8章A 颯爽登場
「なんだ!どうなっている。」
バードソンたち、黒い鳥は更なる新手の襲撃に混乱する。
そして現れたのは、黒いスーツ、怪しい仮面の男であった。レッドバードアーミーリーダー、多意田参次郎は、敵組織の格納庫であってもお構いなしに堂々としている。
「今回も本当に来てくれたんだな。まだ半信半疑だったから。」
太郎の正直な感想に、参次郎は軽く笑った。
「冷かしか、何かだと思ったか。俺たち赤い鳥はな、冗談みたいなバカな事を平気でやるバカの集団なんだよ。」
周囲に爆音をまき散らす派手な登場。冗談みたいな約束を守る、異常性。
それを堂々とこなし、目的も意味も分からず現れる。自分でも理解できなかったが、太郎にはこの男がとても頼もしく感じた。
「おっと、俺たちも忘れてもらっては困るねえ。」
「太郎だったけ。俺たちのリーダーのお気に入りは。」
太郎にとって、境川と立津人が身分を明かして太郎の前に現れるのは初になる。そのため、改めて挨拶をしに来たのだ。
「あの時の医者と看守か……。どうやって成り済ましたんだよ。」
「そこは企業秘密だねえ。」
「その話はともかく俺は十野立津人。この禿げは境川健太。適当に呼んでくれ。」
太郎の指摘を、雑に流した二人。
「禿げとは失礼だねえ。」
「事実じゃねえか。」
その様子は随分賑やかで、赤い鳥の信頼関係を感じさせた。
「まあいい、境川、十野、よろしく。」
太郎はそう言うと、敵に向き直る。
その一方、バードソンは宿敵の登場で怒りを一層増すことになった。
「なぜお前がここに。参次郎。」
「おう、参次郎参上だぜ。なんだなんだ、バードソンじゃないか?黒い鳥と暗殺団で何やっているのか知らないが、俺たちの敵が何かやろうとしているなら邪魔するしかないよな!」
参次郎は挑発的な笑みを浮かべた。警察が持っている限りの情報では、赤い鳥と黒い鳥は長い間対立してきた、言わば犬猿の仲らしい。確かに黒い鳥の作戦を、赤い鳥が妨害しようとするのは当然の事だ。
「なんで赤い鳥が警察と協力しているんだよ。」
「そうっすよ、警察と協力して何のメリットがあるんすか!」
ボーグとシャンパンノの指摘。これに答えたのは参次郎に続いて現れた立津人と境川だった。
「参次郎が太郎の事を気に入ったんだよ。それ以上でもそれ以下でもない。」
「参次郎からの話を聞いた限り、太郎の純粋な正義感は好きだねえ。」
彼らの回答は、単純であった。気に入ったから。ただそれだけ。
「ふざけるな!たったそれだけの理由で組織を動かすバカがいるか!」
「いるんだなあ。だって俺たち赤い鳥は、バカの居場所を守る組織なのだからな。」
赤い鳥のリーダーとして、バードソンの前に立ちはだかるその男の眼は、迷いなきものだった。
「やっちまえ!立津人、境川!」




