1章C 大型兵器に気をつけろ
稲垣は戦況の変化に、苦々しい表情を作っていた。
「まさか、まだこれほどの実力を残していたとは……」
これまでは部分的には追い込まれているところもあったものの、総合的には国家側に優勢であった。
しかし、ここにきて一気に敵側が進軍を始めた。どうやら、これまで敵側が追い込まれていたのは、整備中の巨大兵器を発進させるための時間稼ぎであったからのようだ。
「20メートル程の蜘蛛型巨大兵器が12体。これが、ダークメカ・ガトリングスパイダーか。」
人民解放共同団の主力兵器、ダークメカ・ガトリングスパイダー。地上戦を想定して作られた兵器だ。
これを前方に置き、その後方に戦闘員が配置されている。単純な戦力で言えば、警察側がまだ優勢だ。しかし、実際のところは均衡状態に陥っている。
「私の考えでは、これも一時的なものなのだろう。いくら、巨大兵器を投入しても、敵には持久力がない。あと1時間もすれば、こちらが再び優位に立つだろう。」
稲垣はこれまでの経験から、こう予測していた。しかし、長期戦は、より多くの犠牲を生む。稲垣はできるだけこの戦いを、早く終わらせたいのだ。
ガトリングスパイダー8本の脚を器用に動かし、時速30キロほどで隊員たちに襲いかかってくる。ガトリングスパイダーは蜘蛛で言うと頭にあたるところに、ビーム砲を有している。
隊員たちを認識するとガトリングスパイダーは、ビームを一斉掃射する。このビームはあたったものを有機物ならほぼ一瞬で灰にすることが可能だ。この時代、反社会勢力の持つ兵器の性能は非常に高いのである。
しかし、掃射されたビーム砲が、自衛隊や警察の隊員を貫くことはなかった。彼ら器用に、ビームをよけ、後ろに回り込む。
稲垣は、事前にガトリングスパイダーの情報を入手しており、その攻撃パターンを解析していたのだ。
隊員たちがガトリングスパイダーをひきつけている間に、自衛隊・警察部隊からミサイルが放たれた。
人型をした、大型ロボット、起動歩兵によるものだ。
思わぬ攻撃に、ガトリングスパイダーは、成す術もなく蹂躙されていく。前方のガトリングスパイダーを失った共同団。これで、共同団の優位性は崩れた。
「これで残りは、白兵部隊のみだ。進め!」
稲垣は、いち早く戦いの終止符を打つため、叫んだ。




