1章D 狙撃
太郎たちは、稲垣の指示に基づいて、危険な状態に陥っている第5部隊の増援に向かう。
「もうすでに第4部隊は壊滅しているんだろう太郎?下手に俺たちだけで行っても勝てるのか。」
広山は不安そうな表情だった。確かに、第8部隊から援軍3人だけというのは焼石に水のようにも感じられる。一刻を争うからと言って、むやみに駆け付けても状況は変わらない。
しかし、太郎に広山と同じ不安はなかった。
「やり方次第だ。奇襲をかける時には、工夫一つで大きな効果が得られる場合もある。」
太郎は基本的に、冷静に戦闘を対処することができる。その冷静さこそ、太郎がこれまでの戦いで活躍してきた理由の一つである。
「私は先輩を信じます。いつも先輩についていけば、どうにかなってきたんですから。」
「まあな。じゃあ、信じるぞ太郎。」
セレナをはじめ、多くの警察官は太郎に大きな信頼を置いている。広山もそれは同じだ。
二人の顔を確認し、太郎は言った。
「いいか、絶対に死ぬなよ。」
第5部隊は消耗の一途をたどっていた。起動歩兵は破壊され、白兵戦に徹する他ない。
「くそお!こんなところで死んでたまるかあ!」
自衛隊員の一人が叫んだ。その直後、銃声とともに隊員は崩れ落ちた。
「またやられたぞ!」
「もう、ダメだ!もうおしまいだ!」
「あきらめるな!救援が必ず来る!」
状況は絶望的だった。第4部隊と同じように壊滅という運命をたどるのではないか。最悪の想像が頭をよぎるほどに。
その時だった。第5部隊の後方から敵に向けて無数の小型ミサイルが発射された。第5部隊の大型兵器をすべて破壊した敵側は完全に油断しきっていた。そのため、対応できない。ミサイルは着弾し、一瞬にして第5部隊と向き合う敵の半分を死に至らしめた。
「きゅ、救援だ!救援が来たぞ!」
第5部隊の隊員たちに希望の光が芽生える。しかし、その希望はすぐに絶望へ変化した。短い銃声が轟き、隊員が一人倒れたのだ。
「狙撃だ!気を付けろ!」
いち早く、この状況を理解した太郎は、自分の警告が遅かったことに後悔しつつも叫んだ。稲垣に比べれば経験が浅い太郎も狙撃によって仲間を失ったことは何度もある。混乱しながらも、周囲の隊員も残骸を使い、身を隠し始めた。
「最初のミサイルによる奇襲はよかった。でも、まさかこんなところにスナイパーがいるなんて。」
見えない敵に太郎は焦りを感じた。