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星の終わり

作者: ニュー速Vip

やあ、こんにちは。今日は君たちに話を聞いてもらいたいと思ってね。

何の話かって?暗闇の中で人生を歩き続け、光が見えたと思ったら崖から落ちた、そんな不運な男の話さ。


男が生まれたのは極々一般的、何の変哲もない家庭だった。その夫婦の初の子供だったから男は両親の愛情を独り占めして健やかに育ったんだ。無論やがて男は小学校に入る訳だったけど、そこでは男は健やかに育つ---って訳には行かなかった。

何があったのかって?学校で酷い苛めをうけたのさ。どんな物かは特に語らないし、語りたくもない。だって僕が話したいのはもっと他のことだからね。とにかくその男は学校に居場所というものが出来なかったんだ。

だからかな、他の場所に居場所を求めたんだ。


---外が騒がしいな、まあ当然か。こんな時間に騒ぐことないだろうに。今は草木も眠る丑三つ時ってやつだぜ。ああいう人種は羨ましいね。いつでも周りに人がいて、やること為すことが殆ど肯定されて、挙げ句の果てに人の想い人を拐っていくのさ。

さて、話を戻そう。


どこまで話したっけかな...?そうそう、他の場所に居場所を求めたって所までか。苛められっ子が行き着く場所なんて大体判るだろう。某ネットの巨大掲示板さ。名前は伏せておくが、諸君相手ならそんな意味は無いだろうね。とにかくあの頃は楽しかった。なにせ学校では口一つ聞いてもらえなかったのに、そこだと大体のことで反応が帰って来たからね。

まあそんなわけで小さなパソコンの中の世界が現実だと思い込むのはそう時間はかからなかった。その掲示板以外にもネトゲやったりもしてたさ。もちろん本来の現実はガン無視、立派な引きこもりの誕生さ。もちろん親はそんな気分でパソコンを買ってくれた訳じゃないだろうけどね。


---すまない、少し休憩を挟もう。それにしてもよくここまで人が集まったもんだね。いや、外の話さ。外が昼みたいに明るくなってるし、皆精神が異常なことになってるね。いまこの世界で落ち着いているのは僕だけじゃないかなって思っちゃうな。ハハッ,リア充ざまぁ。

じゃあ、話を戻すよ。


そんな男だったけど、父さん母さんは何も言わなかった。なにか男に負い目があったのか、直ぐに戻ると思っていたのか、それは判らないけど何も言わなかった。いや、本当に何も言わなかったんだ。なにせ当時は母さんが部屋の前に3食食事を持ってきて、男はそれを食べるだけ。ああ、雑誌とかも買って貰ってきてたっけ。そんな生活を5年も続けるうち一つの転機が訪れたんだ。

自堕落な生活を支えてくれていた一人、父の方がポックリ死んじゃったんだ。理由?よく覚えてないよ。その時はとにかく何も感じることは無かったし暫くはいつも通りの生活をしてたんだ。でもある時母親から泣いて頼まれたんだよ、働いてくれって。


---まったく話しててダメさ加減に苛つくよ。とはいて世の中下には下がいるもんだっていうしね。まだマシじゃないかな?

ほら、外を見ろよ。あの暴徒ども、そこらを壊して周ってるぜ。あれと比べりゃまだねぇ。

そういや警察は何をしてるんだろうね。彼らが職務を放棄したら、それこそ世界の終わりの様じゃないか。

さて、もう話すこともそれほど有るわけじゃないんだが---


それから男は憑き物が落ちたようになった。

その働きっぷりったらブラック企業も真っ青さ。いや、まだ働いてはいなかったんだけどね。成果も出てなかったし。そのうち母親も死んだ。それでも頑張ったさ。葬式なんてしてる暇は無かったね。そうしたらそんな状況を聞き付けて親戚が仕事を斡旋してくれた。まさに蜘蛛の糸ってやつさ。頑張れば人は報われるんだって、己の人生に光明が差した気がしたね。


---さて、ここで終わればハッピーエンドだったんだがねぇ。

一回じっくり外を見てごらん。あー、違う、下のバカ共じゃなくて上の方さ。お月さまの横で激しい自己主張をしてる奴がいるだろう?あれさえなけりゃ今頃人生ハッピーエンドだったんだがねぇ。あれが観測されたのは今から一週間前だったかな?今やインターネットでも現実でも、あらゆる物が機能してるからよく判らないがとにかく一週間前だ。当時は大パニックだったさ。なにせ地球の何十倍とかいう出鱈目な大きさの隕石だ。まぁそんなことはどうでもいいよね。あとちょっとだけ、男の話をしよう。


男が仕事を見つけたのはちょうど二週間前さ。笑っちゃうだろ?男のハッピーエンドは一週間で終わりさ。特に後は語ることも無い。こんなふうに再び家に籠って、リア充どもの騒ぎをほくそ笑みながらみてるだけさ。なんで笑えるかって?男より彼等の方が台無しにされたハッピーエンドの時間が長いからさ。


---さて、これで話は終わりさ。僕の自分語りに付き合わせて悪かったね。ん、最後に男が誰か言ってしまったか。まあいい、どうせ君も判ってただろう?

じゃあ隕石が落ちるまで残り一週間、お互い壮健で過ごそうか。

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