はじめまして。
「あっ、沙鵺さんじゃないですか!…その人は?」
初めに話し出したのは俺と同じくらいの身長の、女の子だった。
「今日からあなたたちの仲間になる人よ。」
「あっ、神崎、大夢といいます。よろしくお願いします。」
「え、また増えるの…」
自信ないような声でこちらを見つめるそいつに、後ろからバンバンと、背中を叩きながら前に出てきた。
「そんなこと言うなって!大夢くん、だっけ?オレ、神谷 雫月!で、このひ弱そうな奴が…」
「ひ、ひ弱じゃ…ないよ……あ、僕…えと、神田 淩央、です。……その…よろしく…」
ふふっ、
笑い声が漏れた。
さっき話してた女の子だ。
「あ、初めまして。わたしは、神山 光希。よろしくね?あっ、そういえば、さっき自分のこと『オレ』って言ってた子は、女の子だけど雫月ちゃんって呼ぶと怒るから、気をつけてね?」
「あ、うん。…その子、めっちゃこっち睨んでるけどね……」
それ言う必要ねーだろっ!という声が聞こえてきたが、スルーしてあげた。
*
「大夢くん。まずはこの世界の説明をするから、よく聞いてね。」
沙鵺さんは少し微笑んで、それから、
ふっ、と真面目な表情に変わった。口に引かれた紅い線が、真っ直ぐ伸びる。
「ここは、人間にとっては欠かせない場所。なくてはならない場所なの。ここがないと、皆、絶望し、愛を失い、秩序を乱し、そして…」
「そして…?」
「戦争が、始まる。それも、天国と地上だけでなく、私たち地獄とも。」
「戦争って……じゃあ、みんなはその時、戦うんですか?武器を持って。」
「敵も味方も関係なしに、ね。」
………………!!
「この世界の役目は、人間を守ること。でもそれさえも無くなれば…皆、仲間としての意識が途切れて、皆を消そうとしてしまう。…何年か前に、それが起こってしまった。」
「…えっ」
「ある1人の神が、人間を何人も殺したのよ。それに怒った神の仲間が、この世界で内乱を起こしたの。すると、この世界は機能しなくなってしまった。それが…戦争の始まりよ…。」
戦争は、まだこの世にあったのか…?
人々が、絶望する時代はすぐそばにあるなんて……
俺は、その場にずっと立ちすくむことしかできなかった…。