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ランキング

世界観構築中ですぅ

 さて、仙境の地を探すことにした俺だが、周りを見渡すと薄暗くなってきており、地理の確認は難しくよくわからない。


 なので今日の職業取得はあきらめ、明日にやることとし、夜営の準備を行う。


 突出した岩のひさしの下では風はしのげてもは寒さはで死にはしないが腹は減るし、硬い石の上で横になるのもつらいものがある。


 「こういうときに建築系の技能職があればなぁ、小屋でも作ってベッドで横になれるんだろうけど」


『木工スキルをあげてきこりの職を発現させることは可能ですぅ、その派生で大工を発現させれば家も建てられますぅ』


 「だが、家を建てるにはそれ相応のでかさの木を切らなきゃならないだろ?切り出すための斧は誰が作るの?」


 『鍛冶屋のスキルを発現させれば可能ですぅ』


 「じゃあその斧につかう鉄は誰が掘り出すの?」


 『採掘師の仕事であるすぅ』


 「では、その鉱夫のつかうツルハシは誰が作るの?」


 『鍛冶屋の仕事ですぅ』


 じゃあツルハシに使う鉄はだれが掘るのか?それは鉱夫の仕事である。

 とまぁ、すでに詰んでる訳だ。

 アイはナビゲーションだから具象に対する質問の答えは完璧だが、何の解決策も提示していないのが残念なところだ。

 

 確かにプレイヤーはこの世界においてどのような職業に就くことでも可能であるし、あっという間に一流になれるであろう。


 しかし、ひとりですべてを補えるほど万能ではないし、俺たちは別にアウトドアライフを楽しむためにゲームをしているわけではない。


 すべては王になるための道なのだ。小屋は大工に作らせ、材木は樵に切らせ、道具は鍛冶屋に用意させ、鉄は鉱夫に掘って来させる。


 それを円滑にまわすのが経済であり、社会なのだ。


 結局はこれを教えていくためのゲームなんだろうなと俺は思うし、どうやってその輪廻から抜け出すかが俺の命題であるというわけだ。


 ただ、プレイヤーはその存在そのものがチートのようなものなのでそんなに苦労はしない。


 大工になれば積み木を積むように城を建てることが出来るし、樵なって斧を軽々と振り回し一撃で大木をたたき折ることが出来る。


 鍛冶屋が打った剣は聖剣のごとく輝きだし、鉱夫がツルハシを振るえば金脈にぶち当たることだろう。


 修行だの才能だのそういうものはとくに必要のないのがこのゲームなのだ。結局は使いどころというのはそこなのだ。


 誰が何をやったって、常人以上の力と功績は簡単に手に入る。だれもが王になれる可能性を信じることが出来る世界、それが「シャイン・キャッスル」なのだ。


 何度もいうが、基本は他プレイヤーとの競争なのである。


 俺たちは同じスタートラインに立っていながらもゴールに至る別々のルートをたどり王への道を突き進む。


 誰かが王になってしまえばそこで終了なのだ。少しも油断は出来ない、誰よりも強く、誰よりも早く王にならなければ。そういう観念で突き進むことになるのだ。


 実に開発者の嫌らしい思惑が透けて見える。それはなにかって?

 当然どこでプレイヤーからお金を取るかということに決まっているではないか。


 基本料は定額とはいえそこは商売である。課金によって購入できるアイテムやスキルは当然用意してある。


 俺は他のプレイヤーから給料をいただきながらゲームが出来るというありがたーい立場なのだ。皆さんに夢を見ていただくお手伝いをするのが当然のプレイスタイルというものである。


 ならば、少々の困難や苦労を与えたほうが課金プレイへの誘惑が高まるというものだろう。

 まぁ誰に頼まれてやるわけでもないのだが、俺はただの人体実験プレイヤーなのだ。

 さて、おれは岩陰に隠れて風を防ぎ非常食を取り出し、川で汲んでいた水を飲む。


 今日は職業クエストを見つけることが出来なかったのでさすがに明日には見つけておかないと他プレイヤーに追いつけなくなる。


 俺は現状の成績を確認し状況を把握することにした。


 「アイ、現在の名声ランキングを表にして見せてくれ」


 『了解ですぅ、現在のランキングはこのようになっておりますぅ』



 名声値ランキングをグラフ化・・・ふむ、何人かすでにいくつか依頼をこなしているようだ。

 空中に現れたシステム画面を見ながら他プレイヤーの様子を確認する。


 名前の部分は隠されているが、クエストの難易度によって達成時のポイントが加算されている。

 このサーバーに何名のプレイヤーがいつのかは分からないが、上位10名のランキング者まではグラフに載るのだ、名前に関しては一度その人物を確認することで初めて開示される仕組みになっている。

 表は2枚表示されひとつはプラスランキング、もうひとつはマイナスのランキングである。


 まず、プラスのランキングから見ていくことにする。

 「こいつは・・・冒険者ギルドで依頼を受けているな・・・たぶん薬草採取だろう、堅実だな」


 プラスのポイントは失敗すると評価が下がるため、名声値が下がってしまう。実力がつくか、現状を把握するために無理はしないでおこうと思ってるタイプだろうが、今後は調子に乗って急上昇するに違いない。

 

 これは冒険者タイプに分類される。能力値はさほど高くないがとにかく便利なスキルが多いのだ。探索・鑑定・戦闘をそつなくこなし、まさに万能といえる。


 ただ、スタートダッシュは遅めであるので戦略的には短期決戦向きではないのだが、初心者が選ぶ職業として悪くはない。


 問題は戦闘職ではないのでほぼプレイヤーの実力いかんでは強力なモンスターが出た場合ソロでの撃破がほぼ不可能となるところだ。


 プレイヤー同士でパーティを組み、バランスの良い職業の組み合わせでやれるなら問題はないのだが。最低4名はそろえなければならない、となると最初はよくても最後は凄惨な殺し合いだ


 最後まで協力し合えれば美しいのだが、どうなるかな?


 さて、マイナスランキングで注目すべきは・・・ん?なんだこいつは


 「アイ、どうしてこのプレイヤーはこんなにマイナス評価になっているんだ?」

 

 『過去ログを検索しますぅ・・・経緯はイベントごとにまとめておりますぅ』


 えーっとなになに、まず『商人を救え』のイベントが発生してるな。ゴブリンかオークだかに襲われている馬車を助けるというものだな。

 難易度は最大だと!ありえん、初期装備ではろくに戦えないだろう。実際40%にも届かない達成率で失敗しているな。

 瀕死のプレイヤーは救済措置を受けたのか、巡回中の兵士の小隊が助けに入って蹴散らしているな。


 ここまでは、わからなくはない、問題はその後なぜ兵士に襲い掛かっているのだろう?

 結局捕縛されて牢獄行きか、職業にも就かず自分の力量も把握せずに最大の敵にぶつかり、助けてくれた兵士を敵と誤認して暴れまわった結果か。


 牢獄に入れられてすぐに釈放されているな・・・これはまた別のイベントフラグを立てたということか。

 元々微罪だし、義勇心からの行動だからな、お説教の意味もあったのだろうが牢獄がイベントフラグとは俺にはできない行動だな。


 イベント名は『闇への誘い』か、たぶん牢獄でお友達ができたんだろう、なんらかのヒントをもらっているに違いない。

 これは100%の達成率か、闇世界の住人になっているようだな。

 だが、もうひとつイベントを発生させている。

 

 『最強の男』


 これが一番の問題だ、現状プレイヤーを除いて最強のNPCは騎士団長のことだろう、それに挑むことによって得られる名声値はかなり大きい。

 初日でこんなのを達成されてはかなりのアドバンテージを許してしまう。

 結局のところ達成率は20%のようだが、それでもすごいことだ。闇の職業は尖ったものが多い、うまく使いこなすことができればやりようによってはいけるのかもしれない。


 「アイ、最強の男だが、騎士団長のことだろ?失敗した場合は牢獄いきか?」


 『いえ、この街に騎士団長は存在しません。この場合は闘技場のチャンピオンになりますぅ』


 「あ、そうなのか、俺の知識もいいかげんだな・・・ということはこいつは今どうなってる?」


 『敗北した場合、戦闘奴隷としての労働ですぅ』


 「具体的にはどうなるんだ」


 『規定回数の戦闘をこなして生き残れたら解放ですぅ』


 なるほど、ようやくわかった、偶然か計算かわからないが闘技場で戦闘奴隷として強力なモンスターとの一騎打ちをやらされているのだ。プレイヤーの能力を駆使すればそうそう負けはしないだろうがギリギリの戦いを強いられていることは間違いない。

 勝てば勝つほど名声値は上がるだろうが、こんないつ死ぬか分からないような危険なあげ方もないだろう。

 だが強い、早い、そして確実だ、他のプレイヤーに対するプレッシャーも凄まじいものがある。

 俺も負けてはいられないな。

お読み頂きありがとうございます


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