7章G
「何事だ!」
ロックがかけられていた格納庫へのドアの突破に手間取った、バードソン。やっとのことで、格納庫に入ると、侵入者二人が彩矢を取り返しに来ていたのだ。気が気でないだろう。
それに続いてボーグもハンマーを持って格納庫に駆け付ける。そして、立つゴードンの姿を確認し、驚愕した。
「何やっている、ゴードン!なんでわざわざお前は黒い鳥と暗殺団にケンカを売っているんだぜ。正気の沙汰じゃない、今すぐやめるんだ!」
ボーグは、友人であると思っていたゴードンが、敵として現れたことがショックだったらしい。彼の言葉には、怒りよりもゴードンへの心配の方が大きかった。
「ボーグ、悪いけど、その言葉には従えない。ここで彩矢さんを見捨てるわけにはいかない。」
ゴードンは少し悲しげな視線を送った。しかし、その目には曲がることのない信念があった。
「おいおい、冗談じゃないぜ……」
ボーグは拳を叩きつけたい衝動にかられた。もともと友人の少ないボーグにとって、時々顔を合わせるだけのゴードンでも大切な存在だったのだ。
「バードソン、ボーグ、それにここにいる黒い鳥と暗殺団の者たちよ。お前らはみっともないとは思わないのか。たった一人の女性を誘拐するためだけに、多くの人を犠牲にして。黒い鳥も暗殺団も俺が知る限り、自分たちの信じる正義のために戦う組織ではなかったのか。お前らは何がしたいんだ!」
太郎は語気を荒げた。太郎にとって、それは力によって理不尽な要求を突きつける傲慢な悪魔への憤りであった。だが、バードソンは彼の見方に大きな怒りを感じた。
「どの口が言っている!この日本をここまで無法地帯とさせたのは、警察の力不足が原因だ!黙っていればそうやって好き放題自らを正当化して、何が楽しい!市ヶ谷彩矢を誘拐したのは、この国を治めるだけの力を手に入れるためだ。すべてはお前ら警察の責任だ!」
市ヶ谷彩矢の存在がなぜ、黒い鳥に大きな力を与えるのか。その理由について守秘義務となるため話せない。
しかし、それを話せないことを利用して勝手に自らの正当性を主張する存在。バードソンにとってはその存在が太郎であった。
「確かに俺たち警察は力がなかった。でも、それを引き合いに出してこんなことを正当化していいわけないだろう!」
「正当化しているのはお前らの方だ。国を治められなかった奴らが、今更出しゃばるな。」
「市民が襲われているのなら、助けに行くのが警察の役割だ。」
「役割を全うできなかった奴らが、使命を語るな!」
二人の言葉は平行線をたどる。
「戦うしかないようだな!」
「数で勝る我々にどう挑むつもりだ。」
バードソンは嘲笑した。彼の言う通り、黒い鳥の数の優位性は保たれている。二人で戦っても埒が明かないだろう。
ゴードンも彩矢も、その事実を突きつけられ言葉を失った。しかし、太郎だけは違った。
「こっちには助っ人がいる。それも強力な。」
「「助っ人?」」
ゴードンも彩矢も思い当たる節がない。一方、バードソンは眉をひそめた。
そして、次の瞬間、太郎は参次郎からもらったあのボタンを取り出した。そしてそれを押し、上に掲げた。
「レッドバードアーミー、力をもう一度貸してくれ。使命を果たすために!」
太郎は渾身の叫びで、その助っ人の名を呼んだ。
すると、突然、格納庫に一隻の空中戦艦が突入してきた。赤と黄色のド派手なカラー。船頭には巨大なドラゴンの頭。レッドバードアーミーの小型艦、レッドバードマグマドラゴンバトルシップだ。




