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魔眼の王  作者: 消滅済み
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学園都市前



学園都市


そう呼ばれる街が今回俺が向かう場所だ。そこはありとあらゆる国からの干渉を防ぎ、中立国として成り立っているという特異な場所だ。


その理由としては単純だ、この都市を納める人物が圧倒的に強いからだ。俺はこの後その人物とに会うことになっている。



現在、俺が村を出てから1ヶ月ほど経っていた。それほどまでにあの村とこの都市は離れている。この道中、来るのにだいぶ苦労した。これだから雨は嫌いなんだ。


さて、もうすぐ着くぞ。と言った所で……問題発生。貴族が喧嘩を売ってきたのだ。理由は単純明快、俺がその貴族よりも先に居たから、それがムカつく。殺す、との事。その馬車には聖帝国の紋章が刻まれている。

こういった傲慢な貴族というのは大概が聖帝国の貴族だ。やはりあの国は問題しか起こさないな……


まぁなんでそんな奴らがこんなところにいるかと言うと、複数の道がひとつの道に収束するから、だ。たまーにこういった面倒事があると、御者さんがいう。真っ青な顔で。


「とっとと下ろせ、そして殺せ」


豚、第1印象はそれだった。別に極端に太っている訳では無いのだが、贅肉がとことん目立つような脂汗が凄まじい男だった。


そしてその隣には少女が居た。制服を着ている、ということは学園都市に通うことになる生徒なのだろう。その表情は達観。諦観。そんな顔だ。こういった子に儚いという印象を抱く程度には悲しい顔をしていた。これから殺されるという俺たちに憐れみでもかけているのだろうか?心外だな。


「ふむ、仕方があるまい」

「え、旦那ぁ、諦めるんですかい?」

「あぁ、諦める」

「そんなぁ!」

「あいつの命を」

「え?」


さて、ここから先は治外法権だということを教えなければいかない。なぜならこの学園都市の周囲数キロほどは学園都市所有の物だからだ。つまり学園都市の法律が適用される。そして、そこには貴族などという厄介なものは存在しない。


「それを知らないからこその愚行だろう」

「え、そうなんですかい?」

「自己防衛の為なら相手を故意でなければ殺してもいい、という法律がある。そんな物だ」


他国の貴族と問題起こしたらダメ、なんてのは学園都市では通用しない。そんなものは普通の国でしか使えん。


「まぁ殺しはしないが、死の恐怖は味わってもらおう」

「でも旦那、貴族の護衛に勝てるんですか?奴らめっちゃ強そうですが……」

「あの程度、うちの馬鹿共を相手するより簡単だ」


馬車から降りて、こちらに向かってくる貴族の護衛達。既に剣を抜いており、下卑た笑みを浮かべている。その鎧とかでいい地位の男共なのだろうと分かるのだが……如何(いかん)せん弱すぎる。


「手加減が難しいな」

「何ごちゃごちゃ言ってやがる」

「ちょうどいいのは、これくらいか『木縛鎖(シェン・チェ)』」

「ひひ、死ねぇい!」


木でできた鎖が地面から飛び出してきて、護衛共の体に巻き付き拘束する。


「呆気ないな、反応も出来ないとは」

「な、なんだこれは!てめぇ!俺らが誰の護衛か知らねぇのか!」

「聖帝国の貴族、だろう」


やはり何も知らないようだ、ここでは貴族なんてただの金持ちの無職扱いなのに。


「貴族と喧嘩する愚行をてめぇはやったんだぞ!?さっさと離さねぇと死ぬぞ!」

「ここは学園都市の領地だ、貴族などただの無職扱い。そんなくだらないものに縋るな。『死夢(ブム)』」

「あ──」


落ちたな。次は貴族だ。既に貴族の馬車の御者は逃げているな、そんな簡単に主を捨てるのか、と思ったらどうやら馬車内に入り装備を整えていたようだ。


「その無礼者を早く殺せ!この無能共が!この俺を誰か知らないのか!サマセット伯爵だぞ!頭を垂れろ!」

「いつまで貴族を名乗る気だ?ここがどこだか知らぬわけではあるまい」


さすがにこの貴族は知っているはずだが……まさか、本当に知らないのか?


「そんなの関係あるか!この俺になにかあったら聖帝国が黙って──」

「聖帝国ですら手を出せない場所に、聖帝が介入するとでも?」

「な、なんだお前……!早く頭を下げろ!」

「『死夢(ブム)』」


これで暫くは黙るだろう。どうしたものか……まぁ、都市に入る時に報告すればいいか。


さて、次は少女だ。恐らく俺と関係のあるやつだろう。


「そこの少女。どうだ?これでも俺を憐れむか?」

「……強いのね」

「人を見た目で判断するな、いい教訓になったろう?」

「何、私にものを教えるなんて随分と偉いのね?無礼よ。死にたいのかしら」

「お前には俺を殺せん。理由はひとつ。その前に聞こうか、お前のその制服はウッドウィル学園の1年、それも上位クラスの物だろう?」

「なんで平民がそれを?」

「俺が教えるクラスだからだ」

「それと殺せないって何が関係あるのかしら?」

「お前らより強くなきゃ教えることは出来ない、という事だ。分かるだろう?」

「…………」


そう、俺が講師をするクラスというのは才能に溢れた上位クラスの物だ。その下には中位、平民とある。


「そこの愚物は暫く起きない、こっちの馬車に乗れ、遅れるぞ」

「……いや、と言ったら?」

「遅刻は減点対象だ」

「分かったわ、そろそろこの豚を相手にするのは嫌だったの。ちょうどいいわ」

「名前は?」

「あら、生徒の名前を把握してないのかしら。教師として失格では?」

「名前だけ知ってても、顔は知らんからな」

「いいわ、教えてあげる。私はクリス・ロバーナ。よろしくね、先生」


そう言い挑発するような視線を向ける少女。


なるほどこれは……じゃじゃ馬と言うだけはある。まさか、魔眼を持っているとはな。



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