第8話「壁ドン」
「今日もプリントが多いですわね」
そうヒカリに話しかけて来たのは七日会副会長の門島モミジであった。
ヒカリは学内では頭脳派の優等生で後輩、同級生、そして3年生からも一目置かれている存在である。
そしてこの七日会は佐々木原中学校のデータベースを教員たちと共同で管理している重要な部だ。それの会長がヒカリと言う訳。
「仕方ないよ。私職員室に持っていくから」
「いえ、会長お疲れのお顔されております。私が代わりにやりますので」
確かに最近は毎日の様に悪魔が現れてパトロールで疲れてはいる。モミジも優秀で気が利く、利きすぎてヒカリが申し訳なくなる事も頻繁なのだが、ここは甘える事にした。
「では会長失礼いたしま……」
「よぉヒカリいるかー」銭が現れた。ヒカリはめんどくさい奴が来ちまったと頭を抱え溜め息を吐いた、と同時に「あ、危ない!!」銭が突如叫んだかと思うとモミジの顔のすぐ横に拳を突き出した。「ふー。危ない所だったね」
状態は壁ドンではあるが、壁は銭の拳が食い込んで大きなひび割れが出来ている。
銭は目が超良いのでインフルエンザウイルスが飛空しているのを見つけモミジの口の中に入るのを防いだのだが……。
モミジは無言でわなわなしていたかと思うと「嫌ー!危ないのはあんたでしょー」顔面蒼白で必死で叫んだ。また無言になってしまった。死ぬかと思ったようだ。そりゃそうだ。
「いや、インフルエンザウイル……」
イテテイテテ……。ヒカリは激怒し銭の耳を引っ張り「あんた!何やってんのよー。目立つのよー。私の友達に何すんのよー!ちょっとモミジ大丈夫?」
「か、会長のお知り合いの方でしたか」モミジは恐怖で泣きながら震えていたが、ヒカリが声をかけてくれたおかげで安心した様子で、銭が何を目的に七日会の教室に来たのかの結論が出たし、すっと立ち直り「ちょっと貴男、何か分からないけどありがとう。でもヒカリ会長の次に美しい私の顔に傷をもし付けたら許しません事よ」
「女は顔じゃないと思うけどなぁ」と銭が言ったが、モミジは、私のような者が会長のお知り合いの、馬鹿力ゴリラに文句を言っても仕方ないと諦めた。
「会長、行ってきますね」
「ああ、うん。何かゴメンね」
「いえ会長の為ですから」と言って銭の無骨な振る舞いの風圧で少し乱れたセミロングの髪を手で整えて去って行った。