1-4-O:誰も知れない君を知る
失踪してたと思ってたら唐突に連続更新して読者を驚かせましょう!(ストックなにそれおいしいの)
──例えば、家族がペットを拾ってきたとして。
感情論を除いてしまうのならば、それの世話に実益なんて無い。
食費、病院費、世話の手間、飼育スペースの確保、必要ならば散歩やおもちゃの用意。切って捨ててしまうのなら、それらは自分が普通に生きる上で本来負う必要の無い負担だ。
もし、そのペットを飼い主本人が連れてきたのならば、現れ背負うことになる負担の数々は──責任の所在は飼い主にある。
本来存在しなかった飼育の負担は、そもそも飼い主が拾わなければ生まれなかった。
飼い始めたのはお前なのだから、責任を取る必要があるのは飼い主だけだ。
では、もし仮に。
本来飼うつもりの無かった飼い主の家に、ペットを飼うには余裕の無い家に、ペットの方から無理矢理『ここに住む』と押し掛けてきたとしたならば──生まれる負担の責任の所在はどこになるのだろう。
飼い主が優しい人だった? 飼うつもりは無かったけど飼い主はそのペットを気に入っていた? ……だからその負担は受け入れられるって?
情という物で煙に巻くには簡単で。
思い出を人質に見て見ぬふりをするのは気が楽で。
それでも直視するのなら……私は、飼い主が本来背負う必要の無い負担だった。
誰にも言わずに彼は帰るつもりだった。
それを知ったのは当日で、私にも隠し通す筈だった彼の前に、私は無理矢理押し掛けた。
彼は誰にも話さなかった。私にも話さなかった。私が帰還を知ったのは、彼の唯一の協力者が私だけに裏切ってくれたからだ。
私は現実を逃避しない。
彼が全く私を負担に思っていないことは知っている。
私を楽しませるのが好きなのが本心なのも知っている。
こんな思考を話せば確実に笑い飛ばされるであろうことも、知っている。
それでも、それだとしても……何も知らない異世界で一方的にお金と手間をかけさせている事実は、どうやったって消えはしない。
「…………」
「ん? どしたエミ?」
そんなこと気にするなとか、今まで助けてくれたんだから今更だろとか絶対に言うだろう、今は黒髪の彼を見る。
彼はただの学生だった。
滅茶苦茶お金を持ってるわけでも、特別な才能で暴れてるとかでも、優れた頭脳や身体能力があるとかでも無い、15歳の少年だった。
軽い運動だけでへばり、気を張りすぎて寝不足で倒れたり、家族に頼ることを躊躇する、ちょっと辛い過去があるだけの等身大の少年だった。
「……いや、アランと比べると改めて身長低いなぁって」
「あ゛ぁ゛ん゛!?」
「上城くん、電車の中では静かに出来る?」
「アッすいません……」
恨めしげに私を見る下からの彼の視線。それを知らんぷりして窓の外の景色を見る。
移り変わっていく速度は馬車より速く、彼が人力ブレーキで止めたあの魔導列車より揺れない、彼の故郷の乗り物から、彼の生まれ育った世界を知っていく。
晴天に照らされた田園が後ろへと、シックな配色の角張った民家達が後ろへと、背の高いアパート? が時々車窓の全てを塗り潰して、けれどそれも後ろへと。
揺れて、揺れて、揺れながら、空中を走る謎の配線と共に彼の暮らす世界を知っていく。
「…………」
──彼を知れない友達に代わって、私だけが彼の世界を知っていく。
備考:タイプ
お互いよく逆に間違われるが、実は新の方が理性的でエミの方が論理的だったりする
ざくろ? 感情的の塊だよ




