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第一話 ユキヒサ、旅立ち前日之事

 大陸諸国からは揶揄(やゆ)憧憬(しょうけい)を込めて「西海の孤島」と呼ばれるアキツ国。

 南北に伸びるその国の一角、外様(とざま)の大藩マエナガの城の天守で、震える声が絞り出された。


「ユキヒサ……いや、おユキよ。明日、お主を当藩より追放することとなる」

「は、しかと承知しております」


 追放を申し渡したのは白髪の混ざる初老の男。

 それを受け、胡座(あぐら)の両膝に拳をついて頭を下げたのは若い()だった。


 当世では無礼とも田舎者とも言われかねない所作であった。

 しかし、ここマエナガ藩は幾百年も前の戦国の世から変わらぬ尚武(しょうぶ)の地。

 都人(みやこびと)のような作法はかえって嫌われる武張った土地柄だった。


 そんな野卑な仕草にも関わらず若い男からは言いようのない気品があふれている。

 男が面を上げると、初老の男ははっと息を呑んだ。

 己の罪を、ユキヒサから本来の人生を奪った罪を改めて自覚したのだ。


 新雪のような白い肌、引き締まった細い顎、涼やかながらも強い意志を感じさせる切れ長の目。吸い込まれるような艷やかな黒髪。女はもちろん、衆道(しゅどう)の気のない男であっても生唾を飲み込むような美貌がそこにあった。


「おユキよ……お主にはすっかり辛い思いをさせてきてしまった。何かあれば遠慮なく申せ。このタダヒサ、なんならこの皺腹(しわばら)をかっさばいてもかまわぬ」

「過分なお言葉、誠に痛み入ります。しかし父上、これはこのユキヒサもすでに重々承知のこと。武士として、今更泣き言などございません」


「そうか……。しかし、藩を出ることまではないのではないか? 城下に住まいを持ち、小商(こあきな)いでもして、その……なんだ、()としての幸せを得ようとはどうしても思えぬのか?」

「このユキヒサは今生に生を受けてより、男として、武士として育てられております。藩に縛られぬ身として各地を流浪し、いつの日か『大悪(たいあく)』を討ち母の無念を晴らす所存に相違はございません」

「意志は変わらぬ、か……」


 初老の男、タダヒサはがっくりと肩を落とす。

 そう、ユキヒサは女のような美貌を持つ男ではなく、正真正銘の女なのだ。

 ユキヒサはマエナガ・タダヒサの長子として生まれた。


 タダヒサが30歳を過ぎてから授かったはじめての子である。

 待望の嫡子(ちゃくし)に城内は沸き立ったが、それが女児であると知った者は意気消沈した。

 男児が産まれなければならぬ訳があったのだ。


 跡継ぎがいない藩には、幕府から将軍家ゆかりの血筋の養子が送り込まれる。

 戦国の世が終わって幾百年、幕府はそうして多くの藩を乗っ取り、実質的に幕府の直轄へと作り変えていた。

 マエナガ藩にもすでに何度も養子の打診が来ており、あれこれと理由をつけて断っていたのだが、それも限界であったのだ。


「この子は……男児として育てる」


 タダヒサが苦渋の決断を下したのも無理はなかっただろう。

 それからユキヒサは、お付きの女中や小姓など、ごく一部の人間以外には本当の性別を隠して育てられることとなった。


 男たちに交じって剣を振るい、弓矢を放ち、馬に乗って狩りをする。書を習い、術を学び、藩祖イエヒサが遺した伝書を(そら)んじた。


 天賦(てんぷ)の才があったのだろう。

 ユキヒサの武芸の腕前はめきめきと上達し、元服を迎えるころには藩内でも有数の使い手となっていた。学問でも師範と対等に論を交わし、大陸への留学を請われるまでになった。


 卓越した才に類まれなる美貌(びぼう)を兼ね揃えた次期藩主。

 にもかかわらず、それを鼻にかけて偉ぶるところはない。こうなれば城内の婦女子が放っておくはずもないだろう。

 ユキヒサが歩く後には常に女の群れがついて回るので、「ユキヒサを探すなら、白粉(おしろい)の匂いを辿れ」という冗談が真顔で語られるほどであった。


 そんな日々も、明日で終わりを告げる。

 もうすぐ、弟のステマルが数え8歳となり、幼名を捨てて真名(まな)を得るのだ。

 真名を得れば魂魄(こんぱく)が安定し、不意の病死の心配などはほとんどなくなる。

 将軍家からの養子を遠ざけるために育てられた、男としてのユキヒサは役目を終えるのである。

 表向きには、ユキヒサは明日事故死することになっていた。


 ステマルはユキヒサとは腹違いの兄弟だ。

 歳が離れていることもあって、ユキヒサはステマルを大いにかわいがった。

 ユキヒサの境遇は余人が聞けば哀れに思うものであったろう。

 だが、この弟のために藩の跡継ぎの座を守ってきたのだと思うと、ユキヒサはむしろ誇らしい気持ちを抱くのであった。


「どうじでユギヒザざまが出ていがなぐっちゃいげないんですかぁ~!」


 ユキヒサが少々の感慨にふけっていると、横から駄々っ子のように泣きわめく少女の声がした。顔中を涙や洟水(はなみず)でぐちゃぐちゃにしているのを、隣りに座った女中が懐紙(ふところがみ)で拭いているがきりがない。

 そんな醜態(しゅうたい)を晒しているにも関わらず、どこか愛らしさを感じる人形のような少女であった。


「スイレン、お願いだから落ち着いてくれ。これはもともと決まっていたことではないか」

「そうですけど……ぞうでずげど~!」


 スイレンがわんわんと泣きながらユキヒサの胸に飛び込んでくる。

 本来、藩主であるタダヒサの前では許されない無礼であるが、ユキヒサはスイレンをそっと抱き止めて頭を撫でる。

 そうしてスイレンをなだめつつ、ユキヒサは目顔でタダヒサに許しを請うた。

 もとより無礼を咎めるつもりなどないタダヒサは黙ってスイレンの行いを許す。


 スイレンはユキヒサの名目上の許嫁(いいなずけ)であった。

 代々マエナガ藩に仕える家系の生まれであり、タダヒサがもっとも信頼する家臣の孫娘だ。婚約は無論のこと、幕府の目を(あざむ)く偽装である。


 スイレンもそれを承知しており、ユキヒサの本当の性別も当然知っているのだが、ユキヒサと長い時間を過ごすうちにどうにも離れがたくなってしまったのだ。

 破談が前提の婚約だったとはいえ、理性はともかく感情が納得を許さない。


「スイレン、いい加減にしろ。ユキが困っているではないか」

「でも、でも兄上゛~!」


 ユキヒサに(すが)りついて離れないスイレンを叱ったのは引き締まった肉体に精悍な顔つきをした若侍だった。名をゲンノジョウという。

 ユキヒサよりも少し年長で、幼いころからユキヒサに小姓(こしょう)として(つか)え、剣でも学問でもユキヒサと同等に渡り合う俊英(しゅんえい)である。


 ゲンノジョウはタダヒサに向かって一礼し、「失礼致す」とその場を立ってスイレンをユキヒサから引き剥がした。

 ユキヒサの着物は乱れ、涙や洟水で濡れている。だが、ユキヒサはそれを気にした様子もなく、着物の襟を引いて居住まいを正すだけであった。


「どうじでユキヒサざまから離ずんですかぁ~~!」

「ユキと別れるのが心残りなのは俺も一緒だ。聞き分けろ」


 そう言って、ゲンノジョウはスイレンを元の位置に座らせると、ユキヒサに向き直った。


「ユキ、俺は必ずお前よりも強くなる。いずれ俺も諸国を旅し、剣の腕を磨く武者修行に出る。その旅でお前に会ったときは、いよいよ決着をつけるときだ」

「あいわかった。千回目の試合だな。拙者もさらに腕を磨いて待つとしよう」


 ユキヒサとゲンノジョウは事あるごとに剣の腕を競い合う間柄でもあった。

 乱取りなどを加えれば、剣を交えた回数は万を超える。

 千回目というのは腕くらべの体裁を整えたものに限ってのことだ。


 現在までの勝ち負けはまったくの五分。

 ほとんどの試合が引き分けに終わっており、城内では「技のユキヒサ、力のゲンノジョウ」と評され、実力は互角と見られていた。


「ユキ、賭けをしよう」

「なんだ?」

「次の勝負、勝った方の言うことを何でもひとつ聞く」

「かまわぬが、一体何をさせようというのだ?」


 ゲンノジョウは両拳を固く握りしめ、全身をわなわなと震わせながら続ける。


「俺が勝ったら、ユキは国許(くにもと)に戻ってこい。そして……そして俺と所帯を持とう!」

「ええ~!? 兄様何をおっしゃるんですか?! 妹の婚約者を奪うとか信じられません!」


 ゲンノジョウの唐突な言葉にスイレンが慌てふためき、ぽかぽかとゲンノジョウを叩くがすぐに女中に取り押さえられる。

 タダヒサもゲンノジョウに殺気のこもった視線を向けているが、一世一代の告白をしたばかりのゲンノジョウはそれに気が付きもしない。


「あいわかった。ゲンの気遣い、誠に有り難く思う」

「そ、そうか」


 ユキヒサからあっさり承諾の返事があり、ゲンノジョウは拍子抜けした。

 力が抜け、冷や汗で全身が濡れていたことに今さら気がついた。

 しかし、どういうわけでこんなあっさり了承されたのか、それがゲンノジョウにはわからない。負ける気などさらさらない、ということだろうか。


(拙者の身を案じて、本意でもない申し出をしてくれたのだろう)


 当のユキヒサはこんなことを考えていた。

 ユキヒサ自身は、自分が異性にとって魅力のある人間だと思っていなかった。

 幼いころから藩祖イエヒサとその正妻、トモエ御前に憧れて育ったためだ。


 イエヒサは戦国の武人らしくいかにもな豪傑だった。

 大柄なものが多い武士の中でもさらに頭一つ以上も大きく、悪鬼邪妖も泣いて逃げ出すような(いか)めしい顔つきをしていたと伝えられている。


 自分のような華奢で細面の人間は、男としての魅力に欠けている。

 女衆が自分について回っているのは知っていたが、彼女らが一番盛り上がるのはゲンノジョウとの試合の時だ。

 二人で剣を撃ち合い、汗を流していると黄色い声援や悲鳴が聞こえてくる。

 おそらく、女衆の目当てはゲンノジョウであって自分ではないのだろう。


 また、女として生きるつもりは毛頭ないが、女としての魅力にも欠けていると思う。トモエ御前は夫イエヒサと並んで幾度も戦場(いくさば)に立ち、いくつもの首級を挙げた女丈夫だ。

 自分の細く白い腕にちらりと目をやり、この体たらくではイエヒサ様どころかトモエ御前にも到底届かないだろうと嘆息をつく。


 そこへタダヒサが早口で割って入る。


「うむ、国許に帰ってくるのはよいことじゃな。だがその上に婚姻を結ぶというのは『ひとつ』だけという取り決めに反する。ゲンノジョウが勝てばユキヒサが国許に帰る。わかりやすくこれだけとしよう。この件についてはわしが証人となる。約定を違えることは決して許されぬと思え! それからゲンノジョウ、お主はおユキに勝てるようになるまでわし自ら徹底的に鍛え抜いてやるから覚悟致せよ」


 ゲンノジョウは「しまった」という顔をしているが、主君に逆らえるはずもなく、しぶしぶと頭を垂れるしかない。

 それに考えてみれば悪い話ではない。タダヒサは老境に差し掛かりつつあるとはいえ、マエナガ藩最強の剣士である。

 その指導を直接受けられるのは願ったりではあるのだ。


「しかし、おユキの着物が汚れてしまったな。このまま話しているのもなんだ、旅の着物を用意したから着替えてくるがよい」

「は、承知仕りました」


 ユキヒサは素直に従い、女中をつれて別室へ去る。

 ユキヒサが十分に離れたのを確認してから、タダヒサは獰猛(どうもう)な笑みをゲンノジョウへと向ける。


「ゲンノジョウ、わしの目の前でおユキを口説こうとはなかなか厚かま……天晴(あっぱれ)な心意気じゃな。おユキが戻るまで時間もあろう。それまでわしが稽古をつけてやろう」

「えっ、いますぐですか!?」

「お殿様、応援しております! ボッコボコにしてやってください!」


 タダヒサはもろ肌を脱ぐと有無を言わさずゲンノジョウに飛びかかる。

 筋肉隆々のその肉体は菩提寺に奉納されている藩祖イエヒサの木像を連想させ、初老の男の肉体とは到底思えなかった。


 ゲンノジョウも慌てて膝立ちになり、タダヒサの両手を受け止め、手四つの形となる。もともと体勢が不利であったこともあるが、膂力(りょりょく)に押されて徐々に海老反りになっていく。


 だがゲンノジョウとて尋常一様の使い手ではない。剣のみでなく、(やわら)の心得もある。無理に押し返そうとせず、逆に引き込んで背後に向かって投げ飛ばした。


 凄まじい音とともに襖に突っ込んだタダヒサだったが、即座に舞い戻ってゲンノジョウに体当たりをぶちかます。

 今度はゲンノジョウが吹き飛ばされ、障子に突っ込んで廊下に転び出た。


「さすがは殿、いささかも衰えておりませぬな」

「ゲンノジョウこそその若さで立派なものじゃ。どれ、胸を貸してやるから参れ」


 肉と肉との激突音が繰り返される。

 障子が、襖が破れ、鴨居がひび割れる。

 タダヒサが仕掛けた背負投げにゲンノジョウがわざとかかり、天井を蹴って体勢を崩そうとする。

 体勢を崩しつつも強引に投げを打つタダヒサの首に手をかけ、道連れにしようとするゲンノジョウ。


 互いにもつれ合ったまま、二人の体は轟音とともに畳に突き刺さった。


「ユキヒサ、ただいま戻りました。……さっそく稽古ですか?」

「「う、うむ、そうだ」」


 着物は破れ、木屑をかぶり、あちこち傷だらけとなった二人の目に映ったのは光神教に伝わる天使のような姿であった。

 淡い紺地に薄桃色の花びらの散る着物を纏ったユキヒサが破れた障子戸の向こうに立っていたのだ。男物ではあるが、なんとも言い難い色香の漂う(たたず)まいだった。

 燃える(たきぎ)に雪をかぶせたように、二人の男の闘志が鎮火する。


「ユキヒサ様! すっごくおきれいです! あっ、写真、写真を撮りましょう!」

「スイレン、写真はならぬ。拙者は死んだ身になるのだ。顔や背格好を知られては、公儀に露見する恐れが増す」

「それはそうですけど……」

「なに、写真の一枚くらいはよい。この天守から出さぬと決めれば公儀隠密といえでも手は出せまい」

「そうだな。俺も写真の一枚くらいはいいと思うぞ」

「皆がそう言うのなら……」


 写真というのは近頃大陸から渡ってきた新式の魔具である。

 魔力を通すだけで紙に見たままの景色を写し取れるという代物で、スイレンはこれが大のお気に入りだった。

 写真の用紙は決して安くないのだが、小遣いの大半をそれに注ぎ込んでいる。

 そして、それらすべてはユキヒサの撮影に用いられていた。


(他の写真も天守に隠すように言い聞かせねばならんな)


 ユキヒサはそんなことを考えながら、スイレンの誘導に従って床の間の前に立つ。

 他の面々もユキヒサを中心として並んだ。

 あれこれと細かい指示をした後にようやく満足がいったのか、写真機を女中のひとりに渡してユキヒサの隣に立ってしなだれかかる。

 ゲンノジョウが「やられた!」という表情になったが時既に遅し、スイレンの合図によって写真が撮られてしまった。


「うむ、何やらごたごたしてしまったが、おユキよ、その着物は気に入ったか?」

「は、見事な品かと思いますが、恐れながら忍ぶ旅には少々派手なようにも……」

「それが狙いよ。お主が華美を好まぬことは知られておるし、身分を隠したい者がそんな目立つ着物で旅をするなどとは思うまい」

「なるほど、そうした深慮(しんりょ)が。このユキヒサ、感服いたしました」


 タダヒサのそれは半分方便である。

 年頃に女らしい格好のひとつもさせてやれなかったのだ。

 少しでも娘らしく着飾らせてやりたいという親心であった。

 ユキヒサはそんな親心にはまったく気付かず、ただ感心するばかりであったが。


(それにこのサクラの意匠。旅先で最期を迎えようとも、散るときまで武士らしくあれ、ということか)


 サクラは天が灰に染まる刻に一斉に咲き、天が元の明るさを取り戻すと同時に一斉に散る花だ。その美しさと潔さから、とくに古風な武士に好まれる花だった。


 無論、タダヒサはそんな意図など微塵(みじん)も込めていない。

 単純に意匠の美しさからこの柄を選んだだけである。

 ユキヒサが真剣な面持ちで着物の柄を眺めているのに若干の違和感をおぼえつつ、今さら娘のように喜ぶのが恥ずかしく、それをごまかしているのだろうと解釈した。


「それともうひとつ、おユキに渡すものがある」


 タダヒサはそう続け、床の間の刀掛けにあった一振りの打刀(うちがたな)を手にとった。


「父上、それは……」

「藩祖イエヒサ様の愛刀がひとつ『斬雪』よ」


 ユキヒサは差し出された刀を両手でうやうやしく受け取った。

 斬雪とは藩祖イエヒサがカシマ山に潜む邪妖を退治した際に手に入れたという伝説を持つ業物(わざもの)だ。

 その名の由来は、刃をかざしているだけで降った雪を両断するからだとも、あまりの切れ味に傷が凍りついたように冷たく感じたからだとも言われている。


「これほどのものを……藩を出る拙者が預かってよいのでしょうか」

「かまわぬ。武士に二言はない」

「は、失礼致しました」


 ユキヒサは許可を得て、懐紙を口にくわえて鞘から刀身を抜く。

 雪の積もった山々の稜線を思わせる独特の乱れ刃。

 凍っているかのような冷たさを感じさせる青みを帯びた鉄。

 刃の長さはユキヒサが片手を伸ばしたほどで、誂物(あつらえもの)のように身に馴染んだ。


 自分にはちょうどよい長さ、重さに感じるが、藩祖イエヒサはこれを脇差として用いていたらしい。偉大な藩祖に思いを馳せつつ、刃を鞘にしまう。


「このユキヒサ、この刀に、この着物に恥じぬよう、立派に生きて参ります」

「見事な心がけじゃ。だが、平穏に暮らしたいと思ったら遠慮なく帰ってきてよいのだぞ」

「温かきお言葉、感謝の極みに存じます」


 あくまで生真面目に礼を返すユキヒサに、「これは少々のことでは帰ってこないな」とタダヒサは内心でため息をついた。


 かつて、アキツ国中を旅し、数々の悪党や邪妖を誅して多くの民を救ったという三人の英雄がいた。

 これは、その伝説の英雄のひとり、ユキヒサが旅に出る前日の出来事である。

 1話目は大増量7,000字。

 2話目以降は2,000~3,000字ほどで更新していきます。

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