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異世界転移し続ける『罠師』勇者ケンの英雄譚  作者: 茉莉多 真遊人
第1部5章 『罠師』、風の魔将と戦いに備える。

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30/89

1-Ex1. アーレス、世界の理に驚く。

約3,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 昼過ぎの岩山でアーレスは世界の理を体験していた。


「これが世界の理ですか!」


 アーレスは目の前のトロールを前に、『刀剣生成』でいくつものショートソードとチャクラムを生成していた。



 時間を少し戻す。


 アーレスは荒野で薬草を探そうと考えて外に出ようとしたところ、衛兵に薬草がある場所は岩山の方が近いということを教えてもらった。彼女の知っている薬草の生えている場所はたしかに少し距離があり、岩山の方なら近いというのでそちらへ向かったのである。


 薬草は確かに岩山側の方に向かってすぐのところにあり、彼女は喜びながら2,3本摘んだ頃、遠くから大きな咆哮が聞こえた。彼女が急いで向かうとそこには、トロールに追いかけられている冒険者たちがいたのだった。


「ちっ!」


 アーレスはチャクラムやショートソードを放つが、トロールの頑丈な身体には小さな切り傷を負わせる程度だった。そして、すぐ血が止まる。


「一撃のダメージが足りないか……」


「グルル……」


 トロールは喉を鳴らす。藻のような緑色の毛に覆われた3mを超える巨躯に、長い鼻と耳、そして、異臭を放つのがトロールの特徴だった。足の動きはかなり緩慢でまだこちらに来ない。


 ただし、冒険者たちの臭いを辿っているのか、確実に歩みを進め、城下町の方へ向かってくる。


「すみません、どうして、トロールがいるんですか!?」


 アーレスは、自分と一緒に残った冒険者グームにそう話しかける。グームの一行は隣国ランドンケラからの帰りに偶然トロールと遭遇したようで、残りの冒険者たちが城下町に応援を呼びに行っている間、アーレスとグームが食い止めることになった。


「神の創りし砦から、すーっと出てきたんだ! ダンジョンから出てくることは、滅多にないはず。何かが起きているようだ!」


 アーレスから見て、グームが風の魔将の話を知っているのかは定かではないが、異常事態であることは理解しているようだ。


「分かりました! 数はこの1体だけですか?」


 アーレスがグームにそう訊ねると、彼は少し沈黙した後に口を開く。


「それは分からないが、追いかけてきたのはこの1体だけだ」


「分かりました!」


 アーレスは非常時用にと渡された球を少し見るが、すぐにトロールの方へと向き直した。


「……これは私の依頼だ」


 アーレスはケンを呼ぼうか迷った末にやめる。彼もBランクと戦っているかもしれず、頼りっぱなしになるのはよくないと判断したのだ。


「それはそうと、あなたもケガをしているじゃないですか! どうして残ったんですか!」


「そうだが、勇者候補殿でお強いとはいえ、お嬢さん一人を置いていくなんて、何のための傭兵や冒険者か分かったものではない! 役割分担だ。攻撃はお任せした。私は前衛で防御に徹する!」


 グームはそう言うと、立ち上がってトロールを見据える。


「ケガをしているのに前衛なんて無茶な!」


「大丈夫だ。ご覧の通り、トロールは動きが緩慢なことで有名だ。実際、足はもちろん、腕もそんなに速く動かせない。一方で逃げ足は割と速い私だ。何とか避ける」


 グームなりの冗談だったようで、少し笑みを浮かべながらそう言ってきた。


「では、このロングソードを一応持ってください」


「ありがたい」


 グームはロングソードを受け取ったことを合図にしたかのように、アーレスよりも早く飛び出した。


「ノロマめ。捕まえられるかな?」


 トロールの大きな腕が振り回されるが、グームはトロールの周りを機敏な動きで躱していく。だが、決して気を抜けるようなスピードではない。


「やあっ!」


 アーレスはチャクラムをいくつも射出しながら、男の姿になってロングソードよりも大きな幅広剣クレイモアを出して振りかぶった。


 頭部への一撃かと思いきや、トロールが咄嗟に腕を出して受け止める。クレイモアは腕を切り落とすまでには至らず、深々と刺さったままだった。


 トロールがその腕を振り回したことで、アーレスはクレイモアから手を離して、ドサッという音とともに着地する。


「ぐっ!」


 トロールはクレイモアを引っこ抜いて投げ捨てる。トロールの腕からは血がドパっと出てきたが、間もなく血が止まり、腕の痛みなどないかのように振り回してきた。


「トロールは、その怪力や硬い皮膚もそうだが、凄まじい回復力が最大に厄介なところだ。倒すには頭部か心臓部への一撃しかない」


 グームはアーレスの方に駆け寄り、そう呟いた。


「もっと強い一撃を出すしかないですね」


「私にもクレイモアを出せるか? 後、何本出せるんだ?」


 グームがアーレスにそう訊ね、アーレスは首を縦に振る。


「クレイモアなら同時に15本まで出せます。何か考えが?」


「作戦ってほどでもない。ただのごり押しだ。お互いに片腕を担当して、残りのクレイモアを頭上から脳天直下で見舞ってやれるか?」


 グームはニヤリと笑う。


「可能だと思います。やってみましょう」


 アーレスはグームにクレイモアを渡す。


「行くぞ!」


「はい!」


 アーレスとグームは駆け出した。さらにアーレスはトロールの頭上遥か上に残りのクレイモアを待機させる。


「グルルァァァァァァッ!」


 トロールは2人を目掛けて、両腕を振るう。


「ぐうっ!」

「ぐぐっ!」


 2人は強い衝撃を受けつつも何とか耐えきり、腕を一瞬止めることに成功する。次の瞬間、上空で待機していたクレイモアが一斉に降り注ぐ。


「ガアアアァァァッァァァァァッァァァァァッァァッ!」


 回復力の高いトロールもさすがにこの攻撃には耐えきれず、頭から全身を引き裂かれて大量の血をまき散らしながら崩れ落ちた。


「あぁ……よかった。トロールはダンジョンの中でも天井が自分の身長くらいの洞窟内に住んでいるので遥か上空からの攻撃に咄嗟に反応できなかったのだろう」


 グームは腰が抜けたかのように、ドサリとその場に座り込んだ。アーレスも座り込む。


「助かりました。私一人では無理だったかもしれません」


「そんなことはない。いずれこの答えか別の答えに辿り着いていたさ。勇者候補殿は本当にすごいな! 応援しているぞ」


 グームはアーレスに満面の笑みでエールを送っていた。


「ありがとうございます」


 アーレスは少し気恥ずかしくなる。


「お、ほら、そこに見えるのが魔石だ。ぜひ使ってくれ」


 クレイモアが引き裂いたトロールの身体の中には、大きめの赤い色の魔石があった。


「ありがとうございます。もっと強くなって必ず世界を平和にします」


「頼んだぞ。未来の勇者」


 アーレスとグームは固い握手を交わした。


「しかし、すまなかった」


「はい?」


 グームの突然の詫びに、アーレスは疑問符が浮かぶ。


「いや、最初はお嬢さんに見えたが、どうやら、気が動転していたようだ。よくよく見れば、勇者殿は筋骨隆々の立派な男じゃないか」


「いや、あはは。そうですね」


 わざわざ伝えるまでもないと思い、アーレスはそのまま話に乗っかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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