第16話「政宗アクアモード」
今日は七日会の仕事が忙しい。
モミジが「会長、お疲れですか?そんな顔されていますが」
「うん、ちょっとね。色々あるんだけど心配しないで」
モミジがちょっと頬を赤らめて「ならよろしいですわ」と安堵した感じで言った。
ややしばらくして凄い物音と地鳴りがした。竜巻のような物が具現し校舎を襲った。バリンと音を立てて校舎の窓ガラスが片っ端から割れた。
「きゃー!」モミジが悲鳴を上げる
「なにこの砂?まさか昼間から悪魔?」
「ヒカリ大丈夫か?」銭がいち早く現場に来て言った。
「銭!」
銭は悪魔辞典を捲るまでも無く「サンドゴーレムだ。かなり強い。攻防一体型の上級に近い悪魔だ」
ヒカリに銭は「白崎と美智子を呼んで来てくれ。俺達2人じゃ分が悪い」と言い変身した。
「だけど……」ヒカリは銭1人残す事に躊躇していたが、銭に「早くしろ!このままじゃ死人が出る可能性だってある!とりあえずグランドまで俺が引っ張り出す!」
「分かった」ヒカリは納得しつつ、急いで白崎と美智子を探しに行った。
「白崎、美智子ヤバいの。早く来て!」
茶道部の部室で2人は抹茶を点てて啜っていた。
「何だ。至極のおやつタイムを楽しんでいたのに」
「白崎、さっきの地震みたいなの悪魔なんじゃない?」
ヒカリは玉の様な汗をかいて、酷く焦った様子で「銭1人で戦ってる。生徒や先生達が危ないからグランドまで誘導するって。上級悪魔のサンドゴーレム!」
今回もスクリーマーの力が必要な戦いになりそうだ。
「分かったよ。この抹茶を飲んでからな、アチチ……」
「私達、猫舌でゴメンねー」
ヒカリはキレ寸で2人の耳を引っ張って校舎の外へ出た。そこは……。
そこは一寸先も見えない砂の雨とでも言えばいいのだろうか。
グラウンド一帯に砂が舞い上がっている。銭はどうしたのだろうか?
「何よ……これ?」
「ヒカリどいて。黒石の奴、何手こずってんのよ。チッ。めんどくさいなあ。ほれ!」
ウインドアローだ。数千の矢が風を纏ってターゲットを攻撃する。砂は風に曝されて雲散霧消した。
「ふん。こんなもんよ。全く魔法だか知らないけど、って、なに―?あの化け物?」
まるで砂鉄がU字磁石にくっつくかの様に、砂は大きな体躯、ゴーレムに変化していた。
「これがサンドゴーレムの恐ろしい所なんだ。砂を変幻自在に使い分け、攻防を一体化している」ようやく姿を現した銭は言った。
とりあえず視界は確保できた。これで校舎内の人はしばらくは無事だろう。しかしどう戦えばいいのだろう? 「佐々木原氏は水の街」さだべぇが現れて言った。
「さだべぇ!何処に行ってたの?」
「ん?ちょっと会議にモゴモゴ」ピルクルがさだべぇの口を塞いだ。
ピルクルもいたようだ。「銭、勝算は?」
「今の所0.1%」とピルクルの問い掛けに答えた。
「さっきさだべぇが言った様にここ佐々木原市は水の守護を受けている街なの。古典によるとサンドゴーレムは何回かこの街に訪れては人間に風と砂の祟りだと言われていたけれど、地脈研究家が掘り当てた水源から水を放出させて撃退していたようなの」ピルクルは言った。
「なるほど。マナか」
「そう」
「ヒカリ、お前の出番みたいだ」そう言って銭はポンとヒカリの肩を叩いて「これからアイアンフィストで地面の一部を破壊して水脈を掘り起こす。それを政宗に取り込んで水属性の攻撃をする。今回に限っては使えない属性でも大丈夫。マナの力を借りて一時的に政宗アクアモードに入れる」
「ええ!そんな事出来るかな?」ヒカリは不安そうだが、銭は「それ以外の方法は今のところない」と言い切った。ヒカリに重要な責務が生まれた。
「じゃあ行くぞ」
「う、うん」
「アイアンフィスト!」地面をぶん殴った銭は水脈を掴んだ手応えが充分。水が噴き出すのだろうかとみんな思っていたようだが、予想に反してそうでは無かった。気温が急に低下したような感じで、肉眼で視認出来る青い色のマナがグラウンド中に溢れた。サンドゴーレムはそれだけで苦しそうだ。
「いけ!ヒカリ!」
「うん、政宗アクアモード!」
政宗は最初無反応だったがしばらくして光り輝き出した!
「よっし行くぞー」ヒカリは右手に持った青く光る政宗でサンドゴーレムに斬りかかった。