紳士と少女
泣いてる彼女を見つけたときはどうしようかと迷った。僕には慰める義務はないしそもそもその泣いてる女の子と知り合いでもない。しかし、男子たる者女の子を救わない訳にはいかないわけで、しかし、声をかけると、変態呼ばわりされないだろうか?僕の思考回路はそこまで思考する。恥はなんちゃら。と思い声をかける。
「お嬢さんどうして泣いてるのですか?」
声をかけたものの彼女は泣いてばかりで返事をしてくれない。周りに人がいなくて良かったと思えたのは多分初めて……いや、二、三回目かもしれない。いやいや、常に女の子に子をかけているわけではないんだが……信じてくれ。
「おじさん……」
僕は彼女に不意に話しかけられる。できるだけ、紳士的に答えようと「なんだい?」と答えた。
「あたしね。友達にいじめられてるんだ」
「そうなのかい?それでないているのかい?」
彼女はコクリと頷く。下校中らしい彼女にはランドセルがなかった。誰かに取られたのだろうか?いじめっこに隠されたとか?果てしない妄想が広がる。
「僕はキミに何も出来ないけどお話をする事はできる」
どれだけ卑怯な人間なんだろうかと、僕は自分を疑った。
「おじさんはやさしんだね」彼女は笑顔だった。
彼女は、語る。どれだけ苦しかったか。事の始まりは夏休み明けかららしい。急に友達の態度が変わり始めたそうだ。その子は、特別何も思わないで一生懸命に友達と遊んだ。しかし、次第に無視をされたり、物を隠されたりして言ったという。彼女はめげずに誰にも相談せず、一人で解決しようとしたが、無理だと思ったら急に涙が出た。そうだ。
「ランドセルを背負ってないようだが……友達に隠されたのかい?」失礼なことを聞いてしまった。言ったその後すぐに後悔した。
でも彼女は笑ってそうみたいと。僕は、何故か強いなこの子はと思ってしまった。僕の場合…考えるだけでぞっとして誰にも言えなくて苦しむだけかもしれない。そう思った。
「おじさんは、あたしみたいないじめられっ子嫌い?」
不意に質問をされた。
「うーん。いや。そんな事はないさ。嫌いだったら声をかけないし見てみぬふりをするさ」
格好をつけたつもりだった。やっぱり、僕は意気地なしだと改めて思った。
「よかった。あたし、おじさんにも嫌われたらどうしようかと思って…」
「そんなことはないぞー。だったら、今度君の家に遊びに行こうじゃないか…」
言った瞬間また自分を呪った。
「あはは、おじさんが家に来るなんておかしいよ、ママが知らない人をおうちに連れてきちゃいけないって言ってたもん。」
「そうだぞーおじさんみたいな知らな人をおうちに連れて帰ったり付いて行ったりしたらだめだぞ。お菓子をあげるよとかいう輩もいるから気をつけるんだよ」
自分の中でじゃぁ自分は何なんだろうと。自問自答する。結果怖いおじさんとして導きだされてたまらなくなった。
「あはは。おじさん面白いね」
「そう言われるとまだ救いがあるよ」
壮絶な苦笑いである。
「ママさんによろしくなー」
「うん、おじさんあたし元気でた!」私の手を取り、ぶんぶんとふる。
「また、いつか会おうね。ばいばーい」彼女は手を振りランドセルの存在を忘れているのか、元気よく向こう側へと走って言った。
「あはは、変な子だったなー」と、ひとりごちて空を見上げる。
世の中には、どんな変態がいてもおかしくない。だけど僕は決して違う。ただ小さい女の子とおはなしをしたり、元気づけてあげたいだけなのだと自分に言い聞かせながら。僕もその場を離れて、ポケットから電話を取り出した。
「ん。元気な子だったよ。私はこれで十分満足だ。」