3章F 看守
刑務所の事務室。稲垣と別れた太郎は、この事務室で休憩を取っていた。
「あ~、疲れました。」
「お疲れ様。」
太郎の目の前には、太郎と同じく休憩中の看守がいた。童顔で身長の低い男性だ。黒い帽子を被っている。
「聞いてくださいよ。上司の稲垣さんが、何をしたいのかよくわからないんです。」
太郎は愚痴をこぼした。普段は真面目な人間でも、時には愚痴の一つもこぼすものだ。看守は、軽く笑って話を聞いてくれた。
「そうか、稲垣さんは経験が長いからな。俺達みたいな若造にはわからないことがあるのかもしれない。」
看守は稲垣の事をよく知っているようだ。看守と刑事では職場が違うので太郎は、少々驚いた。
「稲垣さんと何回も会われているんですか?ここと品川の警視庁本庁は結構離れていますけど。」
「え?ああ。ちょっとね。」
なにか、深いわけがあるのだろう。職務上の機密事項か何かが絡んでいるのだろうと考え、太郎はそれ以上追及しなかった。
看守は席を立つ、最後にボソッとつぶやいた。
「ピンチの時あのボタンを使えよ。必ず、駆け付ける。」
「!」
その、一言に太郎は凍り付いた。この看守もあの仮面の男の仲間なのか。あの男に関しては謎が多い。しかし、まさか刑務所にまで侵入しているとは。
一体、彼らは何者だろうか。看守は部屋から出て行ってしまった。太郎は、例のボタンを取り出す。そして何か手がかりになる情報はないかとボタンを隅々まで観察した。そして、ボタンの底面に印字されている文字を見つけた。
「なんだ,これ。」
小さい文字ではあったが、何とか読み取ることができた。
「レッドバード」
そこにはローマ字でそう書いてある。レッドバード、赤い鳥。太郎はこの名前に心当たりがあった。
「レッドバードアーミー、通称赤い鳥。バカの居場所を守るために活動する暴力団。俺にどうしてこんなものを。」




