表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

若い大学生の録音

 そうです。死体を見つけたのは私です。倒れていたのが、一花さんと今城先輩だってすぐに分かりました。正直、あまり思い出したくないのですが、神社へ通ずる長い階段の下に、今城先輩と一花さんが両者とも水溜まりのそばで、仰向けになっていました。すぐに救急車を呼びましたよ。結果はご存じの通りです。そして。うーん。

 未練があるのです。

 今城先輩と最後に会ったのは、その前日の軽音サークルでした。夏ライブまで、残り一週間だったから、私と今城先輩と他二人で、リハーサルをしましたね。この時の一花さんは部屋の端で座って、練習が終わるまで、ずっといましたね。七時くらいに解散しましたけど、今城先輩は練習中にずっと元気のない表情をしていましたね。

 たしか、四年生にあがったころから、二人とも暗くなった気がします。それで一花さんは心配そうに、いつも今城先輩のそばにいましたね。そうですね。今城先輩は成績が優秀なほうでした。もともとは医学部志望とか、本人は言っていましたね。でも一花さんの成績は良くないって聞きました。だから、今城先輩は二年生のころから、一年生の一花さんと一緒に、よく図書館で勉強していましたね。彼らは昼食もよく一緒に食べていましたね。その翌年も同じでした。

 当然、なぜ一花さんが今城先輩と付き合っていたか、周りの人はみんな疑問に思っていましたよ。私も今城先輩と初めて出会ったときは、ぞっとしましたよ。だって、文字通り人格が二つあるし、その人格が目に見えていましたからね。別に今城先輩は危ない人ではなかったですよ。後輩の私にも夕食を奢ってくれたし、キーボードの弾き方も教えてもらいました。ただ、その見た目のおぞましさに、大学内では名前を知らない人はいませんでしたね。でも、今城先輩はムードメーカーというか、明るい人だったから、私の同級生の間では、彼の悪い噂はなかったですね。だから、なんで一花さんを殺したのか、ますます分からなくなりますよ。

 でも、今思えば、就活のストレスが原因ですかね。先輩も四年生だったし、春ごろには体調不良が原因で、しばらく大学を休んでいましたね。私と一花さんは同じゼミでしたから、出席していた彼女に先輩のことを聞いてみると、どうやら胃潰瘍や蕁麻疹を患っていたそうです。それで一花さんは学校終わりに、先輩の家に行って、看病してあげていたそうです。それから数カ月、彼女の顔の血色はだんだんと変わっていきました。彼女も笑顔が多い人でしたから、彼女の衰弱する姿は、見るに堪えないものでした。そしてあの日を境に、暗く見えた彼女の顔は、ようやく落ち着いたと言いますか。どう表現すればいいでしょうかね。

お聞きいただきありがとうございます。次は被害者の母の録音です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ