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魔眼の王  作者: 消滅済み
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市長と学園長




学園都市に着いてから、数分。向かっている場所はこの都市の中枢、学園都市総合管理塔である。


既にクリスとは学園都市の入口で別れており、次会うのは恐らく始業式だろう。俺がここにある学園都市で教師を行うのは長期休暇を明けた二学期からだ。そしてここに着いたことを伝えなければいけない人物がいる。


まぁ、学園都市と言うからには学園があるから、その学長たるアルト・バルナンと、総合管理塔に所属する市長に会わなければならい。


そのうち1人は教え子だから気負うことは無いんだが……市長に関してはなんというか、ちょっとやりずらいな。


考え事をしていても、足は進む。つまり目の前には塔がある。塔とは言っても別にそこまで高い訳では無い、せいぜいが5階建てだろう。確かに他の地域では高いが、ここでは平均的な高さだ。そもそもの技術レベルが他の地域とは違うのだ。


それでもなぜ塔と呼びれているのかは、この都市が出来た時1番高かったからで、そのまま名称が継続されたに過ぎない。つまり特に意味は無い。まぁゴタゴタ考えたって、あいつと会うのには変わりはないのだ……行こう。


「いらっしゃいませ、御用は?」

「市長と学園長に会いに来た、証書だ」

「照合しますのでお待ちください」


そう言い渡した紙に書かれている番号を元に市長と学園長の予定を確認する受付嬢。


「確認が出来ました。ダリア様、で宜しいでしょうか」

「あぁ」

「第三客室で既にお待ちです、ご案内は?」

「要らない」


そう断りを入れ、第三客室がある二階へ行く。この塔は一階が受付、二階が客室、三階が貴賓室、四階以降が事務を行う部屋がある。といった構造になっている。


気は進まないが行こう。













たどり着いた部屋に着き、ノックをする。


「どうぞ」


中で談笑していたような声が収まり、比較的若い男の声が入室を促してくる。


「失礼する」


ドアを開けるとそこには既に男が二人いた。


その両者はどちらも若く、30代と言えるような見た目をしていた。


「あぁ、先生!ようやく着きましたか!」


そう言い、ソファから立ち上がりこちらに挨拶しに来るローブ姿の男が俺の教え子、アルト・バルナンだ。


「そこまで老けていないな、アルト」

「それは先生に言われたくありませんよ、今何歳ですか?」

「さてな……よう、久しぶりだな、()()


未だに座る男に声をかける。その男はニヤニヤとした笑みをこちらへ向け、闘気をぶつけてくる。


「あぁ、久しぶりだ、魔眼の王」

「15年振りか」

「そうなるなぁ……」


そう、この男は勇者だ。かつて俺と殺しあった仲だ。


「全然衰えてないようだな。むしろ強くなっていないか?」

「俺が衰えるわけがないだろう?」

「それもそうか……」


やつは立ち上がり、こちらへと近づいてくる。そして握手を求めるように手を出してくる。


「久しぶりにやろう」

「良いだろう、そうそうに潰れるなよ?」

「そこまで衰えていない」


こちらも握り返し、己の力を手へと集約させる。これは今何をしているのか、それは簡単だ。


お互いを認め合った2人が相手に逃げられないように、手でのみで争う昔からの喧嘩の仕方だ。つまり両者の圧と圧の殴り合いとなる。まぁそれは上位の力を持つ者だけだ一般人やチンピラなら手を握りあってもう片方の手でお互いを殴り合うものだ。


「さて、勇者よ、お前の名を聞くには何をすればいいのだったか?」


部屋に満ちる闘気の圧。既にアルトは察して退室している。死にたくないようだ。


「そうだなぁ、昔の俺はなんて言ったか」


徐々に握りあった手の周辺の空間が歪み始める。


「そうそう、俺の聖剣を呼び出してみろって言ったな」


暴れる雷が部屋を焼こうとする、その前に魔眼を使い防ぐ。


「確かお前のうちにあるのだったな?」

「そうだ、出来るか?」

「ここまで至近距離なら、な」


歪みへと力を送り、勇者の内へと入り込む。複雑怪奇な構造をしている、ここまでの者は世界には余りいない。やはり勇者、と言うだけはある。


だが──


「出せたぞ」

「……マジか」

「名を聞こうか、勇者」


俺は30年前殺しあってから彼の本当の名前を知らない、世界に大々的に広められた名前は偽名だからだ。


「ドラルク、ドラルク・ニュクリアス」

「良い名、とは言えないな」

「お世辞でも言ってくれよ」


両者が笑い会う。これでやっと、この殺しあった関係が0になったような気がした。


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