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北天VS南天

導入部終了ですぅ

 いわゆる職業カテゴリーの中でも現実に存在するものと仮想にしかないもの、過去にあったもの、未来にあるであろうもの、すべてを網羅しているのが「シャイン・キャッスル・オンライン」であるがその存在の根拠となるべき証拠が薄い職業というのが存在する。


 その名も幻想種といわれる職業だ。


 確かに過去にそういう役職は存在する。しかし、それが本当にそのいわれのとおりの職業だったのかどうか正確なところはわからない。

  記録や歴史書には史実として残っており、ファンタジーの世界のような妄想ではなく現実に存在しているのにその実態がつかめない職業、そのカテゴリーを含めて幻想種というわれるものだ。

 この幻想種カテゴリーは発生条件が非常に分かりにくい。

 そもそもエリアに存在するかしないかもわからないし、なにがフラグなのかも分からない。

 ある職業から派生して生まれるものもあれば、まったく無関係なこともある。

 逆にそもそもこれは職業なのか?と問われかねないものも存在する。

 それがいま目の前で始まろうとしている〔北天VS南天〕のようなものだろう。


[北天VS南天クエスト]

 北に北斗七星、南に南十字星が一同に揃うとき星の輝きを集めし異形なるモノ互いに争わん

 その戦いを見届けし後、新たな目覚めを与えられん


 「アイ、これは仙人の職業クエストでいいよな?」

 『はいですぅ、ただいま準備中ですぅ』


 北の空から流れ星のようなものがこちらへ向かってくる。

 南の空からも流れ星がやってくる・・・衝突したら衝撃波でお陀仏だなぁと思いながら見ていると。

 山の頂上付近で光は人の形を取り始め、その一帯だけぼうっと明かりが差し始めた。

 『ヒョッヒョッ、南天よ久しぶりじゃの』


 『ウム、北天よ実にひさしぶりなのである』


 どうやら白い服を着た爺さんが北天で、黒い服を着た爺さんが南天のようだ。

 『ヒョッヒョッどれどれ、ひと勝負はじめるとしようかの』


 『ウム、楽しみなのである』

 モニター時代では確か、囲碁の勝負が始まり、熱中している最中に肉や魚、あとは・・酒かそんなものをだせば満足してくれるっていう話だったな。

 で喜んだ二人は寿命を延ばしてくれるっていうやつだったはず・・・


 白い爺さんは服を脱ぎだし、その細身の身体をさらけ出す。

 黒い爺さんも服を脱ぎだし、その筋肉質の身体を見せ付ける。


 えっと・・・なにがはじまるんです?

 「アイ、俺は、俺はどうしたらいいんだ、俺も脱ぐのか?脱げばいいのか?」


 『何をしてもかまわないのですぅ、脱ぎたければ脱げばいいのですぅ』


 「いや、違う、なんか違う!何の解決にもならん!考えろ!」

 

 ・・・どうしたものか、いきなり脱ぎだすなんて予想外だぞ、半裸の爺さん二人の間に俺がいる。俺の役割は何だ?

 俺はどうするべきだ、俺はどうしたいのだ!

 

 ・・・・そうだ!コレしかないっ

 俺は覚悟を決め、息を吸い込みあらん限りの大声で叫んだ。


 「今宵、二人の男が雌雄を決するために出揃ったァアアア!」

 「北の空に轟く雷鳴ィィ電光石火の早業で空を切り裂く北天とぉぉお」

 「南の大地に爪痕残すゥゥ業火の炎、大地を切り裂く南天のぉぉ、一騎打ち!」

 「天の神々よぉご照覧あれぇ!」

 「いざ尋常にぃ勝負開始ィィィ」


 そういって俺は大振りのナイフを自らの手の平に刺し血を振りまく、すると、二人の目の色が変わり二人の間に緊張感が走り始める。

 『ヒョッヒョッヒョ、今回はなかなか滾るのぉ南天?』


 『いや、まったくである。これは気合を入れてやらねばならんである』


 俺はうまくいったことを確認し、二人から距離をとり、今から始まるであろう名勝負を観戦することにした。

 白い老人北天は特に構えらしいものをとらず、腕をだらりと下げたまま、だがその眼光は鋭く南天を射抜いている。

 「アイ、お前はあの北天の強さがわかるか?」

 アイは小首をかしげながら悩む様子で答えた。

 『うーん、なぜ構えをしないんでしょう』


 「構えは相手に自分の流儀を教えるようなものだからな、その分相手に察知されてしまうからしてないんだ、逆に言えばそれだけ対応力があるともいえるだろう」

 

 黒い老人南天は両手を掲げ一撃必殺の構えをする。


『でも南天さんは構えをしているですぅ』


 「あれは卜伝流一の太刀といわれる構えだ、刀こそ持ってはいないが先手必勝、二の太刀を考えずに勝負を決める気だぜ」

 

 『ぜりゃぁぁああ!』

 先手は南天、巨体から想像ができないダッシュ力で一気に距離をつめ両の手を振り下ろす。まさに鉞の一撃ともいうべきものだろう。

 

 が、北天に触れたと思った瞬間、南天の巨体が浮き上がり宙を飛ぶ。


 「あ、あれは!念力道、相手の力を利用して自分の念を込めて吹き飛ばす伝説の技!」

 

 飛ばされた南天も負けじと右足を高く掲げて大地を踏みしめる。大地は震動し、北天の足場をぐらつかせる。

 

 「ま、まさかこの目で四股の真の威力を見ることができるとは!」

 「アレは北斗飛天翔、海外ではレヴィテーションとも呼ばれる浮遊技だ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 夜が明け始め、ようやく朝日が見えてくるころになって勝負が終わったようだ。


 『ヒョッヒョッなんじゃ今回も引き分けかのぅ』


 『ウム、今回もまた良い勝負であったのである、では帰るとしようか』


 『ヒョッヒョッところでそこで骨だけになっとる死体は何じゃ?』


 『ウム?さぁよく分からんが色々技を試したからその残骸ではないか?』


 『ヒョッヒョッさすが南天、手加減を忘れぬとはいい心がけよのう』


 『ウム、さすがワシである』


 『それでは帰るとするか、ではまたの』

 

 こうして俺のシャインキャッスルオンラインのプレイは終了した。

 このクエストをこなすだけの準備も無ければHPも足りなかったようだ。

 なにより心構えができていなかったんだ。



 これでゲームオーバーか・・・




 『〔北天vs南天〕クエストコンプリートを確認いたしました、〔職業仙人〕を取得しました』


 アイの声が俺の頭で鳴り響く。仙人は基本的に不老不死だが、自分の死後死体を尸解しかいして肉体を消滅させ仙人になる方法がある。これを尸解仙という。

 つまり、この一連の流れは予定調和というわけだ、運営側の人間がゲームオーバーになるわけがない。

 

 「アイ、早速試してみたいんだが、どんなスキルがある?」


  仙人は、名声値を上げるやりかたが宗教系になる。この宗教や思想が絡む職業はかなり難易度が高い。

 まず名声値を上げる方法は信仰しかない。


 『幻術、仙術、薬学スキルがありますぅ』

  

 幻術は相手に幻を見せるスキルだ、汎用性が広く、他の職業でも使うことができる共有スキルである。


 仙術は仙人だけが使える固有スキルだ。詳細は秘密だ。


 薬学スキルは薬を作ることができる。他の職業でも使うことができる共有スキルだ。


 さて、仙人となった俺はレベルを上げていかなくてはならない。

 レベルが上がれば使えるスキルも増え、より高度な活動が可能となる。職業レベルを上げていくためには、それぞれの職業にあったクエストをこなしていく必要がある。

 冒険者なら、ギルドでの依頼を、鍛冶屋なら武器や防具を作っていくというものだ。

 仙人が格をあげるためには、人民を助けたり、知恵を授けたり、横暴な支配者を諌めたりと多岐にわたる。

 まずは街に下りて受けられるクエストを探すところからはじめるか。


 「うーん、やっぱり切りもいいし、ここでログアウトするよ」

 『お疲れ様でしたぁ、またのお越しをお待ちしておりますぅ』


 じゃあまた、会う日まで、See You Again

お読みいただきありがとうございますぅ

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