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異世界で吸血鬼の王の力を手に入れた  作者: 海木海
第一章
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第六話 ティーファ

 俺とリーリア、はギルドへ戻ることにした。

 依頼の進行は止め、二体のリザードマンの首をギルドに渡すと、変わりとして銀貨一枚が渡された。まだ完遂されていないから、これが限度と言われた。

 そして宿へ戻り、三人にして向かい合う形となる。

 そう俺とリーリアはエルフの子を保護した。リザードマンが溢れる森に置いておくことは問題と判断したからだ。ただ、エルフを人間の街へ連れていくことは許されていない。そのため、ティーファにはフードを被ってもらい、なんとか誤魔化した。

「私はエルフとヒューマンのハーフです。エルフの里にも人間の街にもいることが許されず、一人で生きていました」

 ティーファと名乗ったエルフとヒューマンのハーフはそう自身の境遇を説明した。

 こういうことは少なくないらしい。

「エルフとヒューマンのハーフ? 全然、そう見えない」

 リーリアの言葉通り、ティーファの見た目は普通に綺麗なエルフだ。

 長い金髪と、少しとがった耳。肌は白く、スタイルも良い。エミリアさんに劣るが、張り合えるほどの美女だ。

「それでこれからどうする? 保護しちゃったけども、森には返せないし」

 リーリアが相談してくる。

「この街に住むことは難しいのか?」

「人々は許さないと思うよ。人間は難しいから。私は違うけども」

「大丈夫です。フードがありますから。これで耳を隠せばまず見つかることはないです。それに」

 それにとティーファは続けて。

「イツキ様が助けてくれますから」

 どういうわけか、俺はティーファに好かれてしまった。

 命を助けた恩人だからだろうが、それにしたら簡単すぎる気も。まあいいや。

 何故か様付けで、俺にべったり着いてくる。

 リーリアがジトッとした目を向けてくる。

「イツキ、鼻の下伸びてる」

「伸びてない」

「嘘。ティーファの大きな胸の感触が気持ちいいのでしょ? あーあ、汚らわしい」

 リーリアがそんなことを言う。

 いや、まあ。

 ティーファはなぜか俺の隣にいる。そして当たり前のように胸を押し付けてくる。

「お母さまはこうしろと言っていました」

「あんたのお母さん、すごいな」

「ショーフをしていたと聞いています。何かは分かりませんが」

 ショーフ?

 どこかで聞いた言葉だ。

 それを必死に漢字に変換するができない。喉元まで上がっているのだが、思い出せない。

 なんて思っていると、リーリアの顔が赤く染まった。

「ちょ、何を言って!」

「リーリア分かるのか?」

「むしろ、なんでイツキは分からないの?」

「知らないから」

 そう言うと、リーリアは小さくうずくまり、ごにょごにょと小さく口を開く。

「…………ふよ…………たち」

「…………?」

「娼婦よ! 男の人たちが性欲解消のために利用する人たちよ!」

「ああ!」

 娼婦のことか。なるほど。これは確かに言いづらいことだ。特にリーリアには。

「え、あれ。本当に?」

 思わず聞き返してしまう。

「可笑しくはないと思う。人間に捕まって、なんてことはあると思うから」

 そうリーリアは真面目な表情で言った。

 その言葉を聞くと、俺は人間に対して殺意が沸く。

 どうしてそんなことをするのか。そう考えて、復讐を考えている男が何言っているのかと思うと、自分の存在もまた汚いものだと分かり。

 俺は少し考え込んでしまう。

「大丈夫ですか? 表情が暗くなりましたが」

「大丈夫大丈夫」

 いや、違う。

 吸血鬼の王を殺した人間の方が悪いに決まっている。

 その人間を殺すことは違う。

 これは意地汚い人間とは違う。

 正しい心だ。

「私はイツキ様に助けられました。もしも助けられなかったら、私の人生は終わっていました。だからイツキ様にご恩をお返ししたいと思っています。もしも何かあれば仰ってください。もちろん、そのショーフに近いことでも。何でもします。だから悲しい表情はしないでください。私も悲しくなります」

「ちょ! ティーファ、そんなこと言ったらだめよ!」

「どうしてですか?」

「ああ、もう!」

 リーリアがティーファを連れて、ひそひそと内緒話を始める。

 話の内容は分かる。

 ティーファはこれからそういった発言をしないこと。男はそう言ったことを望まない。もっと、気品あふれる方が好まれる。

 そんなことを力徳していた。後半の内容である、好みは人それぞれであり、答えはない。あくまで、ティーファの発言を和らげるために言ったみたいだ。

「分かった?」

 念を押され、ティーファは。

「はい。分かりました」

 と返事をした。

 これからティーファの行動は抑えられることになると思う。

 そう思うと少しだけ残念だった。

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