9章C
「参次郎、そういえば、お前は、いつも仮面をつけているわけじゃなかった。確か、警察の前だけでしか仮面をつけていなかったぜ。それで気づいたぜ。太郎とお前の関係性を。」
ボーグもバードソンと同じ真実にたどり着いたようだ。参次郎はその時、初めて意表を突かれたようだった。
仮面の裏側の顔など、誰にも見えることはないのだが、参次郎は苦笑いを作った。その顔は、それまでの余裕に満ちた顔ではなく、己の不安を隠すための物だった。
「遅かれ早かれ、気づかれることだ。俺は向き合わなければいけない。現実と。」
「お互い一筋縄ではいかない人生みたいだぜ。」
ボーグは、参次郎が攻撃の手を緩めた隙をついて、懇親の一撃を繰り出した。
咄嗟に参次郎は電撃ソードを構えたが、あまりの破壊力に剣もろとも折れてしまう。
「うまい隙の突き方だ。敵ながらあっぱれといったところかな。」
「武器を失っても余裕顔を崩してない参次郎にはかなわないぜ。」
参次郎は、電撃ソード1本失っただけで戦えなくなるほど簡単な相手ではない。何か、次の武器を隠し持っているはず。そこで、ボーグはハンマーで攻撃を続け、その隙を与えないようにする。
しかし、参次郎の次の手は武器などではなかった。
「悪いな、ちょっと卑怯な技を使わせてもらう!」
戦いを楽しんでいた参次郎。だからこそ、使いたくない手があったのだ。それを使えば、必ず勝てる方法が。
「黙れ!次の攻撃手段をとっと見せろ!」
すばしっこく逃げ回る参次郎に苛立ちを感じたボーグは、激高する。一方、参次郎は、ハンマーを回避し続ける中で、手に何かを握り締めていた。
ボーグはそれに気づかず、ただ攻撃を続けるだけ。
次の瞬間、参次郎は手を開きその何かをボーグに向けて放った。
それは……
「炎!どこから出てきた。」
ボーグはかっと目を見開いた。参次郎がまるでマジシャンのように手の中から炎を放出したからである。
咄嗟にハンマーを構え、これを防ぐボーグ。
「なんだぜ!このマジックは!」
ハンマー越しでも感じる熱、光。間違いない、本物の炎だ。
「マジック?まあ、そう見えるか。なあ、ボーグ。魔法って信じるか?」
参次郎が唐突にそう問いかけた。仮面の裏では、いたずらっ子のような笑みを浮かべている。ボーグは挑発されているようにも感じたが、参次郎が何の理由もなく魔法などという突拍子もない言葉を発するだろうか。
「少なくとも、今のが本当に魔法なら、俺は勝ち目がないぜ。」
ボーグの、額には汗が垂れていた。参次郎の言葉の真意は読み取れない。しかし、彼は今、何か一般常識では考えられない技を使ったのだ。
「じゃあ、次で決着つけるぞ!」
「まだ、終われねえよ。」
売り言葉に買い言葉。勝ち目が無くても、ボーグには敵と対峙しなければならないときがある。
ボーグは、攻撃手段を変えることもなく、ただハンマーを振り上げ、振り下ろした。彼の攻撃は最後まで当たることはない。
参次郎はボーグの攻撃をよけ、右腕を開いた。ボーグは咄嗟に、ハンマーで炎を防ごうとするが……
「ぐはあああ」
ボーグは、参次郎の作戦に嵌められていた。右手から炎を放出させるだろうと思わせてそこに意識を集中させてしまったのだ。その間に参次郎の左手が股間を狙っていたとも知らずに。
股間に強烈なパンチを食らったボーグは、あっけなく倒れた。戦闘不能なのは言うまでもない。
「お、覚えているがいいぜ……ああああ痛い……」
痛みのあまり、床で転がり回るボーグ。
「絶対倒す……あああああ!」
「な、何か悪いな……」
激痛に悶えるボーグの姿は、先ほどまで戦っていた参次郎すら同情させるものであった。




