予想と予測
戦略思考回ですぅ
「さて、他のプレイヤーの様子も見てみなければいけないね」
『はい~詳細はこちらになりますぅ』
グラフによればあと2人程名声値をあげているようだ。上がり方が同じなので二人で組んでいるのだろう
現状ランキングをまとめると、プラスランキングに3名、マイナスランキングに1名か、俺も含めて5名のプレイヤーがいることがわかる。
したがって、俺も合わせて5名のプレイヤーがいることは分かっているが、プレイヤー名は伏せられていおり、なんの職業についているかわからない。
「なるほど、ただ、これだけでも予想ができることはある。俺の見立てでは総プレイヤー数は10名、当たりだろう?」
俺はふよふよと飛んでいるアイを見つめた。
見つめられた、ナビゲーションシステムでもある蜂娘はくるくると飛び回りながら動揺している。
『はわわわ、な、なんですとー!ですぅ』
「ふっふっふ、俺には初日に名声値がまったく上がらないプレイスタイルがどのようなものかいうのも予測がつくのだ」
「そもそも冒険者ギルド以外のギルドで名声値があがるのは見習いを卒業してからだ、いかに素の能力が高かろうと初日で名声値をもらえるような職業はない。となると他のプレイヤーは町や村にたどり着いていないか、難易度の高い職業を選択しているということになる」
『その通りですぅ』
「俺のように山登りでもしてハンデを与えるつもりがないかぎりこのような迂遠なプレイはしないはず」
『そんなつもりで山登ってたのですかぁ?』
「つまり、初日でポイントが得られることがない難易度の高い職業を選択しているのだろう。だからスタートダッシュがどうしても遅れてしまう」
『まぁ、そういうこともあるかもしれませんですぅ』
「冒険者ギルドは薬草採取以外にも実入りのいい依頼はあったはずだ、ただどうしても冒険者は薬草採取からという先入観にとらわれてしまっていて危険なダンジョンや討伐依頼を受け切れなかったのだろう」
『そうかもしれませんですぅ』
「つまり、この4人は初心者、そして初日ランキングに載る人間の数から総数を予測することができる」
『な、何ですとぉーですぅ』
「チッチッチコレは単純な数学の問題さ、初心者プレイヤーとβテスターが混ざり合ってひとつの国家に送り込まれる。そして無作為に二人の人間をピックアップした際、それが初心者が二人、βテスターが二人、そして一人づつというその三通りしかない」
『それはそうですぅ』
「一万人規模の小さな町程度の人口しかないんだ、それはつまり世界の狭さを物語っている、こんな小さな国家に100人もプレイヤーがいるはずがない」
30人?20人?いやいや10人が関の山だろう、それを決定つけたものがこのランキングに載ってる人間の数だ。
「あまりにも少なすぎだぜ・・・そしてβテスターが多すぎだろう」
『お見事ですぅ、ただ総プレイヤー数はシステム上教えられることではありません」
「ふっ俺にとっては当たり前のことさ」
さて、この規模の国家で難易度の高い職業となると生産系か士官、あとは内政型の官僚試験でも受けているかもしれない。まぁどれも街区で受けている場合だ。ただこれを受けているとなるとまるっきりの初心者とは思えない。
なにせ”初日にしか試験が行われず、あとで受けなおすことが出来ない”からだ。
ここにもスタートダッシュを防ぐ重要なポイントになっているのがいやらしい、ベータテスターが考えるのはいかに周りを出し抜いて効率のいいプレイをするかということを未然に防いでいるからだ。
こだわりやロマンを求めずに堅実にゲームクリアを目指した場合、国の体制側にのっとった職業につくのが当然早い。
国家に貢献するポイントは公務員の給料のように変動がなく、階級によって一定だが安定している。
いわゆる官僚プレイというものだ。
冒険者は自由人な面もあるのでどうしても遠回りになりやすいのだ、ただ民衆の支持は集めやすい部分もある。大物を当てれば一発逆転の大博打といえるだろう。
どっちも一長一短だな。
街区で受けるジョブクエストは特殊なものもあるが、掲示板をみればベータテスターが流してくれた情報もあるはずなので、初心者でも可能だ。
試験を受ける際にプレイヤーが鉢合わせする可能性もあるので彼らはたぶんお互いがプレイヤーであることを気づくだろう。
同じ系統の職業につくことはないはずなので、自然と振り分けがあるはずだ。なにせ内政型、軍事型に分かれているとはいえ、その中でも職種は千差万別。同じ部署に配属されることはまずないといっていい。
ただ、それでもメジャーなクエストではないので多くて2人、といったところではないかと思う。
あとは鍛冶屋や木工、裁縫、錬金術などの生産系にも行くプレイヤーもいるかもしれない。
これらは名声値が後半に急激に上がるタイプなのでまったく油断が出来ない。なにせ素材と技術さえあれば何でも作れるのだ。
どうやら冒険者ギルドの真面目君たちは堅実な性格をしているのでどんどん素材を売るだろうから、生産ギルドの面々は技術さえ上がってしまえば何を作り出すか分からない。
鍛冶屋の強力な武器で冒険者が強化され、さらに素材を集めてくるという好循環になれば他プレイヤーは太刀打ちできないことになる。
ま、生産系に3名はいそうだな。
ふむ、となるとまったく職業にたどりつけてないというのは俺だけか。まったくゲームの中でも無職になるのはむなしいもんだぜ。
どうやらアウトローな選択をしたのは俺だけのようだ、さて最後まで生き残れるやつはどれだけいるかな。
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俺は焚き火に薪を加え夜に備える。
収納袋から寝袋とマットを取り出し地面に置く。
非常食をポリポリ齧りながら空を見上げる。月と星しかなく、あたりは静寂に包まれている。
アイも夜は眠るようだ、羽を休めて静かにしている。
あの星の並びかた・・・リアルにもある星座だが、ありえんだろあの組み合わせ・・・夏の星座と冬の星座がなぜ一緒にある?
それに・・・えらく静かじゃないか、これはなにか来るな。
『ロイ様・・・職業クエストのフラグを確認しました、開始しますか?』
寝ていたとおもっていたアイの声が聞こえてくる。
「ああ、よろしく頼むよ」
仙境の地っていうのは俺がいた場所だったようだ、発生しなかったのは発生条件が夜だったからということか・・・こりゃヒント無しでは見つからんよ。
『意思を確認しました、これより〔北天VS南天〕クエストを開始します』
お読みいただきありがとうございますぅ