8章D
「お前らにこれ以上戦う意味はない。彩矢さんはもう基地の外に出ている。」
先ほどの参次郎の指示通り、ゴードンと彩矢は赤い鳥の戦艦で基地の外に脱出した。ここで足止めを食らっている黒い鳥と暗殺団は、追うことはできない。この戦いはもうすでに、太郎たちの勝利に終わったはずだ。
しかし、バードソンの目に絶望の色はなかった。
「甘いな。基地のバリアが一時的に消されていたのは迂闊だった。しかし、あのバリアはな、消されてから一定時間経つと再起動する!それに阻まれて、市ヶ谷彩矢の乗る戦艦はまだ脱出できないはずだ。」
「何!?」
バードソンは、基地を覆う透明のバリアが万が一消えてしまった時のため、あらかじめ再起動する設定をしていたのだ。どうやら、彼の用心深さを太郎たちは甘く見ていたようだ。
「これは、バリアが発生している?」
再起動したバリアに阻まれ、マグマドラゴンシップはその先へ進むことができない。幸いにして、太郎たちが戦闘を行っているのは、戦闘機の格納庫のため、追っ手の戦闘機はいない。
しかし、一刻も早く脱出しなければまずい事に変わりはなかった。
「とりあえず、参次郎さんに指示を仰ぎましょう。あの人なら打開策を提示してくれるかもしれません。」
彩矢の判断はこの場では適切であった。シールドを発生させている基地には、太郎と赤い鳥の3人が戦闘を行っていて迂闊に攻撃できない。
バリアを破壊できるわけもなく、彩矢とゴードンだけでどうにかするというのは無理な話だった。
「このバリアで外との通信はできないか。協力者との通信は不可能である以上、同じバリア内にいる参次郎以外に頼れるものはいない。」
ゴードンは持っていたスマートウォッチを起動し、通信を開始した。




