第15話「アダマンタイマイ戦 熱膨張」
学校が終わって夜になった。「さぁみんな!今日も佐々木原市の平和を今までよりも厳重に守るよ!」
白崎と美智子は何で付き合わされるのか、迷惑だと言う顔をしている。
「ん?」銭が歩を止めた。
「どうしたの銭?」
「魔力の波動を感じる」
ヒカリはデルンダ―を使用した。何かとてつもなく遅いスピードで近づいて来る魔力が炙り出された。
「よし、行くぞー!フォーメーションA」
何時の間にかフォーメーションをヒカリが決めているのを知りスクリーマーの2人はヒカリの強引さにうんざりだが、同中のよしみもあって一応付き合う。
姿が見えだしてきた。
銭はそれを見て悪魔辞典を引いた。
「アダマンタイマイみたいだな。級で分かれていないな。レベル3だ。悪魔が増えて来たので更新されてるんだろう」と銭は言った。
スクリーマーの2人は気まずそうな顔をして言った。
「アダマンタイマイはその強力なウロコでほぼ全ての物理攻撃を弾く。どうやら今回は出番が無さそうだ」と困り顔に少し面倒事から解き放れた安堵感を交えた表情だ。
「じゃあねー今日の所はバイビー!」2人は去っていった。
ヒカリは「何なのあいつらやる気が全く見られん。クビだ!」と怒った。
仕方ないと言う感じでヒカリは叫んだ!
愛玩衣服変化!
ヒカリは一瞬だけ一糸纏わぬ姿になった。
銭はビックリして顔を背けたが、再び見た時にはスケートの選手みたいなヒラヒラした全く戦闘に向かなさそうな格好だったので2度ビックリした。
銭は「そんな技あったのか?」と問うが、ヒカリは言った「お爺様が古文書解読してお屋敷邸内の何処かに隠されていた政宗見つけたの。その時、変身しただけでは使えない、政宗の呪いで若い男が憑いているから可愛い服着ていないと銅剣以下の力しか発揮出来ないって。霊の癖に私のバージン狙うとは何たる不埒な!今後私の愛刀になるだろうから多少は許すけど」
左手持ちだった長船と違って政宗は利き手の右手で使えるので攻撃力も高まる。
そして「氷を司る者、冷血と引き換えに魔力解放せよ!」とヒカリは詠唱を行った。
すると政宗はキンキンに冷えたビールなど比べ物にならない冷気を発して煙っている。
「銭、フィストに火込めて!」
「え、何で?」
「いいから早く!あいつ動きはトロいけど攻撃力高そうだし、一発か二発で決着つけないと長期戦になる。大丈夫。私の言うとおりに、早く!」
銭はよく分からないと言った顏でヒカリの狙いには全く思いもよらずしばし釈然としない顏をしていたがヒカリには何か勝算があるようだ。
「銭、お願い。ファイアフィストで奴の身体を熱せられるだけ熱して!」
銭はちょっと懐疑的な顔をしていたが、ヒカリに何か策があるのだと思った。
「分かった。変身アンチ!」銭は魔力をじわじわ高め己の拳を熱して放った。「ファイアフィストフル!拡散スプラッシュ!」
アダマンタイマイには何の変化も見られない。そりゃあれだけの甲羅だ。
熱しただけで溶けるはずもない。ヒカリの方を珍しく不安げに見つめる銭。どうすると言うのだろう?
「銭、ナイスプレー!充分だよ!」
ヒカリも右手に握りしめた政宗に魔力を込める。
「政宗頼んだよ!ランスモード・アイス!」
槍で一点突破の額を狙った攻撃! アダマンタイマイの極限まで熱せられた身体を氷の槍が突き刺す。
するとその部分がまるでタンコブの様にボコッと膨らんだ。
その現象を見ていて考えた銭。成程。
「そうか、ヒカリ熱膨張だな!」
「銭、御名答!」
「拡散スプラッシュ!」アダマンタイマイは急激な温度差に全身が膨張しひび割れやがて破裂した。
よっしゃあ! 銭とヒカリはハイタッチした、が
「う、ちょっと勘違いしないでよねー。成績優秀、理科のテストはいつも100点のヒカリ様が考え出した唯一の勝ちパターンだったんだからね!」と男性とのフィジカルコンタクトを頑なに避けるヒカリはプンプンしながら言った。
「いや、凄いよ。正直俺1人じゃ絶対倒せないと思った」銭は素直にヒカリの戦略に感服した様子だ。
「おーい」
空から声がした。白崎と美智子だ。
「面白いショーだったよ」美智子はゲラゲラ笑いながら逃亡した事も悪びれず、ただ戦況を見ていただけの様子で、白崎は「バレット系が効かない敵もいる。魔法は凄いな」と感心していた。
「あんたらねぇ、佐々木原市を守るには段々凶悪化してきている悪魔にフォーマンセルフォーメーションを取るのが基本!居ても居なくてもとかそういう事じゃないの!」と釘を刺した。
「まぁ勝ったから良いじゃん、ルン!」
「今度から気を付けるようにする」
何とか無事に強敵を退け安心してはいたが、少し一筋縄では悪魔全てを倒すのは難しいかも知れない。ヒカリは今回の戦闘でますますレベルアップしなければとキレる頭で効率を考えていた。




