第1話
東オリオン帝国の北東に位置し、古来より隣国の大国である自由条約連合の一員のグロリア共和国との争いが絶えないフォーレ地方にグロリア共和国が進軍したのは約半年前である。
今は亡き、前国家主席を務めたフランツ・エスターレの子であるフランツ・ヨゼフはアウグスライヒ=妥協もしくは和協を意味する政策から一変し、周辺国に対し強硬な姿勢を取り始めた。
そして、かねてより火種と言われていたフォーレ地方を獲得すべく動いた。
前国家主席の時代に干渉地帯として設定された地域には軍はおらず、その隙をついた侵攻だったこともありわずか1日での占領であった。
幸いというべきか、フォーレ地方後方に位置していた第5軍団長スタンレー将軍は守りを強固にかため、その後の侵攻は防いだ。
しかし、その過程における犠牲は少なくはなく、敵が全面戦争をはじめから企てていることは明白であった。
そんな中、士官学校を首席で卒業したヨハネス・ベルガー大尉は着任7日目というまだ椅子も温まらぬうちに転属命令が下された。
折しも世は機械化師団編成の真っただ中、しかし機械不要論の強い帝国内では編成が進んでいなかった。
ベルガーは機械の持つ機動力、火力に目をつけ在学中に機械化部隊の展望を発表していた。
それに目をつけた技術廠が有効性を示す手段として編成したのが独立戦車第088軍団であった。