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第9話 お肉が美味しい



 それから、太陽が真上にくるまで二回戦闘をした。


 ゴブリンを倒し、ホーンラビットを狩ったところで一旦止まってお昼にすることに。


 安全確保の為に街道近くまで出て、見晴らしの良いところでホーンラビットを捌いてから魔法で火を起こし、調理していくことにする。


 グロいとか言ってられないものだね、お腹が空き過ぎてると。自分で動かないとどうにもならない状況だし、グニュっとしたお肉にちょっと涙目になったけど、不器用ながらもなんとか最後まで解体出来た。けっこう時間は掛かっちゃったんだけどね。


 初めはナイフもないしどうしようかと思ったけど、ホーンラビットの鋭く丈夫な角がその代わりに使えた。


 それに、聖魔法の『浄化』がちゃんと汚れをきれいにしてくれたから良かったよ。手も服もナイフ代わりの角も、油でべとべとになっちゃったし、無かったら大変だったはず。




 『異世界知識』によれば、どういう訳が解明されてないけど、この世界の魔物はあえて血抜きをする必要がないんだとか。

 一説によると、心臓が動きを止めると活動魔力が一瞬で魔石に吸収されてるんじゃないかと言われているみたい。

 まぁどんな理由があれ、やらなくていいなら極力やりたく無かったからいい事だ。


 ちなみに魔石を取り出さずに体内に残したままにしておくと、肉が腐りにくい状態になるらしい。

 それでも極端に暑かったら腐るし、時間が経ち過ぎると聖魔法で『浄化』しなかった場合、アンデッド化するから限度はあるみたいだけどね。




 よし、じゃあ大体解体出来たし、次は調理をしていくか。


 と言っても何にも道具はないから、簡単なものになるけど。


 とりあえず、途中で摘んで来てた大きな葉っぱを何枚か敷いてと。この大葉、森のあちこちにたくさん生えてたから念のため『鑑定』してみたところ、なんと殺菌作用や耐熱効果があったんだよね。


 見た目どおり「大葉」っていう名称らしいけど、この鑑定結果はうれしかった。サバイバルするのに欲しかったものが偶然見つけられたんだから。お腹壊して体力消耗したくないし、これはもう使うしかないでしょっ。


 葉っぱをまな板がわりにして、捌いたお肉をナイフ代わりのホーンラビットの角を使って、適当な大きさに切り分ける。


 これも道中で採ってきた茸や香草と一緒に、耐熱効果に期待して大葉で包み、蒸し焼きに挑戦してみることに。 




 それにしても、まだ到着二日目なんだよ。なのに初めて体験すること多すぎっ。


 こんなに濃ゆい時間も、こんなに長時間身体動かしっぱなしな事もないんじゃない? 元の身体だったらとっくにへばってたんじゃないかな、性能的に。



 その中でも、特に心配していた人型魔物、ゴブリンを倒したことなんだけど、これ、思ったより抵抗がなかった。


 もっと精神的にくるかと思ってたけどそうでもない。


 接近戦じゃなく遠距離から火魔法で倒したからか、それとも集団で来られてそんな余裕がなかっただけか分からないけど。




 ――あれには少し焦った。


 三体だけだと思っていたのに、魔石を採ってたらいつの間にかもう三体が『索敵』範囲に入っていて、樹に登る暇もなかった。まあ、索敵範囲はレベル1だし100mしかないからね、仕方ないんだけど。


 一応勝てたけど、火魔法を連発する速度がもう少し上がらないと、今の私じゃこれ以上の数の集団を一度に相手取るのは厳しい……。

 魔法の得意なエルフ族なのと『魔力強化lv2』のおかげで魔力にはまだ余裕があるから、今まではなんとかなってるけど。

 どうやらゴブリンのような弱い魔物程群れで行動するらしいし、魔法を無駄打ちしないように注意しないと、ね。




 あ、ちなみにゴブリン肉は臭くて食べれないみたいです。魔物とはいえ人型をしているやつを食べる勇気はないからほっとした。


 魔物の種類と利用箇所の簡単な説明文だけだけど、『鑑定』さん情報に載ってて、割りと助かってます。


 魔物肉は美味しいのもあるらしいけど、毒を持ってたり臭くて固くてどう頑張っても無理なのもあるとかで、結構、食べれないやつは多い。


 ホーンラビットは小さい割りに過食部分が割りとあって柔らかく、美味しいお肉らしいから狩れてラッキーだった。

 春と秋に数が増え、今はちょうどその時期のようで本当によく遭遇する。


 『鑑定』によれば、ほぼ全部位、買取対象のお得な魔物だけど、冒険者ギルドがある所まで後どれくらいか分からない内は、重くて嵩張るから全部は持ち運びできないのが残念だよね。


 解体に時間も掛けれないから結局、角と魔石だけ切り取って後はもったいないけど廃棄している。


 魔石以外に買取対象になる部位を持つ弱い魔物は希少だし、この森で他のにまだ遭遇してないので、また見つけたら積極的に狩っていくと思う。




 う~ん、これくらいでいいかなぁ? 香ばしい香りがしてきた!


 出来立てのお肉と茸の蒸し焼きを一つ、取り出して少しかじってみる。大丈夫そうかな? ていうかむしろ、普通のお肉よりおいしいような!?


 塩はないから、香草を少し入れただけの簡単料理だけど、肉には茸と香草の風味がいい感じに効いてて、油も乗って柔らかくて美味しいしっ。魔物肉は初めて食べたけど、生臭さも特に感じないしね。


 朝は木の実をちょっと食べただけでお腹が空いてたから、いっぱい食べちゃったよ。





 包み焼きはまだまだたくさん残ってる。三食分ぐらいありそうだけど……持ち運べる袋とかないし、どうしよう。


 このまま手で持ってくのは両手が塞がるから危ないし。何か入れれるものが欲しいな。


 外套で包むとか?


 いやでも外套は防寒着として優秀だから却下で。


 とすると、うーん。


 ……この、ホーンラビットの毛皮、火魔法で燃えちゃってる箇所があるやつだけど、穴も空いてないし、これを使って袋、出来ないかな?


 ……。


 うん、やってみよう。


 簡易的なものならなんとかなるかも!


 内側に残ってた肉片とか脂身とかを火魔法でちょっと炙ってから、角を使って出来るだけ削ぎ落とし、水魔法で洗い流していく。


 ぐっしょり濡れたのでここからが難しかった。


 結局、水魔法でなんとか水分を絞り出してから聖魔法の『聖火』で乾かすやり方が上手くいき、最後に聖魔法『浄化』をかけてきれいにした。


 後はホーンラビットの角で端の方にいくつか穴を開けて、蔦を編んだのを通して、端っこを結んでっと……。


 よし、出来た!


 不恰好だけど肩にも掛けれるし何とかなった! 魔法って超便利!

 やれば出来るもんだね、初めてにしては上出来じゃない? 匂いも『浄化』のおかげでしないから快適快適!


 でもやっぱり身軽に動ける方が安全だから、少しの食べ物以外は持たないで行こうと思う。持ち運ぶのは魔石ぐらいにして。

 無駄にあるポケットにたくさん入れられそうだし、それくらいなら嵩張らないし。人里へ行ったときの換金用のものも必要だしね。




 じゃあちょっと食休みをしてから、また進みますか!


 出発前に樹に登って何か見えないか期待して確認してみたけれど、残念ながら何も見えなかった。


 視界いっぱいに広がる樹以外は。


 まあ、焦っても仕方ないし確実に進もう。




 午後から日が落ちる前まで、出来るだけ『索敵』で強そうな魔物との戦闘を避けながら進み、夜は昨日と同じように木の上で寝たのでした。






いつもお読みいただきありがとうございます。

楽しんで頂けますように……。

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