30/96
30狩り目
東山君と隣でドキドキした電車はすぐに着いてしまった。その事を少し惜しく思いながらも買い物に出掛ける。
……だが、その前には大切な事があるのだ。これが目的で来たと言って良いくらいには。
でも、否定されたら。そしたら、さっき嬉しかった隣に座る事だって今この時のように並んで歩く事だって最後になるかもしれないのだ。
そう思ったら、……怖く、感じた。受け止めて欲しくて、だから、ここに立っているはずなのに。
いつもの私に戻れよって思っても、これじゃあ東山君が変に感じてしまうって思っても臆病になっちゃってて。
やっぱり急に歩きが遅くなった私を変に思ったのか東山君がこちらを振り向いたのが分かった。
「あ、ごめんなさい。何でもないんです」
駆け足でそちらに向かった私に東山君は、何故か、そっと私の頭を撫でてくれた。唖然としている私に
「……俺は、自分の感情は、分からない。でも、今、西園寺さんが、なんか、苦しそうなのは、分かったんだ」
そう、言ってくれた。その言葉は、途切れ途切れでゆっくりと、よく考えて発したものなんだと分かった。
そして私の心にじんわりと、染み込んで暖かい気持ちにさせた。




