第7話 初戦闘!
◇ ◇ ◇
おはようございます。
嫌味なくらい爽やかな朝です。朝日がまぶしいぜちくしょ――!
今日は昨日よりましな生活をしたい。
うん、出来る気がする。あれよりダメになりようがないし。
……低い目標だな――。
まあでも何事もなく一晩こんな大自然のなかで過ごせてよかったよ本当。
不気味な遠吠えとか聴こえてきて、あんまり寝れてないけどそれは仕方ないし。
昨日は一応、街道から『索敵』の範囲内にずっといたけど、誰も通らなかったと思う。
ちょっとは期待してたんだけどそう上手くいかないか。
車輪の跡とかはあったから使われてないことはないと思うけどね。
ではさっそく移動開始しますか。
とりあえず太陽の位置からすると、街道は南北に走っているようなので、なんとなく勘で南に向かってみる。
樹の上から確認した時に、南の方が少し緑が薄くなってて深い森がない気がしたので、人里があるかもと思って。
今のところ何かを判断出来るだけの情報はないし、『幸運』スキルを信じてこのまま行ってみます。
でも、街道を直接歩くのはまだやめておく。
エルフに限らず長寿種族を害する土地もあるらしいし、まだここがどこかも分からないからね。
ばったり会って即戦闘っ、とかなったら怖すぎるし、用心して街道から少し離れたところを歩いて行こう、うん。
一時間程こそこそ隠れながら進んでいると、『索敵』に反応があった。
――魔物だ。
どうやら向こうは気づいてないっぽい。
それにこの感じ、なんとなくだけど、さほど強くなさそうに感じ取れる。
すごいぞ『索敵』様、頼りになる!
この距離なら避けることも出来るけど、どうせいつかは戦わないといけないんだしやってみますか。こ、怖いけど。
昨日は『隠密』使って全力で避けてたけど、今日は頑張るって約束したからね、自分に。
う~ん、攻撃に使うなら水魔法よりレベルの高い火魔法のがいいか?
火魔法のLv2には一応、広範囲を一撃で狙える予定の『火炎噴射』があるし。昨日からこのスキルだけは少しずつ練習して、初回よりはちょっとだけ微妙に威力も増してるしね。
それに、この辺りならそれほど草も生えてないし、火が燃え移る心配もなさそうだから使っても大丈夫なはず……ノーコンじゃなければだけど。
………………。
ま、まあ今回はそれでいっとこう!
――100mなんてすぐだ。
相手はそれなりのスピードに乗って近づいて来ているし、あってないような距離になる。
素早く樹に登り、息を潜める。
上を取った方が有利だと誰かも言ってたしね。
カサカサカサっ!
予想より早く音がして、視界に入って来たのは大きなネズミっぽい魔物。
『鑑定』するとポイズンラットというらしい……のが六体。
固まって移動してくる。
まだこっちの位置は気付かれてない。
『火炎噴射』の飛距離は10m~20mほど、充分引き付けて……。
先手必勝、当たれ!
『火炎噴射』!
バシュっと勢いよく火炎が飛び出す。
よし、先頭の三体に着弾した!
――あと半分。
ババッと即座に散開して向かって来たので、ここからは一体ずつ倒す。
ちゃんと狙って……。
今度は『火矢』を打つ。
わわっ、すばしっこい。毛皮だけ焦げたっ。
もう一度、よく狙いを定めて落ち着いて……。
『火矢』!
当たった! あと二体。
でももう距離がないっ。
ちょっ、樹の下に集まってきた!
集中しなきゃ!
今度は飛距離も、連打間隔も短く出来るこれで!
『火弾』!
やだ当たんない、え~いちょこまかと!
ただでさえコントロール? なにそれ美味しいの? な状態なのにこんなに動かれたら狙いが定まらないってばっ。
カサカサッ、ガサガサッ、ガサリッ。
はわわっ、樹に登ってくる!
やだってば!
こっち来ないでっ。
『火弾』! 『火弾』!! 『火弾』ーー!!!
「よし、当たった!?」
か、勝ったよ!
無駄打ちいっぱいしちゃったし、ギリギリだったけど……でもこの世界に来ての初戦闘、一人でやれたんだ!
お読みいただきありがとうございます。