1-3-E+C:いつものエンディングをカットしたダイジェスト形式の定点カメラ映像にスタッフロールだけ流す特殊回
本来10月中に1-4まで終わらせるつもりでした
何とは言いませんが池ハロに間に合ってないんだよなぁ
テレビなら30分として取られているアニメ一話分の放映時間は、CM等が除かれた配信サイトでは24分と少しまでに縮小される。
地球での一年は365日、それを7で割れば52となり、更に4で割って出る13という数字は……深夜アニメ枠の基本的な話数上限だ。
俗に1クールとも言われる13週間。その中で週一放送される深夜アニメは、大体の作品が12話前後で完結する。
人気作や原作ストックが足りてる場合二期有りの分割2クール構成や、クールぶち抜き全24話連続放送等の手を取ることもあるのだが……こと『中二病でも恋がしたい!』の話をするならば、この作品は『合計2クール一期12話二期12話の全24話構成(+OVA有り)』である。
──以上の解説を踏まえた上で、この鑑賞会(一期)完走までに掛かる具体的な時間は……(24+α)分×12(+OVA1)話=312+13α分で、つまるところ大体5時間半だ。
「ちゅーしろ!」「は? さっきからこの子可愛過ぎない???」「中二病って言われてるけど、この服装普通にかっこいいわよね?」「いいわ! そこでもう押し倒しなさい!」「もう早く付き合いなさいよあなた達!?」……等と元気に叫んでいたエミさんも、流石に最終話を迎える頃には口数も減り、澄み切った幸せ顔で物語の余韻に浸っていた。
「…………はぁー、さいっっっこう、だったわ……」
空色はすっかり黒く染まり、帰る気無さそうなざくろと共に夕餉をつつく。エミという栄養素で俺達の精神は潤ったものの、肉体側の生理現象は無視も出来ないのが面倒臭い。
未遥さんの作り置きと炊いた白米という時短極まるラインナップは、途中の過去回想等で情緒が破壊されるエミを肴に菓子や飲み物をつまんでいただけあって十分な量である。
「……さてエミさんや」
「うん? なぁに?」
「この続きがあと12話あるって言ったら今日見る?」
「見る!!!」
鑑賞会、5時間半の追加が確定。
完食後の暫しの休憩時間、ぽやぽやしてるエミに聞けば突然目を見開いて返された。あぁこれ完全に沼に堕ちたな? ざくろの表情が脳内に完全勝利UC流れてる時のそれなのだが。
洗い物を片す間にエミを風呂へと叩き出せば、正にカラスの行水と言った具合に爆速で帰ってくるや否や、寝巻きに身を包んだ頭を俺にゴスっと押し付けてくる。……この服装の方が安全に思えるのなんなんだろうな本当に。
「……覗かないでよ? アニメ見てるからってフリじゃないからね?」
「ならエミを監視に付かせればいい?」
「……それもそれでお風呂の音聞かれるの恥ずかしいな……」
手動(字面通り)でエミの髪を乾かしながら、泊まる気満々なざくろを入浴へと送りだす。何やら心外なことを言われちゃいるが、彼女なりの冗談だろと適当に流しておいた。
着替えはエミの物を貸したのだが、上がった彼女は大分見た目の印象が変わっている。
サイズが合わず少しダボッとした着こなしになったざくろちゃんは、想像以上にちっこくて細かった。
濡れて艶のある黒髪はツーサイドアップからストレートへと、瞳の色はマリンブルーからオニキスへと様変わりしていて、少し意表を突かれるくらい可愛い女の子が、ぺたぺたと素足でこちらへと歩いてくる。
「ドライヤーが無かったんだけど……上城くん? それ、私にもやってくれるんだよね?」
「アッハイ」
底知れぬ圧を感じる。エミだけなら別にかわんでいいかと思ってたのが裏目ったちくしょう。
粛々と温風を作ってざくろの髪を乾かしていくが、触り心地がサラサラでかなりケアされてるな……
見下ろせるもっちもちの頬は若干の赤みを見せていて、気付いた瞬間一時的に手が止まってしまう。そうだよね、男に触られるのとか嫌だよね。……突発的な来客もこれ以降あるかもしれないし、ドライヤーとかもちゃんと買わなきゃなぁ。……なぁエミ? その謎の生暖かい目線は何だ?
「……なんて読むのこれ?」
「戀。かっこいい漢字だよね」
「察した」
ナンバリングすら尖っているアニメに対し、もう慣れたという表情で再度の定位置にエミが着く。
夜の9時は高校生にとってのゴールデンタイム。目をギラギラさせながら若干ハイになってる異世界人の右隣に、まだ全然体力が余ってそうな歴戦の兵士も着席。
美少女二人が自分の家で並んで楽しそうに座っておる。遠目から見てたい光景が過ぎるんだけど明日俺死ぬのかな? あっなんか凄くいい匂いがする。自分の家なのに。
「「──ほら早く!」」
……本当に君たち仲良いねぇ。
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『ジリリリリリリ──!!!』
「……ぅるさい」
──ベランダの外から小鳥の囀りが聴こえる。
気だるげな声。やかましさ極まるアラームの息を止め、最初に認識した感覚は人肌の柔らかさ。
背もたれに沈んだ体は複数人の重量による結果。「うぅ……んぅ?」と耳に届いた不自然に目を覚ました柔らかな体温が、陽光に銀を反射させながら身を起こしていく。俺の胸の前からゆっくりと。
しぱしぱする目を擦れば10cmも無い距離にエミのつむじがあった。身を避ければ彼女の膝元に転がっていたざくろの寝ぼけ眼と目が合った。
余りにも朝。なんとなく、大学生の宅飲み開けってこんな感じな気がしたよ。
「……いまなんじ?」
「……時計は11時とは言っている」
「馬鹿寝ててくさぁ」
それぞれエミ、俺、ざくろの順に死んだ頭でのコミニュケーションに取り掛かり、のそのそとソファから脱出を図る。
……あれから探したらあった劇場版で更なる延長戦をした後に、気絶するようにぶっ倒れたのまでは覚えてる。
エミが泣いたり発狂したり興奮したりと騒がしい鑑賞会だったが、総じた感想は『最高』の一言に尽きると思う。
話の内容、それ自体も素晴らしい物だったが、やはり初見勢の反応こそオタクの求める主食なんだよなぁと改めて確信したわ。
「『ねぇ、なんで勇太は分裂出来ないの?』が最大風速だったなぁ」
「ねぇアラン? 人の情緒の崩壊を笑うのやめてくれない?」
「クソ〇に幸あれのコメント欄が脳内にチラついてあれは私も爆笑し……ん? 待って私のスマホどこ?」
「あ、ごめん、アラームうるさくて消音結界に隔離してた」
人様のスマホを勝手に弄る訳にもいかず、一先ず魔法で音を消しただけのざくろのスマホ。解除して渡すと同時にけたたましい音が鳴り響き、エミがびっくりして思わず耳を塞ぐ。現代器具に慣れてない異世界人は可愛いなぁ。
「……あれ? なんで私アラームなんて掛けてるんだろ、う…………」
手馴れた操作で音を止めた少女は、寝起きの回らない頭で不思議なことを呟いたと思えば、何かの合点がいったのか途端に黙って俺とエミの顔を見比べ始めた。
まるで少し恥ずかしい秘密を話すかどうか迷っている子供のような仕草の彼女。……これ聞かれるの待ちかな? と俺から聞こうとする直前、意を決したのかざくろが先んじて口を開く。
「あの、唐突なんだけどさ…………二人って、知らないライブとかに誘われても見るだけでも楽しめるタイプ?」
──日は5月の3日を示し、空模様は気持ちいいまでの快晴に恵まれて。
祝日が直撃している土曜日はイベントに事欠かなく、それ故に交通量もやばいこと間違いない。
よっぽどの理由が無ければ外出なんてしたくない日。それなのに人を当日に誘うということは、かなりの勇気がいる行為である。
知り合って間もなくても、それでも彼女がそれを口にしてくれたのは……きっと、誘ってもいいんじゃないかって思える友人になれたからで。
「私、今日、アニソンランダムダンスってイベントに行く予定だったんだけど……良かったら、一緒に見に行ってみない?」
──その言葉が俺とエミの人生に一体どれ程の転換を与えるかなんて知らずに、ざくろはそう恥ずかしそうに聞いてきたのだ。
1-3章のサブタイトル設定
用語:クソ女に幸あれ
ジャンプラで連載されている漫画。ヒロイン二名が可愛過ぎてコメント欄で常に分裂を求められている
用語:アニソンランダムダンス
1-4参照




