2・覚醒、すべてはここから始まった・施設散策
「ん、んん…ここは…?」
起きてみるとそこは真っ暗な空間だった。私は身体を動かして周囲を確認する。どうやら四角い箱の中にいるらしい。酸素は足りてるのだろうか。魔法で小さい光を生み出して周囲を確認する。私は黒いワンピースを着ているようだ。箱は…棺に近いか。
頭が回転するのを待ってからPDAで時間を確認。
777年5月20日!?500年くらい経ってる!!!PDA壊れたりって…しないよね…え、本当に777年?え??
外に出よう。棺の蓋を動かす。少し硬かったがマナで身体を強化して事なきを得た。ずらした蓋から身体を覗かせ周囲を見ると他にも棺が。起き上がって一つ一つ見て回ったけどミイラになってたり骸骨になってたりと死体だらけ。500年…私もこうなっていたんだろうか。
何の部屋か調べたけど棺が10個ほどある部屋ということで、私見たく眠っていた人をあつめた部屋みたい。普通の死体がないのが時を感じさせる。
少し寒いので物理法則で体温表面の空気の温度を調整。こういうのはナノマシンを使って物理法則に介入した方が私の場合エネルギーコストが安い。何でも節約。アルバイトは節約できないと生活に支障を来すからね。
暖かくなった所で気で空気に粘りをつけて私から暖めた空気が逃げないようにして、そして階段を登りました。ここはどこなのか。
階段を登るとそこは科学寄りの魔導施設の跡でした。ライトは生きてて情報端末も動いていそうですね。情報端末にアクセスすると、棺の中の状態が表示されました。モニターされてたのか。生存中もいるけどほぼ死んでる。生存中の人をどうにかしたいけど、開封まで時間設定されているらしくどうにも出来ない。棺は開かなかったしなあ…
長い時間いろんな情報端末をいじって上手くいかないか探したけどどうにも出来ないので諦め、違う部屋を探しに行くことに。
探し回った結果同じような部屋は全部で3つ。魔導施設も3つ。まだ生きてる人は私含めて5名いました。その…ミイラになりませんように…
…この人たちもモンスターに囚われてここに入れられたのかな。理由がよくわからんね。
探索を切り上げ奥に進んでいくと研究員とかセキュリティの人たちの宿舎みたいな者があり、大体が風化してました。化学繊維は大丈夫で、女性ものはありませんでしたが下着と靴下、靴をゲット。これからどうなるかわからないけど、ここは放置されてる研究施設っぽいし今のうちに物資を探った方がいいよね。缶詰は賞味期限が420年過ぎてるとかなので食べる勇気は無いっす。寝て80年は稼働してたのかな。あー本当に500年寝てたというのを突きつけられてる気がする。認めたくない。521歳。認められん。しかも5月20日は誕生日だ、これが新たな旅立ちというわけか。ふぁっきん。
宿舎より先は荒れた研究施設みたいな感じで構成されており、物を物色しながら進んだ。クロームか何かでメッキされた鉄パイプ(おそらくはナノ魔素融合金属で出来た凄い材質のパイプだとは思う)があったので左手に。利き手なので。これで暴漢に襲われても10分くらいなら逃げられそうだ。根本的に弱いから最終的には負ける。身長も147cmしかないし。女性の平均身長160cmの時代にこれやで。おかげで小動物的な人気はあってよかったけどさ。
だんだん道が広く大きくなり、セキュリティ待機室を横目に抜けると、歯車がはめ込まれるような場所に。この歯車がドアかな?中央にあるネジっぽい歯車が機械的なロック機構。ゲームにありそう。開くかなこれ。コンピューターが生きてないと難しい…おお、これがそうか。投影式の情報端末じゃなく有線とモニター表示式の情報端末だ。堅牢化されている。ええとPDA認証…弾かれたっ!?どうしよ、外に出られない。有線は…ふるいPDAについてるやつだよね。私のは当たり前だけど当時最新式のだから…
ふと下を見ると骸骨のこめかみから頭部を抜けて突き出ている線を発見。…これ?有線?え?これ?これってどっちかっていうとゴーストがインザシェルした漫画のあれだよね。どうやってくっつけるんだろう。拾い上げてみるか。
構造は脳みそに取り付けていただろう基盤と伸縮するコード、接続する雄ジャックの3点。ふーん。左手に載せてころころさせていたらPDAに反応。
《有線接続のパーツを確認、取り込みますか?》
おおう?詳細。
《有線接続ツールをPDAに有機的に取り込むことにより、PDAに非接触式だけでなく接触式認証や行動を行わせることが出来ます。注意点としては有線なので情報端末がウィルスに冒されていた場合即座の遮断が出来なくなります。》
取り込む以外選択肢無し。取り込んで。
《インストール開始。》
PDAの手のひらの小指側にある有機的結合部分にパーツが吸い込まれていき、基盤とPDAが「有機的に絡みついた」のが感覚的にわかり、「PDAが成長して小指と中指を取り込んだ」のもわかりました。まってまってそんなの聞いてない。
《インストール完了。小指と中指で意識的にコードを出し入れできます。投影からの疑似有線接続も可能となりました。》
…ふーん。,目の前のクランクの解放は脇に置いて、ちょっと出し入れをしてみる。ほほー2本の指から同時に出せて放物線だけじゃなくてミサイルのように軌道も変えられるのね。意識して切り取れたので切り取ってみた。硬いなこれ。ナノマシンで作られてる感じがする。意識的にナノマシンを解体したら崩れたので確定。崩れたのは吸収しておきました。回収してリサイクルしてもエネルギー収支はマイナスだけど、リサイクルするとしないとでは消費エネルギーが全然違います。
ついでにどこまで伸びるか太さを変えられるか実験。10mくらい延びた気がします、伸びるのはどこまでも伸びそう。太さは変わりませんね、0.2mmくらい。縒れば糸になるし紐になるな。私はアルバイター、枯れた技術の水平思考しないと商売あがったりなんだよ。お裁縫とか出来ないとやっていけないわよ。意味合いが違うって?ニュアンス!!創意工夫!!!
強度は階段手すりを使って自分を重りにして測ってみました。一本でも私1人なら余裕がある状態でぶら下がれますね。小指と薬指で2本出せるからそれを縒って、崖とかに引っかければ強靱なロープになると思う。普通のワイヤーみたく4・6・8本編みにしたらロッククライミング用や軍隊のヘリボーン作戦に使うロープになるんじゃないかな。切断や摩耗に強いかはまだわからないけど…
よし、死ぬ準備が出来た。有線接続してウィルス感染だな。…疑似有線接続があるんだっけ。
PDAに疑似接続をさせて接続。投影画面から接続ジャックが延びて有線接続に刺さりました。…疑似だけで十分では?
文字が投影画面の方に送られてきたので読むと、「重大、外との接続を図りますか?」とのこと。それを見てまだ寝ている人のことを考えてしまったけど開ける以外に私が生き残るすべはない。開けよう。認証。決定。
なんか凄い機械がロック機構のネジ部分を抜き去り、ロックが外れた歯車が端に収納。完全にあれじゃんかこれ。ベセなんとかソフトワークさんごめんなさい。
まいいや、外に出よう。光が入ってこなかったし洞窟かな?気を使って空気の流れを読んで屋外へ。まだ生物見てないなあ。
ここは隠されていたんでしょう、狭い入り口を抜けて見えたその風景は
荒廃した風景でした。えぇ…