7章F
バードソンは格納庫に、侵入者が現れたことを知り、格納庫に駆け付けようとする。しかし、格納庫の入り口が開かない。
「援軍が来た時に足止め用として、ロックをかけておいたな。黒い鳥の基地のシステムに侵入するとはただものではない。」
ゴードンに、基地を管理するシステムを乗っ取る技術はない。しかし、彼に黒い鳥の基地の情報を渡したあの男なら話は別だ。己の持つ情報を駆使して、基地のシステムに潜入することも難しくはない。
それでも、黒い鳥の邪魔としてできた事が扉にロックをかける程度だったということは、完全に乗っ取ることはできなかったことを表していた。
「くそ、基地内であまり使用したくないが、背に腹は代えられない。」
バードソンは、手榴弾を取り出し、ドアから距離を取るとそれを投げつけた。
一方、格納庫内では、新たな敵の登場に騒然となっていた。黒い鳥の戦闘員たちは、一様に太郎に銃口を向ける。
しかし、太郎は何かを突き出し、その何かが黒い鳥の隊員たちをけん制した。
「この爆弾が見えるか。手のひらサイズだが、相当な破壊力だ。これを押せば、敵も味方も関係なく吹っ飛ぶ。お前らの命もない。」
何かの正体は、ボダン式の小型爆弾だった。自爆を脅しに使うという危険な賭けだが、彩矢を捕まえることを狙う黒い鳥が、自爆を許すはずがないことは知っていた。
だが、黒い鳥は数で依然、ゴードンと太郎に対して有利な立場にいる。この状況下に、シャンパンノは太郎の正気を疑う。
「大胆不敵なバカがまさか二人もいたとは思わなかったっす。」
その嘲笑に対し、ゴードンは唇をかむ。もともと無謀な作戦であることは、わかっていたのだ。一方、太郎には不安の色が見られない。彩矢とゴードンにそれぞれ向き合い、顔を確認した。
彩矢もゴードンも、警察には犯罪者として顔を覚えられているため、目を背ける。しかし、太郎はそのことは気にする様子はない。
「市ヶ谷彩矢さんですね。ご無事ですか。」
「は、はい。」
「それから、君の事は警察のアーカイブで知った。ゴードン・カッター君。どうしてここに。」
「彩矢さんに助けられたんだ。見ず知らずの俺のために、傷が治るまで世話になった。だから、その人を誘拐するような奴がいるなら、そこから助けたい。」
「そうか。」
彩矢の無事を喜びながらも、太郎は不思議な気分だった。
敵であった一人の少年。殺し合ったその相手が、今、一人の人を助けたいという決意を語っている。状況の違いで争った過去は消えない。それでも、歩み寄れるということに。
「俺は、太郎。多意田太郎。この歪んだ世界で一般市民を守るために戦っている。その使命のもとに、俺は市民を助ける義務がある。」
「バカ真面目だな。」
「ば、バカ真面目?……」
年下の少年からの咄嗟の言葉に戸惑う太郎。褒められているのか、舐められているのかわからない評価だ。
しかし、ゴードンの顔を見るに、少なくとも悪い印象を持たれなかったようだ。




