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異世界で吸血鬼の王の力を手に入れた  作者: 海木海
序章 始まり
1/15

第一話 異世界移転~吸血鬼の王との出会い~

あらすじに書いてある通りの作品です。

題名である、吸血鬼の王の力を手に入れるのは次です。(厳密には一話と二話の間)

主人公は人間の中では最強クラスになりますので、俺TUEEE系の作品だと思ってください。

 俺の人生は平凡に進んだ。

 名前は樹。歳は二十五。

 性格は負けず嫌いなところがあると自負している。

 家族構成は父と母、姉と弟がいた。

 私立の中学、高校を通り、地元の国立大学の工学部を卒業後、地元で有名な会社に入社した。入社して二か月ほどして俺は念願の一人暮らしを始めた。地方だったこともあり、安月給でもなんとか生活が続けれていた。

 趣味はドライブ。読書。ホラー映画鑑賞。他にもいくつかあるが、一つのことに没頭することはしない。

 友達の数は多くなく、また少ないわけでもなく。ただ親友と呼べる相手はいなかった。

 休日は家でレンタルしてきたホラー映画を見ながら、お酒を飲むのが日課だった。お酒にあったおつまみを作ることも同時に得意になっていた。

 そう。

 そんな平凡な人生。

 だった。

 少なくとも、その時までは。



 気づいたら、そこは草原が広がる世界だった。

 草原の上に俺は寝転がっていた。

 ここはどこだ。

 と思っても、答えがあるはずもなく。

 ここに来る前のことを思い出してみる。

 久々の日曜日に家でホラー映画を見ながら日本酒を飲み、初めて挑戦したアヒージョが意外と美味しくできたことに嬉しかったのを覚えている。

 そして気分良く寝た。

 久々の休みだったこともあり、ものすごい快眠だった。ベッドの上に寝転がり、数分で眠ったと思う。

 そして、目が覚めたらこれだ。

 意味が分からない。

 何が起きた?

 誰の仕業だ。

 そんなことを思いながら、あたりを見渡す。

 すると、ここかどこなのか分かってくる。

 いる場所は草原。前には大きな湖。湖の先は森。後ろにも森。湖の先の森の中に大きな屋敷が建てられている。人が作ったであろう道は見当たらない。

「とりあえず人を探そう」

 あまりにも非現実的なことが起きると、むしろ冷静に行動できるみたいで。

 俺は見える屋敷を目指すことにした。



 素直な心を言えば、その屋敷に行きたくはなかった。

 森に囲まれた中に建つ屋敷。あまりにも怪しい。

 何故、こんな森の中に建てたのか。何か良くない理由があるはずだ。

 しかし、今はそんなことを言っていられない。

 湖の周りを歩き、その屋敷を目指す。

 湖の直系は目算で一キロほどだろうか?

 ならば、外周は三キロとすると、俺が歩く距離はその半分。でも屋敷と湖が離れているから、二キロほどだろうか。一般的な歩行速度は時速4キロほどだから。

「三十分ぐらいか」

 時間にすると妙に近い気がした。

 でも実際は違う。

 道なき道を歩くことの大変さに俺は気づいた。

 大小さまざまな石。草木。足に神経を使う。時には邪魔をする木を避けて遠回りをする。

 コンクリート以外の道を歩くのは久々だ。

 汗が出始めて、シャツが汗で濡れる。そんな不快な感情を押し殺して、ただ俺は屋敷を目指す。

 三十分ほど、歩いただろうか。


 ふいに甲高い獣の遠吠えが聞こえた。


 犬か。狼か。

 その類だと俺は思った。

「まずいかな」

 襲われるかもしれない、という安易な恐怖が生まれた。

 野生の動物、例えば熊とか。そういった危険な動物がもしも目の前に現れたら。俺は逃げるか死んだふりしかできない。

 急ぐべきだと俺は思った。

 そんな俺の前に一匹の狼が現れた。



 静かに湖の水を飲む。

 その姿は凛々しく、美しい。

 真っ白な体毛。真っ赤な瞳。

 そんな狼に見惚れたのはほんの数秒。

 すぐに恐怖を覚える。

「…………でかっ」

 体長は四メートルを超えそうだ。俺の身長では狼の足の付け根にも届かない。

 そんな狼が目の前で水を飲み始めたら、誰もが驚くはずだ。そして恐怖する。

 見つかってはダメだ。

 そう思って俺は周りの木の陰に身を潜めた。

 静かに狼を見守る。

 しばらく水を飲むと、狼は口を上へ向けて。

 一瞬俺の方に視線を向けた。


「××××、××××××。×××、×××××××」


 狼が遠吠えとは違う、声を出す。

 それが言語だと俺は直感的に理解した。

 意味のある言葉。

 狼は俺と意思疎通を図ろうとしている、と。

「××××。××××、×××××××××××××××」

 狼がまた口を開く。

 すると、狼はその大きな足をこちらへ向けて、一歩ずつ俺に歩みよってくる。

 ずしんと大地が揺れた。

 俺の目の前まで来ると、鼻を俺の顔先まで近づける。

 近くで見ると、さらにその大きさに驚く。でかい。

「×××××」

 狼が俺の腕に牙を向けた。

 そして、狼は俺の腕をかじりとった。

「…………あ?」

 この人生、経験したことないような痛みが俺を襲う。

「あああああああああ!」

 何故?

 分からない。

 ただ、分かるのは死が迫っていること。

 そして、狼は別に怒っているわけではないこと。

 人間が虫を殺すように、この狼は人間を殺すことができる。

 そう、ただそれだけ。意味はない。意味なく、何となく。この狼は俺を殺そうと思ったのだ。

 そうでなければ、俺は納得が出来なかった。

 俺の腕を地面に吐き出し、次に俺の足に目を向ける。

「…………やめてくれ」

 そう言ったところで、狼に伝わるわけがない。

 狼は俺の足をかじりとった。

 また襲う激痛。溢れる血が、地面を赤く染め、真っ白な狼の体毛もまた赤く染める。

 そして、うっすらと目蓋が下がっていく。

 意識がぼやけてくる。

 狼が俺の最後の腕に牙を向けた時。


「×××!」


 叫び声が聞こえた。

 狼の後ろに一人の女性の姿が見えた。

 その女性が狼を止めてくれたことは理解できた。

 真っ黒な長い黒髪を揺らす、女性。黒いドレスを着た、例えるならば天使。その天使は俺の方に近づいて何か呟いた。

「×××××」

 その時。

 俺の意識が途切れた。

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