・・・)ならきっと立ち上がる。ただ俺のためだけに、命を懸けて盾を全うしてくれる筈だ。

 口調が自然と荒々しく変換されるのももう慣れた。ごめんね息をするように煽っちゃって、それはそれとしてお前はふざけるのも大概にしろマジで。何なんだよ魔力切れしないって、瞬間火力以外勝ち筋無いの控えめに言ってゴミ以下だろ。


 ……後方で力と力がぶつかり、爆ぜる。地獄に引き摺り込んだ友人の死闘が始まったのだろう。


 長期戦は不可能、被弾も禁止。

対面には無尽蔵の魔力で常に最大出力をぶっぱし続けられる、運命が遣わせた最悪の死神(チートボス)が聳え立つ。

 あー絶望(クソゲー)、何でこう必死に生きてるだけで負けイベ(無理ゲー)が向こうからやってくるんだろう、アラン君のために踏み潰さなきゃいけない俺の身にもなれよちくしょうが……!



「「──死ね」」





 ──これが後に長い長い付き合いとなる、相棒(エミ)とのファーストコンタクトの記憶だ。

備考:異世界における新とアラン

新…肉体の制御権を持つ。強制的に憑依させられたアラン君に負い目しかないし、体を返せるなら返したい

アラン…口調がこちらに寄る。精神体がこの時はまだ同居中。肉体に損傷を負うとちゃんとこっちにも痛みが走る(鬼畜)

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