表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奪ったのではありません、お姉様が捨てたのです  作者: 佐崎咲
第一章 最後の尻ぬぐい
6/29

第5話 王太子の新たな婚約者って、誰のこと?

「国境への兵士の配置は済んでいる。砦の建設も機能的なところは終えているから万一のことがあっても持ち堪えるだろう」

「先程、水晶もグニールに届いたと連絡がありましたので、これですべて配置できましたわ。あとは来週、陛下の演説を皮切りにして、各地の領主と城から使いにやった者とで人々に話を広めていくだけ。じきに新たな防御壁が広がることでしょう」


 向かいに座る国王陛下と王妃殿下がそう話すのを、何故私はレガート殿下の隣で聞いているのか。

 殿下はあちら側ではないのか。

 気にはなったものの、ようやっとここまで来たとほっとした気持ちが湧き上がる。


 今は現聖女である王妃殿下が防御壁を維持しているが、今後は物理的な守りとしての砦と兵士の配置、それらを覆う新しい防御壁の二層でこの国を守っていく。

 各地に水晶を配置し、それらに国民たちが祈り、魔力を注ぐことで国全体を覆うように防御壁を広げる。

 これまで国民たちの命は聖女一人に委ねられていたが、聖女が病気になったら、事故に遭ってしまったらと心配する必要もない。

 今後はそれを自分たちの力で維持していくのだ。

 それぞれがそれぞれの住む場所を守ることによって、地域の一体感も高まることだろう。


「レガートもローラも、よくやってくれましたね。最悪の事態を招かずにすみ、何よりもこの国の守りはより盤石となりました」


 王妃殿下にそう労われ、私は恐縮した。

 準備が進んでいたとはいえ、義姉が突然いなくなったせいで急がねばならなくなったのだから。

 当然お二人にも多大な迷惑をかけている。


「ありがとうございます。しかし義姉のしたことは――」

「ローラだけが気に病むことではないわ。私にも、次代の聖女にクリスティーナを選んだ責任があります」

「レガートの婚約者に彼女を選んだのも、我々の責だ」


 王妃殿下と国王陛下にかわるがわるそう言われて、私は一層恐縮するしかない。


「そう言っていただけることを心からありがたく思います。ですがやはり、義姉を諫め、役目を果たすよう促すことができなかったことは事実です」


 私程度の人間がとれる責任など多くはない。

 それでも覚悟を決め再び頭を下げた私に、しばらくの沈黙が下りた後、国王陛下が静かに口を開いた。


「そうだな。ローラがそのように考えているのならば、一つ責任をとってもらいたいことがある」

「ええ。やはりクリスティーナが空けた穴は埋めてもらわなければね」


 思わず顔を上げると、笑みを湛える王妃殿下の隣で国王陛下が厳めしい顔を作り、言った。


「ローラ・ファルコットよ。我が子レガートを支え、共にこの国を守っていってほしい」

「はい、もちろんです。できる限りの力を尽くさせていただきます」


 そう答えると、王妃殿下はにっこりと笑った。


「ありがとう。ではレガートの婚約者として、今後もよろしくね」


 聞き間違いかな、と思った。


 反射的に隣に座るレガート殿下を見るが、慌ても驚きもしていない。

 どういうことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 私事で恐縮なのですが、この話に出てくる自称真面目な姉に苦しめられていた妹が友達なので、読んでいて溜飲が下がりました。
2023/06/04 18:24 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ