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6-8



「お願いします。どうかこの子だけでも。もう3日何も食べてないんです!」

「我々も好きでやってるのではない。備蓄はとっくに無くなり、我々も十分に食料が無く困っているのだ」



帝国の首都。

つい先日まで繰り広げられていたオーランドと帝国との戦争は終結し、帝都は再び賑やかになる。


はずだった。


戦争。

それ自体は簡単に終結した。

オーランドの勝利という形で。


しかし、今度は新たな脅威が人類に降りかかった。


魔王の誕生。


魔王は全ての人々に対して平等だった。

オーランド、帝都、その他の人間。

大人、子供、男、女。


全てを差別することなくその命を刈り取っていた。


人々の安寧は崩れ去った。

滅ぼされた町の数は片手では収まりきらない。


かろうじて生き残った人々は希望を求め、より大きな町へ逃げていく。


その結果。

帝都には人が溢れ、街への入場すら許されず、塀の外で雨風に晒されながら命が尽きるの待つ他なかった。



「ですが、あの魔王を倒す為、帝国はオーランドや聖教国とも同盟を結んだのでしょう?!どうかお願いです。私は必要ありませんから、どうかこの子だけでも!!」

「そうは言ってもだなぁ……」



衛兵は困り果てていた。

彼自身、2人の子供の親である。


目の前の母親の必死さは痛い程分かる。

だが、ここで例外を許してしまえば、後ろの難民が黙っていない。


我も我もと押しかけるだろう。

そうなれば難民は暴徒と化す。


だからこそ、なんとか穏便にと必死でなだめるが効果は無い。

子供の母親は何度も、何度でも衛兵に縋りつく。



「ダメだと言っているだろう!!」



あまりにしつこい母親。

そのしつこさに、衛兵はつい突き飛ばしてしまった。

ただ、その行為を衛兵はすぐ後悔する。


その母親は勿論、後ろにいる難民達も衛兵に対し殺意を持った視線を向けていたから。



「次同じことで手を煩わせるなら、お前もその子のこの槍で貫くしかなくなるぞ!!」



焦った衛兵は槍を親子に向け、宣言するように叫んでいた。

少しでも怯えさせ難民たちを大人しくさせるために。



「このままでは、どうせ死ぬんだ」

「ああ、最後に腹いっぱい食べて死にてぇよ」



だが、それは逆効果だった。

追い詰められた難民達は集団でジリジリと衛兵に近寄ってくる。



(不味い)



衛兵は慌てて仲間を呼ぶ。

ただ、それは難民達を刺激する結果にしかならなかった。


兵士対難民。


その構図は明確になり、両者はお互いに睨み合いなにかきっかけさえあれば戦いは容易に開始される。

そんな状況だった。



「みなさんお待たせしました!」



緊張する雰囲気の中、パンパンと手を叩く音が響いた。



「皆さんに食料をお持ちしました。今から準備をしたいのですが手伝って頂けませんか?」

「アンタは?」

「名乗りもせず申し訳ありません。私はオーランドの皇女。クリティアと申します。皆さまに食料を届けに参りました」



クリティアの言葉に難民達は”おぉ!”と歓声を上げ、戦いを避けられた兵士達は安堵する。



「皇女様。失礼を承知でお願いします。どうか、どうかこの子を助けて」



先ほどまで衛兵に縋りついていた女性は、クリティアの前に駆けより頭を地面に擦り付け懇願していた。


「大丈夫ですよ。助けられるように全力を尽くします」



クリティアは女性の前にしゃがみ込み顔を上げる様に促す。



「あ、ありがとうございます!!」

「こちらへ」



ニコリと笑顔を浮かべ、クリティアは母親と子供を先導する。



(こんな事全員には出来ません。本当に形だけの偽善です)



自らの行為はただの人目を引こうとするだけ。

それを理解しているクリティアは心の中で深いため息を吐く。



「あ、あの本当にありがとうございます!!」



ただ、子供の母親何度も何度もクリティアに対して頭を下げてた。



「いいのです。今は何も考えず、お子さんを助ける事だけに集中しましょう」

「は、はい!」



母親は感極まり、涙を流す。

それにクリティアは優しい笑顔で応えてた。



(まるで道化です。フィスはいつもこんな事をしていたのですね……)



自らの行為が、なんの解決にもならないとクリティアは痛感していた。


むしろ一時的な希望を与えるだけ、より深い苦しみを与える事になる。

根本を解決しない限り、彼らの境遇は改善しないし、目の前の様な親子を新たに増える。


愚策中の愚策。

ただ、かつての自分であれば喜んでこのような行いをしただろうという確信もあった。


如何に自身が愚かだったのか。

クリティアは心の中で静かに悔いていた。






「あ!クリティア様だ」

「クリティア様!!」



クリティアの姿を見た子供たちが、一目散に駆け寄ってくる。

子供たちは手や足は勿論、身なりも汚れ、髪は汚れで茶色く染まり、臭いもキツい。


そんな子供達相手にクリティアは嫌な顔一つせず、笑顔で対応する。



「これプレゼント!」



子供の一人。

その汚れた手には小さな花が握られていた。


どこにでもある野草の花。


草も食料として食べつくされたこの場所では、たかが野草といえど子供たちにとっては宝であった。



「あら、綺麗なお花ね。ありがとう」



膝を折り、子供と同じ目線でクリティアは礼を言い、子供達の頭を撫でていく。

子供たちはお互いの顔を見合った後、嬉しそうに笑っていた。



「聖女だ」

「ああ、間違いない。神様が遣わした聖女に違いない」



その様子を見ていた難民が呆けた様に呟く。

それは男女問わず難民達全員の総意になりつつあった。



(本来なら自給自足を促すべきでしょう。例えどんな犠牲を払っても)



聖女。

クリティアは自身がそう呼ばれることを知っていた。


むしろ、それはクリティアの計画した事。

ここにいる難民は今後、いや、望む未来を創る上での必要な役割があるのだから。



クリティアが子供達とじゃれあっていると、急に太陽の光が陰り辺り一帯が俄かに暗くなる。


何事かと、難民達は一様に顔を上げる。



「り、龍だ!!!」



難民の一人が叫び、辺りから悲鳴が湧き上がる。

辺りの人間は何処に逃げていいかもわからず狼狽え、物陰に隠れる。


難民達に取れる咄嗟の行動は、それが限界だった。



「……来ましたね」



クリティアはスッと目を細め、深呼吸をする。

そして覚悟を決め、目を開くと龍の方へゆっくりと歩く。


その姿を見た難民達は危険だと自からの危険も顧みず叫ぶが、クリティアは優しく微笑み”大丈夫”と答えていた。



ズシン。


大きな音を立てて、龍が地面に降りる。

クリティアは龍の脇に立ち、地面に立つ龍にそっと触れる。


龍はそれを一瞥するが、特に何の反応も示さない。

その光景に人々は唖然とし、ただ見つめる事しかできなかった。



「皆さんこれから、ここに魔王が来ます!!ですが、安心してください。龍神様が魔王を打ち倒す為、ここに来てくれました!!」



クリティアは宣言する。

その自信溢れる姿は、人々にこれ以上ない説得力を植え付けながら。



「ですが、相手は邪神メリスが降臨した魔王。龍神様だけでは勝てるか分かりません。ですから、どうか皆さんの力を貸してください。祈りを捧げ皆で魔王を打ち倒すのです!!」



沈黙が訪れる。

あまりにも急な出来事。


それを人々が理解するには、少しの時間が必要だった。



「……本当に倒せるのか?」



ポツリと湧き出た疑問。



「できます。私の命を賭けて約束します」



クリティアは即答する。

その過剰なまでの自信が、人々には必要だった。



「分かりました。私に出来る事なら何でもします!!」



そう声を上げたのは、クリティアに子供を助けられた母親だった。



「クリティア様が助けて頂かなければ、親子共々朽ち果てていた身。少しでもお力になれるのであれば本望です!!」



そういって一人の母親は膝を付き、龍に祈りを捧げる。

心からの言葉。

それは気持ちは周りに簡単に伝播する。



「魔王を……魔王に一矢報いる事がいくらでも祈る。祈らせてくれ!」

「そうだ!妻と、子供の無念を晴らせるのなら俺だってなんだってやってやる!!」



魔王への恨み。

それはクリティアの想像よりも遥かに深い物だった。


恨みから人々は団結し、大きな祈りの輪を作っていく。



(だれかが導かなければメリスには勝てない。その役割を私が担えと言うのですね……)



その様子をクリティアはただ見つめる。

祈りなど龍にとってなんの意味もない事を知りながら。


人の強い気持ち。

その感情を力として扱えるのは、魔王だけ……なのだから。



「グャアアアアンン!!!」



そんな中、突然龍が叫んだ。

翼を広げ、小さく唸りながら一点を見つめる。


それに引っ張られるように、難民達も祈りを止め、龍と同じ方向に顔を動かす。


少し離れた丘の上。

そこには青く輝く魔法の剣を携えた一人の男が立っていた。



「おい……!あれ!!」

「まちがいない!あの剣、ま、魔王だ!!」



さっきまでの威勢はすぐに消え失せ、難民達は龍が現れた時と同じように逃げ惑う。



「みなさん道を開けて私の後ろへ!!龍神様が戦います!!」



クリティアは叫ぶが、難民達はその指示には従わない。

ただ、魔王から離れる様に逃げるだけだった。



(十分です。これなら)



クリティアは合図を送る。

すると魔王は龍を威嚇するように剣を高く掲げた。


同時に肌を焼くような熱がクリティアを襲い、蒼炎が魔王へ延びる。


龍のブレス

一度浴びれば燃える事すら許ず、ただ白い灰へと変える圧倒的な熱量を持った蒼い炎。



「す、すげぇ!」

「これが、龍神の力」



立っているだけでも火傷しそうな熱風。

それが人々を期待させる。


この炎なら、例え相手が魔王でも生きていられるわけがない。と、

その確信は期待に変わり、人々は歓喜に満ちた視線を魔王へと向けていた。



「嘘だろ?まだ生きてる」

「あれを……あの炎を浴びて生きている?」



ただ、その期待はすぐに絶望へと変わっていた。

地面すら白い灰へと変える蒼炎。


その炎は、魔王の持つ盾によって簡単に防がれていた。



「聞け!愚かな人間よ!!!この体が朽ちようと、メリスは不滅!人が生きる限り何度でも蘇りお前たちを殺してやる!!



燻る炎蹴散らし、魔王は叫ぶ。



(果てして邪神メリスは自分の事を”メリス”と呼ぶのでしょうか?)



クリティアはふとそんな疑問に駆られるが、自らの役割を全うすべく指示を出す。



「騎士隊前へ!!魔王に隙を与えてはなりません!!」



クリティアの声に反応するように、二つの影が風よりも早く魔王へと向かっていく。

二つの影は抜身の剣持っていた。


二人の騎士が持つ剣は、薄い残像を描いていた。

それは、魔力を帯びた特別な剣だという事を示していた。



「見ないうちに随分と腕を上げたな、少年!」

「君のしていることに納得はしていない、だが覚悟はこの胸に刻んでおく!」



太陽を反射させる白い鎧を着た二人の騎士。

その影は周りにしか聞こえない小さな声を上げていた。


二人の騎士は魔王を挟み込み嵐の様な連撃を繰り出す。

お互いを知り尽くした親子の様に息の合った連携。


剣を握った事のない人間でも、彼らの凄さは理解できる。


だが、魔王。

魔王はその二人の暴風の様な連撃を盾で弾き、剣で受け流す。


二人の騎士は魔王を一方的に押しているはずなのに。

本人たちも、周りも、彼らが勝つ姿を想像すら出来なかった。



「昔とはまるで逆の立場だな!」



少し年老いた一人の騎士が悔しそうにつぶやく。



「何弱音を吐いているんですが、隊長!」

「うるさい!お前はもう部下じゃない!」



小さく言い争う二人だが、その手を止める事は無い。

そして、剣では勝てないと判断したのか、同じタイミングで素早く魔王から距離を取る。



「「援護!」」



二人は同時に叫ぶ。

その瞬間、”ボフッ”と土煙が舞い上がり、魔王を包む。



「今です!全方位からの攻撃を!!」



クリティアの号令が響く。

すると、どこに隠れていたのか、百人単位の弓兵が現れ、土煙に向かって素早く矢を放つ。



「魔法隊、倒れても構いません。力の限り攻撃を!」



クリティアの号令は続く。

弓兵と共に隠れていた魔法使い達も、一斉に土煙に向かって魔法を放った。


何千にも上る矢、爆発する炎の魔法、鋭利な風の魔法。

その他にも考えられる魔法全てが、その土煙に向かって放たれる。


どれくらいの時間が経っただろうか、魔法使いが一人、また一人と、膝を付き

弓兵が用意した矢筒が空になる。


嵐の様な攻撃が止み、雨上がりの空の様にゆっくりと土煙が晴れていく。


これ以上ない全力の攻撃。

誰もが魔王が無事でない事確信していた。


薄くなった土煙。

その中心に青い輝きが見えた。



「皆さん離れて!魔王はまだ生きています!!!」



その瞬間、青い輝きが動いた。

土煙から魔王が飛び出していた。


それに合わせる様に、二人の騎士が魔王の行く手を塞ぐ。



「さようなら、フィス君」

「感謝してる。真の英雄よ」



しかし、勝負はすぐに決した。

騎士の一人は魔王に蹴られ、もう一人は盾で殴られ、簡単に吹き飛ばされた。


魔王はさらに加速する。

剣を構えクリティアに一直線近づいていく。



「クリティア様!!」

「逃げて!!」



難民達から声が上がる。


魔王とクリティア。

二人の間には何の障害も無かった。


クリティアは魔王に殺される。

そこにいた誰もが簡単に予測できるほんの少し先の未来。


それを回避する為に出来る事。

膝を付き、目をつぶり、現実から逃げる様に”祈る”だけだった。



「覚悟しろ人間達よ!!貴様らの罪決して許されるものではない!!!」



魔王が叫び、クリティアの首に剣を伸ばす。

その瞬間、世界が光った。


空気を割き、音を置き去りにする。

瞬きすら許さない一撃が魔王を襲った。


それは神の怒りにも似た落雷だった。



「シャールを頼むよ。リティ……」



焼け焦げた黒い肌を晒し、誰にも聞こえない小さな声で魔王は呟く。

そして、ゆっくりと地面へ崩れていった。。


地面に倒れた魔王の体。

それはとても痛々しく、どこを見ても傷だらけだった。


如何に目の前の魔王が、辛く厳しい時を生きてきたのか。

簡単に想像できる程に。



「はい……託されました。だから、もう休んで……ください」



地面に倒れた魔王の表情はなによりも穏やかだった。

それを見たクリティアは、強く目を瞑る。


涙を堪える為に。


そして、最後の使命果たすべく決意を込めて目を開けた。


魔王の首を刈り取り、広場に晒す。

それがクリティアに与えられた役割だった。



「龍神……様?」



突然、龍が動き出し魔王の体に頭を近づける。

打ち合わせには無い、想定外の行動だった。


龍は数回スンスンと鼻を鳴らすと、魔王の体をパクリと咥え器用に口に放り込んだ。

バリバリと数回金属をかみ砕く咀嚼音を立て、静かになる。


それが魔王の最後だった。



「皆さん!魔王はここで倒れました!我々は魔王の脅威に打ち勝ったのです!!」



ダメだと分かっていた。

でも、堪え切れずクリティアの目から涙が次々に零れていく。


それでもクリティアは無理やり、声を絞り出し、凛とした姿勢を示す。



「しかし、元凶であるメリスは再び復活します。だから、私はここに宣言します。もうこんな悲劇が起こらないようにメリスを封印すると。しかし、私ひとりにはそんな力がありません。どうかお願いです。メリスを封印する為、皆さんの力を貸してください。この通りです!!」



クリティアは頭を下げ難民や共に戦った達に懇願する。

なんの力も持たないクリティアの願いに、人々は割れるような歓声で答えていた。


魔王を打ち倒した。

その事実は大陸中を駆け回り、クリティアの願いを聞いた難民や兵士達はクリティアの信奉者となり、各地でクリティアの願いを広げていく。


メリスを倒すための旗印。

それが親友を守れず、自身の大事な人を利用したクリティアに課せられた罰であった。





まだ登り始めたばかりの太陽。

それに照らされ、オレンジ色に輝くアィールの町


荷物を背負い旅支度を済ませた一人の青年が丘の上から見下ろしていた。



「10年は戻ってこれん。しっかりと見ておくのえじゃろ」



その後ろから少ししゃがれた老人の声が響く。



「はい。ルーチェもアィールさんもまだ見ていたいって言ってるので、もう少しだけ」



胸に手を当て、青年は町を見つめたまま答える。

町の姿を少しでも記憶の中に留めるように。


その顔は何処か吹っ切れた様に爽やかだった。



「メリスとは戦わんのか?」

「知ってますよね?セプトさんとの約束」

「知っておるよ。クリティア姫にお主が生きている事も含めも伝えてきたからの。まぁ、その時の怒り具合といったら半端ではなかったがの」

「すいません。色々と」



青年は申し訳なさそうに頭を掻き、そのままアィールの町を見つめていた。

そして、十分な時間を置き、町から視線を逸らし老人と向き合う。



「……シャールはいいのかの?」

「ええ、一緒に行動すれば辛い思いしか経験させてあげられません。シャールには、幸せに生きて欲しいから。逃亡生活には付き合わせられません」

「魔王は恨みを買っておる。いや、そんな言葉じゃ足りん位恨まれておるでな。生きていると分れば常に命を狙われるじゃろう。まったく難儀な道を選んだものじゃて」

「ええ?それ自分の事言ってます?」

「たわけ!」



老人は憤慨し、青年は笑う。



「でもいいんです?セネクスさんもやるべきことがあったんでしょ?」

「もう果たされたよ。ワシはお前と違って復讐なんかにこだわらん。それに復讐する主要な相手ももどこかの誰かさんが殆ど殺してしまったからの。もうそれで十分じゃ」

「……その通りですね。復讐なんて幸せを遠ざけるだけ。もっと早くそれに気が付ければよかったんですがね」

「ああ、しかしワシよりも早く気が付いた。それだけは誉めてやろう」



老人は髭に手をやり青年の姿を改めてみる。

その姿は、初めて会った時とはまるで違っていた。


体も大人へと変わり。

顔つきも歴戦の戦士という言葉が似あう精悍な顔へと変貌を遂げていた。



「行きますか。似た者同士」

「そうじゃの、何も守れなかった者同士、慰め合う旅もよかろうて」

「言い方……そういうの直して下さいね」



困った様な表情浮かべ、青年は歩き出す。



(まさか、こんな旅が始まるなんて)



最愛の人を二人も失い。

大事なはずの子供の成長も見守れず。


自ら望み決意した死さえも許されず。

生きている事がバレない様に遠くの地への逃亡を強いられる。


そして、一緒に逃避行をするのは血のつながりもない老人。



(異世界転移が想像していたのとまるでちがうんですけど……)



そんな事を想いながら、青年は一歩、また一歩と歩き出す。

背中に朝日を浴び、目前に広がる暗い森へ。


それが青年が決意した険しく、報われない、新しい道だった。



拙い部分も多い中、最後まで読んで頂き有難うございました。

最後駆け足で完結まで持っていきましたが、本来3部作構成の今回が1部目となります。


次作からはフィスの子供”シャール”の物語となるはずでしたが

描き続ける上で需要の無い作品は描き続ける事は非常に困難な為、ここで完結とさせて頂きました。


もし、今後何かしらの奇跡でもあって需要が出た場合は続きを書かせて頂こうと思いますので、面白いと思った方や続きが気になる方がいらっしゃったら、ポイントを頂けるととても嬉しいです。


最後に、今までコメントや応援を下さった方々に心から感謝してます。

時間がかかりましたが、一区切りまで書きあげる事が出来たのは皆さんのおかげです。

本当にありがとうございました。


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