5章C 一騎討ち
「新宿3丁目で襲撃事件発生!至急駆けつけろ!」
通信機からの指示を受け、太郎はホバーバイクで向かっていた。サイレンを鳴らし、周囲の半重力車や車をかき分ける。
「ボーグの奴め。これ以上、好き放題されてたまるか。」
スピードメーターは時速160キロを超えていたが、太郎はハンドルを放さず進む。
しかし、前方に行く手を阻む集団を確認した。暗殺団か黒い鳥の部隊だろう。誘拐作戦を確実にするために、別動隊を用意しておいたようだ。
「そこをどけえ!」
太郎はここを構わず突っ切ろうとする。しかし、敵はバズーカを放った。
「何!」
バズーカの直撃を食らったホバーバイクは、爆発し炎上する。
爆発の直前で身を投げ出しなんとか助かった太郎だが、まだ安心はできない。前方をから目を離さず、銃撃を警戒する。しかし、銃撃が太郎を襲うことはなかった。
「どういうつもりだ。」
太郎がそう言ったとき、突然、太郎に一人の男が攻撃してきた。電撃ソードによる斬撃。しかも速い。太郎は、この斬撃をかわし、ビームガンを取り出した。
「貴様が芽里太郎か。さすがの反応速度だ。」
「お前は……バードソン。」
バードソン・ハンター。黒い鳥の高い戦闘力と、反応速度、判断力を兼ね備えた戦闘員。その活躍から、太郎も電子画像でその顔を知っていた。
「そうだ。知っていてくれたとは光栄だ。ならば警察のエースの実力、まだまだ見せもらおう。」
バードソン左手にピストルを持ち、銃とソードの二つの武器を構えた。
一方太郎には、ビームガンのほかに、戦闘用のナイフサーベルがある。バードソンは太郎に向けてピストルの弾丸を打ち込んでいく。これを余裕で交わすと太郎は、ビームガンでバードソンの頭を狙った。
しかし、バードソンはビームを電撃ソードで防ぎながらピストルを放ち続ける。
「これは、聞いていた以上だ。」
バードソンの動きの良さに太郎は焦りを感じていた。バードソンの狙いは時間稼ぎ。太郎を倒すことではない。このまま戦闘が長引けば、彩矢は救えない。
ビルの陰に隠れた太郎。
「どうする。仲間の応援がいつ来るかはわからない。それとも、自分一人で黒い鳥を引きつける側に回るべきか……」
太郎は思案した。警察の中では高い実力を持つ太郎。だからこそ、バードソンは自分でないと相手にできない。
しかし、彩矢を誘拐した部隊がどれほどであるかわからない以上、救出にも太郎の加勢は必要だ。囮に徹するべきか、救出に回るべきか。
「隠れていても無駄だ!」
バードソンは悩む時間を与えない。電圧マックスの状態の電撃ソードを太郎の方に投げる。これを右に交わして避けると、今度はバードソンのピストルが火を噴いた。
「しまった!」
銃弾はビームガンにあたり、太郎のビームガンは使用不能になってしまった。ナイフだけでの戦いを強いられた太郎。
周囲を見渡すと投げられたままの電撃ソードが目に入った。距離はバードソンより太郎の方が近い。
「あれを奪うか!」
太郎が電撃ソードに向かって走り出す。
バードソンはピストルを放ち、これを阻止しようとするが、弾切れだ。しかし、バードソンにはまだ時限爆弾がある。
「これで終わりだ!」
電撃ソードに向けて走る太郎に、思いっきり投げられた爆弾は太郎の目の前で爆発した。
「うわあ!」
爆発の衝撃から何とか逃れた太郎。しかし、咄嗟に避けなければならなかったため、体を地面に打ち付け、その痛みですぐには立ち上がれない。
「なかなかの実力じゃないか。」
そこにバードソンが歩いてきた。太郎に止めの一撃を放ちに来たのだ。
「ここで死ぬには勿体ないほどだ。」
今から動こうとしたところで銃弾の直撃は避けられない。太郎にはどうすることもできない。
その時だった。バードソンたちに向けて無数のミサイルが飛んできた。
「くそ、どこからだ。」
起動歩兵からのミサイル攻撃である。バードソンはこれを避けたことで、太郎と距離ができてしまった。
「自衛隊からの援軍!来てくれたのか。」
黒い鳥と暗殺団。二つの組織が動いている以上、大規模な戦闘は避けられない。自衛隊の援軍はとても心強く思えた。
「命拾いしたな……」
バードソンは悔しさをにじませながらも、自衛隊の攻撃から逃れるためその場を離れた。これで太郎の行く手を阻むものはいない。痛みも引いてきたため、動けそうだ。
「今しかない。」
ミサイル攻撃によって燃え盛る火をよけながら、太郎は彩矢を助けるために走り出した。
「このままじゃまずいな。」
爆発から逃れたバードソン。しかし、自分の身を守ることが精いっぱいで、倒れていく仲間を助けられない。追い打ちをかけるように行く手に2機の機動歩兵が現れた。
「芽里先輩の邪魔はさせません。」
「太郎のために、ここで踏ん張るぞ!」
セレナと広山だ。自衛隊員に混ざり、機動歩兵を操縦している。ほかにも多数の戦闘兵器がこのエリアに集結していた。対して黒い鳥は、先ほどの攻撃で、仲間をかなり殺されている。
「ならば、いいだろう!お前らの相手をしてやる。覚悟しろ!」
バードソンは目の前の敵に集中することを余儀なくされた。




