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その後の話

作者: シンジ
掲載日:2026/01/30

15年という歳月が、私の中でただ過ぎ去ったのではなく、確実に「真珠」のような層を成して深みと輝きを出してくれた。

あの日から15年目の月日を越え、僕は少しずつ、止まっていた時計のゼンマイを巻き直すように日々を重ねています。


前の投稿からの僕の日常には、劇的な変化があったわけではありません。

けれど、世界の色がほんの少しだけ、鮮やかさを取り戻し始めています。


今でも、キッチンに立つと、無意識に棚から二つのティーカップをとり出そうとしてしまうことがあります。

けれど、そんな自分に苦笑いしながら、一つを棚に戻せるようになりました。


日記で見つけた「美味しいものを食べている顔が好き」という言葉。

それを守るために、僕は自分のために料理をちゃんと作るようになりました。

適当に済ませていた食事を、旬の食材を選び、一品ですませず、主菜、副菜、汁物とつくようになりました。

「美味しいな」と独り言をつぶやく時、鏡の中の白髪混じりの男は、少しだけ27歳の頃の柔らかな表情に戻っている気がします。ちょっとだけ表現がくさいかもしれませんが。


持っていた一眼レフカメラも、かつて彼女との思い出を撮影していたそのレンズが、

今は街角に咲く名もなき花や、刻一刻と変わる空の青を捉えています。


また、先日は思い切って、彼女が生きていたら「似合うね」と言ってくれたであろう、少し明るい色のウォーキングシューズを買いました。

その靴を履いて、かつて二人で「いつか行こう」と話していた場所へ、一人で足を運んでいます。


彼女に見せたかった景色を、僕が代わりに見て、心の中で語りかける。

「見てる? 綺麗だよ」と。それは寂しい作業ではなく、彼女との「新しいデート」のような感覚に近いのかもしれません。


スマホに今も残る彼女の電話番号。それはもう、繋がることを期待するものではなく、僕の人生の11桁の「お守り」になりました。


前の投稿をいろんな人に見て貰いました。

自分の経験を語るのは、まだ胸が締め付けられることもあります。

けれど、僕が彼女との日々や、15年間の葛藤を話すことで、誰かの孤独に寄り添えるかもしれない。

「悲しみは同化する」という僕の言葉に、涙を流して頷いてくれる人がいました。

彼女を失ったという「痛み」が、誰かを癒やす「優しさ」に形を変えた瞬間でした。


僕は今、42歳の自分をようやく受け入れ始めています。

いつか僕が人生の終着駅に着いた時。

「ずいぶんおじさんになっちゃったね」と笑う彼女に、胸を張って言いたいのです。


「君がいなくなった後の世界も、変わったこともあったけど、君が愛した通り、なかなか美しい場所だったよ」と。


足元にはまだ、時折深い影が落ちます。

けれど、顔を上げれば、そこには必ず光が差している。

僕は今日も、彼女からもらった温もりをポケットに入れて、静かに、けれど確かな一歩を踏み出しています。

長く書いてしまいましたが、ありがとうございました。

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