麻薬排除ぉおおおお
最初に一話「朽ち果てろ覚せい剤」
学ランが似合う春の話の頃であった。7,8人の生徒は屋上でシンナーを吸っていた。シンナーの臭いは屋上に漂い、青春の風に仰がれていた正樹には邪魔だった。
「あなた達!ここで何しているの」
この場に入り込んできたのは、同級生である香織であった。もともと、正義感が強かった香織はこの状況をどうにかしようと思ったのだ。
「シンナーなんて体に毒よ!今すぐにやめれば依存症は免れるかもしれないわよ!」
7,8人の不良に一人の女の子では、かなり危機的な状況である。
「アレ、試してみましょうかね?」
「何を?」
「スピードの事です」
「ああ、ずいぶん面白そうだな、いいだろう」
そう言って、香織はそいつが注射器を出すのを垣間見た。その瞬間、香織の視界は揺らいだ。全身に寒気が走る。全身の血管が一気に冷たくなるのを感じた。と、同時に心臓が脈を撃った。
足が震えるのを必死に我慢したが、瞳孔は開きっぱなしになる。
「彼らが言っているスピードとは、覚せい剤の事だ」
香織は瞬時に理解した。
今、見えている注射器の中の液体は本物だ。本物の覚せい剤がある。それだけでも香織にとってはショックで衝撃的だった。
この状況から逃げなくてはいけない、でもどうやって?逃げられないかもしれない恐怖、香織は自分の心臓から一回一回、冷たい血液の脈が流れ出ている気がしてならなかった。
不意に、自分足が勝手に動いた。出口に向かってだ。ドアに鍵を掛ければ奴らは入ってこられない。間に合うかどうかが問題だ。
しかし、思ったように早く走れない。目からは涙が溢れ出した。
「覚せい剤なんかやったら、友達も家族もみんないなくなっちゃうよ。たすけて」
震える手がドアノブに触れたとき反対側の腕をヤツに取られた。
「きゃっ!」
次の瞬間だった。
「イヤー、まだ覚せい剤は早いっしょ!それに不良もせめて高校になってっからにしようぜ」
不良の中の一人が急に声をあげた。
「何言い出すんだ!!テメェはぁ!」
「お前らの体格は結構なもんで、ヤンキー役は似合っているだろうが。まだ15才だぜ。
覚せい剤なんてブツを持っている時点でアウトだよ。まっ、俺も15だけどな」
そういうと、ポッケから妙な液体を取り出した。
「ブシューッ!!」
赤黒い液体は吹き出し、奴らの一人の目の辺りに命中した。その液体が口のほうまで垂れていくと、鉄の味がした。
「なんだよこれ!」
「ははーん。さてはこの特製、正樹スペシャルをしらねぇな」
正樹と呼ばれる少年は自分の作った血糊セットをぶちまけて見事に不良達を撃墜したのであった。
最初に一話 完
『やめさせよう、薬物乱用』
そのスローガンが勇助の頭の中を駆け巡った。それと同時に虫唾も走る。
「ちょっとアンちゃん、そこで何してんだよ!!あん?」
勇助は公園の中にいる3人くらいの男子どもに向かって声を掛けた。
彼らは紙袋を握り締めうつろな目をしている。まるで、アンパンを食べているような格好だった。シンナーを吸う姿がアンパンを食べるような姿に見えるためシンナーの別名がアンパンになったのは有名な話である。
彼らはまさしくシンナーを吸っていた。シンナーを吸うと脳みそは萎縮しスカスカになりつつもそれなしでは生きていけないと思い依存してしまうのだ。
これは薬物乱用の一つだ。
「お前らの、そのシンナー塗れの腐りきった身体を俺がァぶっ潰してやらぁー!」
いきなり勇助がそう叫んだ。
『グシャっー!』
と、勇助はそいつの頭に蹴りを入れた。そして、そいつは地面に倒れこむ。
「薬物乱用は悪だ!俺が正義だからお前らをぶっ倒してくれるわ!」
するとまた別の1人がバットを持ち出した。勇助の頭を殴り倒してくる気だ。
さあ、バッター4番。大きく振り被って狙うはボールに見立てた勇助の頭蓋骨!
・・・しかし外した!これは変化球かァ?勇助の頭突きがバッターの顔面に入り、彼にとっては見事なストライク!乱用者は鼻血を出して倒れた。
「よくも俺のダチをォぶっ倒してくれたなァ!」
もう一人の奴が勇助にけりを入れてきた。しかしそれを見事にかわした。
再び、奴の顔面に勇助の拳が直撃。
「お前らは、シンナーを吸っている!薬物乱用は悪だ!犯罪だ!悪は正義の前に平伏すんだよ!お前らは正義の俺様に、一生勝てねぇんだよ!」
大声で笑いながら、スカスカの頭に、ボロボロの体に暴力を振るう。
「いいか?お前らは薬物をやってんだから警察なんかに言えねぇよなぁ?このグズ!」
第一章 『主人公の登場』
「大ニュース、大ニュースですよ」
そう言って学校新聞を持ってきたのは新聞係の志桜里であった。
目の前でかざした新聞に見出しには
『録音機少年、初の成果か!!』
と、書かれてあった。
同じクラスであった望美はその新聞を志桜里から取り上げるといきなり紙飛行機を作り始めた。
「何しているの!やめて」
しおりが焦る。
紙飛行機を作り終えると『ビュン』と飛ばす。
爽快に風を切り行き着く先は一人の男子。
そいつが振り向き紙飛行機を開き始めると
「しゃぁーっ!!」
と叫ぶ。志桜里は
「えっ?なに?」
という感じであった。
「見ろよ。ここっ、ここだよ、俺の武勇伝は!」
その声の迫力でクラスのみんなが集まってきた。
学校新聞には圭悟とか言う奴が、ある事件現場を録音したというものだった。その事件の内容はというと、3人くらいの少年たちが公園でシンナーを乱用していたところを、また別の少年がそいつらをフルボッコにしたというものだった。
『ピッ』
圭悟がレコーダーのスイッチを押した。
『お前らの、そのシンナー塗れの腐りきった身体を俺がァぶっ潰してやらぁー!』
『ピッ』
と、一時停止をすると圭悟は話し始める。
「いやね、俺がいつもボイスレコーダーを所持しているのはみんな知っていると思うのよ。たまたまあの公園を通ると変な声が聞こえるわけさァ。何つったかなぁー。ちょっとアンちゃん、そこで何してんだよ!!あん?とか言っていたかなぁ。ただ事ではないと思った俺はね、すかさずこいつのスイッチを入れた」
『ピッ』
『薬物乱用は悪だ!俺が正義だからお前らをぶっ倒してくれるわ!』
そしてしばらくノイズが走った後、
『よくも俺のダチをォぶっ倒してくれたなァ!』
「倒しちゃったのね、シンナー乱用者」
クラスメイトから発言があり少し笑いが起きた。
「そうそう、倒しちゃったんだよ」
と、圭悟。
『お前らは、シンナーを吸っている!薬物乱用は悪だ!犯罪だ!悪は正義の前に平伏すんだよ!お前らは正義の俺様に、一生勝てねぇんだよ!』
「何だ、コイツ」
「ひどい」
などの声がクラスから聞こえる。そしてあろうことか最後には
「いいか?お前らは薬物をやってんだから警察なんかに言えねぇよなぁ?このグズ!」
という言葉、
すると、圭悟の肩に手を乗せ
「圭悟。お前よくやった!」
と言ってくれたのは、同じクラスメイトの直人であった。
「ああ、俺もそう思っている」
「やっぱ学校新聞に載るだけはあるね」
望美が言った。
その声は活気に満ち溢れている様にも感じられた。
「みんなっー!いっちょコイツに本当の正義を教えてやっか!」
第二章 『オトリの女の子』
「そうは言ってもねぇ。そいつの名前とか、どこに居るかとか、分かるの?圭悟ぉ」
と、望美が言った。
「いや普通に分かんないでしょ」
「分かんないんかい!」
「でも探し出す方法ならあるさ」
圭悟は微かに笑みを浮かべてそう答えた。
「今、私も同じ事を考えたかもしれない」
「ほう、望美。お前どんな事を考えたんだ?」
「それは秘密。圭悟は?」
「俺も秘密さ」
すると突然、後ろから声がした。
「おおっ?なんか2人、イイ感じじゃない?」
話しかけてきたのは直人であった。
「そうそう、今ちょうどイイ感じだからさぁ、あっち行っててくんねぇか?」
「なんだよ、せっかくあの正義主義野郎を見つけ出す方法を探してやろうと思ったのによ」
と、直人の一言。
「いやいや、こっちはもう頭の中で作戦構築済みだからな」
「マジかぁ、すげーな」
「圭悟くん、どう?私と勝負しない?」
「ん?勝負って?空手か何かで?」
「違うよ、そりゃ圭悟に空手で勝てる奴はなかなかいないだろうけど、どっちが早く、あの正義主義野郎を見つけ出せるかの勝負よ」
「ああ。いいぜ。受けて立とうじゃねぇか」
圭悟と望美が勝負を開始してから24時間がたった。
細い腕でシンナーの袋を握り締めていたのは望美であった。彼女は地べたに座り込み口に手を当てて気持ち悪そうにしていた。
シンナーは脳を溶かす。さらに幻覚や幻聴といった症状が現れる。
数十分遅れて圭悟がやってきた。彼の手にもまたシンナーの袋か握ってあった。
「どうする?」
圭悟の声が静かに響いた。
圭悟と望美が公園にいる今日この頃。学校で例の2人が来ていない事が話題になっていた。ちょうどその頃であった。
「みんな!最近ホント事件多いわね」
声を掛けたのは志桜里であった。
「どうした?何かまた事件でもあったか?」
「事件も事件!大、大、大事件よ」
「えっ?」
志桜里はみんなにカメラを見せた。なんとそこに写っていたのは公園でシンナーを吸う2人、圭悟と望美であった。
「ええっ~マジで~!?」
「志桜里さん!職員室までいらっしゃい。休み時間中勝手に外へ逃げ出して!」
「センセー!でもでも、見てくだせぇよこの写真!」
「んん~?・・・あえっ」
「ああ、まさか俺とお前がまるっきり同じコト考えていたとはな」
圭悟が言った。
「私の考えのレベルについてくるなんて圭悟もなかなかやるじゃない?」
「違う!俺がお前のレベルについてきたんじゃない。お前が、俺についてきたんだ」
「また、屁理屈を」
「まあでも、俺たちが乱用者のフリをすればあの野郎が勘違いして俺たちをぶっ潰しに来るって考えもね早々うまくいくモンじゃない気もするが」
「確かに」
「こういうのはどうだ?ちょっとばかしリスキーだが、俺がお前を薬物乱用に落とし入れるヤンキー役をやる。するとあの野郎正義主義だからきっと俺をぶっ殺しに来るぜ」
「じゃあ、ウマいせりふの言い回しも必要ね」
「俺がお前の手を引いて、ねえぇちゃん俺と面白れぇことしねぇか?アンパンってブツがあんだけどよ」
「その瞬間、私の血液が逆流するような感覚になった。私はそれが確実に麻薬であると思い自分の意思を伝える…やめてください!そういうのは体がボロボロになるので絶対イヤです!」
「しかし圭悟は彼女を放そうとはしなかった…いいだろ、一回ぐらいやっても。それに痩せられるぜ」
しかしすぐに2人は「はぁ」と、ため息をついた。
「ナレーターを自分達がやるって言うのもね、傍から見たらお笑いやっているようにしか見えねぇな」
「そうね、なんて言うかちょっとバカバカしくなってきた。こんなんで学校サボるんじゃなかった」
その瞬間だった。
「お前らの、そのシンナー塗れの腐りきった身体を俺がァぶっ潰してやらぁー!」
見ると公園の入り口にあいつが立っていた。
「来たか!!」
2人はシンナーを吸うフリをする。
圭悟はその口元がニヤつくのを感じた。
望美はその胸が激しく高鳴るのを聞いた。
あいつはいきなり圭悟に回し蹴りを放ってきた。
「あっ!コイツなかなかケンカ強ぇぞ…でも油断したな…実は俺、空手二段なんだぜ」
そいつの回し蹴りをかわし背後へ回る。
「なんだと!乱用者はこんな動きできねぇはずだ!」
「それはなァ!俺たちは薬物乱用なんて、そんなくそヘマはしねぇからだよ!」
「そっそんなバカな!」
「俺は圭悟、お前の名前を聞こうじゃねぇか!」
「い、言えるか!バカ者!」
「ゴメンね、お名前を伺ってもよろしいかしら?シンナー中毒者じゃない私と今度、お茶でもしないかな、と思って」
「しょうがねぇ。俺の名前は勇助だ!覚えろよ」
「勇助くん。あなたは正義の味方?」
「ああ、もうバリバリのヒーローよ」
「どうして?」
「おい、望美!コイツが正義な訳ねぇだろ?」
「ちょっと黙って」
「望美ちゃんって言うのか、俺はジャンキーどもをぶっ潰しているからな、世界から麻薬をなくすためにだ」
勇助の口調は少し焦っていた。
「勇助くん。私の話、聞いて欲しいな」
そう言って望みは勇助の手を握った。
「…悪い人たちを倒せるから正義の味方じゃないわ、みんなを守れるから正義の味方よ」
勇助は後ずさりをした。
「今度は、薬物の魔の手に苦しんでいる人達を助けてあげたら?」
望美の声が公園に静かに響いた。




