始業式
学園街、それは近隣の国々が手を出せない中立地帯。治外法権と呼んでもいい場所。与えられた特権は周辺の国々のみならず、遠くの異国さえも特権を与えていた。その理由はひとつ、勇者が居るから。この世界にとって勇者とは正義であり希望でもある、それと同時にとてつもない脅威であると言える。
勇者の持つ力はとてつもない。その力は衰えず、死ぬ間際まで全盛期を保つ。そしてその寿命は人の域を逸する。そして全力を出した勇者は一太刀で山を斬る。それほどの脅威だからこそ、勇者が作り出した学園街は中立地帯となった。どの国も天災と呼べる存在を怒らせたくなかったから。
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「そして学園街は複数の学園を持つからそう呼ばれ始めた……と」
学園街の歴史書を片手に目の前で行われる始業式を眺める。これは二学期が始まる時に行われる宣誓みたいなものだろう。それと同時に今学期から新任となる俺を紹介することもするだろうな。
あの後勇者と別れたあと学園長となったアルトと共に学園へとやってきて、始業式を眺めていた。
『これにてウッドウィル学園の始業式は終わります。続きまして、今学期から新任の教師として来てくださいました先生の紹介に移りたいと思います』
その言葉に生徒はザワつく。それもそうだろうな、この時期からいきなり入る先生は珍しいようだからな。
『ダリア先生、登坂してください』
呼ばれたので立ち上がり台へと上がる。そして目の前に広がる光景を見て驚いた。想像以上にこいつらはやる気があるようだ。だがやる気がないものたちがいるが……あれは俺が受け持つクラスか。
『えー、ダリア先生は今学期から新任としてここに務めます。担任となるクラスは一年、上位の一クラスとなります。ではダリア先生、挨拶を』
横に避けるアルトを横目に前へと出て風魔法を発動し、生徒全員へ声を届かせる。
『今紹介されたダリアという。平民の出なので苗字は無い。それと今平民と言ったが実力の方は気にしないでくれ、ここで教えるに相応しい実力は持っていると思ってくれて構わない。特に上位の一クラス、お前たちに言っている』
うっとおしそうにこちらに視線を向ける上位の一クラスの面々。そのひとりがこちらと同じく風魔法を使い抗議してくる。
『平民ごときが調子に乗るな、とっとと帰ってママに泣きついとけ』
どうやら貴族の出のようだ。平民ごときというのは多分また聖帝国の貴族なんだろうな。他の国はどうか知らないが俺の友人の貴族ならそんな事言わないだろう。
そしてその言葉に反応して周りの奴らは笑う。じゃじゃ馬にしてもこれは酷いな。
『何か文句を言われたが些細なことだったようだ。実力差もわからないようだから厳しく教えることにしよう。これで挨拶を終わる、アルト、続きを』
『えっと、はい。これで挨拶を終わります、各自教室へ戻り担任の指示に従ってください』
ゾロゾロと出ていく生徒と教師たちを無視しアルトへと話しかける。俺に文句を言ってきた生徒は凄く睨んできているがどうということは無い。
「じゃじゃ馬とお前は言ったが、あれは明らかに問題児だろう」
「えぇ、ですが先生にとっては些細なことでしょう?」
「そうだが一言くらい欲しかったな」
「頼みました、一応この学園を背負ってる生徒なので」
「分かっている、任せておけ」
そういい受け持つクラスがある方へと歩いていく。
さすがのダリアも本物の勇者と戦ったのはドラルク以外ではいません。それ以外の聖帝国の勇者は偽物です。