8章C
この状況を見てゴードンは、後は赤い鳥に任せればいいと判断した。
「彩矢さん、太郎や赤い鳥の奴らが戦っている間に逃げるぞ。」
「わかりました。」
ゴードンも彩矢も本心では、自分たちを助けに来てくれた者たちを置いていくのは心苦しい。しかし、黒い鳥、暗殺団の目的は彩矢である。ここで、逃げるのに遅れ、捕まれば本末転倒である。
「俺たちが持ってきた船を使え!俺たちはこの辺の脱出艇で適当に逃げる。」
参次郎は二人にそう指示を出すと、機体の陰に隠れた。参次郎の指示に従い、マグマドラゴンシップに乗り込む彩矢とゴードン。
操縦席につくと、レバーやレーダー、ボタンなど様々な機器があり、ゴードンは眩暈がした。
「こういうのは得意じゃないんだよな。戦ってばかりだったから。」
困り気味のゴードン。彼は、基本的に白兵戦を主体としていた以上、戦闘機や戦艦の扱いには慣れていなくて当然であった。
「あ、半自動操縦モードあるな。ここは文明の利器に頼ろう。」
この時代の空中戦艦は、操縦の操作の半分以上を自動操縦任せにすることができる。このモードを搭載することで、誰でも簡単に動かすことができるのだ。
しかし、ゴードンが半自動操縦モードの起動ボタンを押そうとすると彩矢が静止した。彼女は操縦席の機器類を、無言で見まわす。そして、おもむろに口を開いた。
「大丈夫です。ここからは私に任せてください。ゴードンさんは少し休んで。」
「え?!」
そう言われ、戸惑うゴードン。
しかし、戦艦の操縦に自信があるわけでもないので、素直に席を変わる。すると、彩矢は慣れた手つきで戦艦の機器類を動かしていく。戦艦が起動し、発進準備の体制に移行した。
「これは驚いたな。彩矢さん、なんで戦艦の扱いなんか知っているんだよ。」
彼の驚きも無理はない。
彩矢が、ただの大企業の令嬢ではないことは分かっていた。しかし、普通に考えて、戦艦の操縦方法を理解しているはずがない。
「昔、父にいろいろ教えられたんです。といっても、戦闘機の操縦ゲームをやっていただけですが。でも、父は技術者でした。娘にいざという時のために操縦方法を学ばせるためのゲームを、開発したのでしょう。もしくは同じ技術者の友人に作ってもらうようにお願いしたかもしれません。いずれにせよ、この戦艦の操縦機器は古いものです。あのゲームの知識で十分に動かせます。」
そう淡々と話す彩矢。
しかし、彩矢自身も内心驚いていた。子供の頃に父と遊んだゲームの正体が、ここまで実践的な物であったと誰が思うだろうか。
しかし、それが今こうして役に立っているのだ。世の中とは何が起こるかわからない。
「発進させます。ベルトの着用をお願いします。」
彩矢は、レバーに手をかけると同時に指示を出した。ゴードンは操縦席の後ろにある座席に腰かけ、全自動シートベルトで、体を椅子に固定する。
「こっちは準備完了だ。」
「わかりました。レッドバードマグマドラゴンシップ、発艦!」




