4章D 感謝
「ああ、ボロ小屋で寝ていても、寝袋があれば悪くない目覚めが味わえる物なんだな。あの人に感謝しなきゃな。」
ゴードンは小屋から出て背伸びした。彼の傷はほぼ完治し、ゴードンは以前のように動けるようになっていた。彼の心は少女への感謝でいっぱいであった。
「もうこれ以上、あの人に頼るわけにもいかない。あの人は何も言わなかったが、麻薬取引所が潰された話は小耳にはさんだ。収入源を絶たれたことを知られたくなかったんだろうな。」
そろそろ、あの少女の来る時間だ。今日で彼女ともお別れだ。これからは一人でやっていかなければならない。
しかし、ゴードンに不安はない。
「まっ、また振り出しからやり直すぜ。」
彼は一度、奴隷から戦闘員に成り上がったのだ。また同じことをすればいいだけの話である。
「お!ゴードンじゃないか?」
唐突に話しかけられ、ゴードンは振り向く。ニット帽にもじゃもじゃ髭。ハンマーを持ったボーグがそこにいた。二人は従兄弟の関係にあり、組織は違えど関係は悪くなかった。
「ボーグじゃないか。また脱獄できたのか。」
「まだ、警察に追いかけられているぜ。ここにもすぐに来るだろう。お前も捕まらないようにしろよ。」
「捕まるか!アホ。」
年齢は離れているが、二人は同年代の友達のように接した。それが二人の親しさを理解させる。
ここで、ボーグが真面目な表情でとあることを切り出した。
「ところで、市ヶ谷彩矢って知っているか。」
「さあ、市ヶ谷ってことはあの財閥の娘とか。」
「そうだ、なんか俺の組織と同盟した黒い鳥が探しているらしいから、情報よろしく!」
ゴードンは、なぜ財閥令嬢の名が出てくるのかを疑問に思った。それをボーグに聞こうとする。
「やべ、見つかった。じゃあな!」
しかし、ボーグにはこれ以上ゆっくり話す時間はなかった。ゴードンが聞く暇もなく、ボーグはすたこらさっさと走って行ってしまった。
「市ヶ谷彩矢か。覚えておこう。」
何はともあれ、暗殺団が探しているターゲット。もし情報を手に入れ、暗殺団に提供すれば、再就職も夢ではない。
そんなことを考えながら、ゴードンは小屋に戻った。




