第57話 茸はどこに?
◇ ◇ ◇
女将さんの美味しい料理を食べ、部屋で正午まで休憩し英気を養ってから、再度北の森に行くことにした。
リノには早速、買ったばかりの革鎧を着てもらう。ブルボさんが主に胸の辺りをささっと直してくれたので、窮屈そうだったところにも余裕が出来て快適に仕上がり、サイズはぴったりになった。
「革が柔らかくて動きやすいです。これならいまから練習がてら、森の浅い部分に着て行っても大丈夫だと思います」
「よかった。でも、今日は無理せず慣らしていく方針でいこうね」
「そうします。安全第一に、ですから!」
ということで念願の革鎧も手に入ったことだし、私の方も魔力が回復したので、早速、出発することになった。
「金茶香茸、見つかりますかね?」
「どうだろ? 私も一度、偶然見つけただけなんだよね。群生する茸だから、一ヶ所見つかれば最低でも十個くらいまとめて手に入るんだけど……。女将さんに納品する香草塩の分くらいの在庫はあっても、私達用のが足りないから欲しいなぁ。買うと高いし」
「ですよね。頑張りましょう!」
今回は午前中に回った所とは別ルートを通る。
一応、迷いの魔樹討伐の緊急依頼も受けてるから、そっちにも気を配りながらって事になる。襲われた場所が不明だし、短時間見つけるには厳しいと思うけどね。
森に入ってまず目につくのは大きな葉っぱの茂み。
両掌を目一杯広げたぐらいの大きな葉で、初めてこの世界に来た時からなにかとお世話になっている大葉だ。
この葉で料理したり包んでおくと常温でも長持ちするので野宿していた時は本当に助かったんだよね。
ちなみに『鑑定』では……、
【 大葉
効能:防腐・殺菌作用
可食:不可
採取:効能が高い濃い色の葉を採る
森の中なら何処でも大量にある
加熱に強いので、器の代わりに利用される
繁殖力旺盛で年中採取可能 】
となっている。
町中で育てても効能のある葉に育ちにくいらしく、冒険者ギルドが百枚で1シクルの常設依頼を出ている葉だ。
安全な森の外周付近でもすぐ見つけられる新人冒険者向けの安い依頼になるんだけど、屋台や商店で、持ち帰り用の器にも使われているから常に需要がある。宿で女将さんが作ってくれる携帯用の昼食も、この大葉で包んだものだし。
冒険者や狩人も、採取物を包んでおくと鮮度が保たれ買取価格も上がるからよく使うけど、繁殖力旺盛なのでいくらでも生えてくるというとっても使い勝手のいい便利な葉っぱなんだよね。私達用にも道すがらたくさん摘んで行こうと思う。
午前中は採れなかった茸を収穫しながら進んでいると、ようやく『索敵』でウォークバードを見つけた。三羽いる。リノの為にも全部狩りたいな。
飛べない鳥だけど、臆病なのでこっちに気付くとすぐ走って逃げてしまうから、あまり近づけない。私が遠距離から魔法で狙い打ちする事にした。
ノーコンを返上したとはいえ、この距離からピンポイントで三羽の頭だけを続けざまに狙うのは厳しく、一羽には逃げられ、二羽は胴体に着弾してしまう。
う~ん、一瞬で数羽を仕留めきるって難しい……つい焦っちゃうし。まぁ、リノが短剣ですぐ止めを刺してくれたしよかったとしとこう。
『解体』スキル持ちの彼女に簡単に下処理を任せ、その間に私は『索敵』しつつ、『鑑定』と『嗅覚強化Lv1』で周辺の地面を探る。
前回見つけたのが樹の根元だったのでその辺りを中心に、期待を込めて視ていった。
金茶香茸は、色は濃い茶色で周囲と同化しやすく、生えてる場所も地表ギリギリで、非常に分かりにくく採取の難易度が高い茸だ。
この広い森の中から見つけ出すにはスキルがあっても中々難しい条件だけど、雨降りの後は他の日より有利だと言われているので根気よく探していくしかないんだよね。以前採取した場所は『マップ作成』にマークしてあるけど、最初に立ち寄った村近くなので行くには遠いし。
しばらくそうして地道に探っていると、『嗅覚強化』スキルで気になる所があった。
落ち葉が降り積もっているのではっきりとしないけど何かある。風魔法で一気に巻き上げて地表を確認してみると……。
んんんっ? やっぱりありそう! たぶんここかなって場所を『鑑定』してみると……。
【 金茶香茸:香茸
効能:食欲増進作用 滋養強壮作用
可食:生食可
バターのような香ばしい独特の香りがある
大きい程香りもよく希少価値が高い為、高値が付く
採取:地表ギリギリに生え、落ち葉に隠れて見つけにくい
鑑定スキル持ちや、嗅覚の優れた獣人族向けの採取
採取時期には同じ場所に何回も生える
春~晩秋迄採取可能 】
――おおっ、あ、あったっ。ようやく見つけたよ!
ここに一つある、ということは……。
更に範囲を広げて落ち葉を退けると、いっぱい出てくる。やったぁ! 群生してる!
「見つかったんですねっ。それもこんなに!」
「うんっ、ようやくね! 早速採っちゃおう」
「はいっ! うわぁっ、大きいのも結構ありますねっ。これは高値で売れそうじゃないですか!」
リノも合流し、大小様々な大きさの金茶香茸を嬉々として二人で採取していった。
最終的にはこの一ヶ所だけで、小さな袋一つ分は採れるという大収穫でした。もうとっても満足です!
背負子にはまだ余裕があるし、ここまででたぶん二時間ちょっとぐらいしか経ってない。この後どうするか二人で話し合った。
「目的のものは手に入れましたし、ちょっと遠回りして別ルートを通って帰るっていうのはどうですか? 今日のギルドは雨降り後ですし、いつもより早い時間に成果を上げた冒険者で混み合いそうな気がします」
「なるほど、そうだね。迷いの魔樹の見回りにもなるし、そうしようか」
と言うわけで森の奥へ進むのはやめて、街道に向かって戻りつつ、その過程でまたちょこちょこと採取や討伐をしていく事になった。
ホーンラビットも討伐出来たしウォークバードもまた一羽手に入れられたので、リノがホクホク顔でお肉を担当すると言って自分の背負子に乗せて持ってくれた。うん、重いのに幸せそうに持ってくれてありがとう。帰ったらそのお肉で美味しい料理頑張って作るからね。
その日は結局迷いの魔樹を見つけることなく森を出る事になった。活動時間も短いし、そう上手くは見つかんないか。
買取の際、冒険者ギルドにもその旨を報告し、金茶香茸のおかげで高額になった報酬を受け取り、宿に帰った。
いつもお読みいただきありがとうございます。




