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第9話 祐衣の苦悩と一の知恵

しかし、祐衣ははじめや慎太郎には言えない、深い悩みを抱えていた。


祐衣が帰宅すると、そこには留美子の婚約者と思われる男がいた。


祐衣「………」



鈴木「なんだ、祐衣。ただいまぐらい言えないのか」


祐衣「…私に話しかけないで…」


鈴木「冷たいな。可愛い顔してんのに、勿体ない」


祐衣「………」


鈴木「そう言えば、あの沖田くんだったか?あの子とは上手くいってるのか」


祐衣「!!アンタに関係ないでしょ」


鈴木「大事にしろよ。何せスターらしいからな。何が何でも、あの子か、もしくは武市くんのどちらかと結婚してもらわないと、父さん困るぞ。母さんには内緒だが、父さんは借金もあるからな」


祐衣はその心ない言葉に激昂した。


祐衣「アンタなんか、父さんじゃない!私のお父さんは、死んだお父さんだけ!!アンタなんかに……アンタなんかにあの2人は絶対に会わせない!!!」


祐衣はそのまま家を飛び出した。


行く宛など無かったが、祐衣ははじめの家を遠くから眺めていた。


はじめ「っし!次、ラダーやるぞ」


慎太郎「まだやんのかよ…いい加減疲れてきたぞ」


はじめ「ほら、へばってるフリしてねぇで、さっさとやるぞ」


慎太郎「おい〜…ちょっとは休憩しようぜ」


2人のいつものトレーニングを眺めながら、祐衣の頭には、どうしようもない鈴木という男の存在がちらつき、自然と涙が溢れ落ちた。


祐衣「はじめ…慎ちゃん…さよなら…」


祐衣は静かにその場を後にした。


その日の夜、はじめの自宅に留美子から電話が入る。


いおこ「はい。」


留美子「あの、沖田さんですか?」


いおこ「はいそうですが?」


留美子「いつも娘がお世話になっております。小林祐衣の母です」


いおこ「あ~祐衣ちゃんの?こちらこそお世話になっております!」


留美子「あの、突然で申し訳ないんですが、祐衣そちらに伺っておりませんでしょうか?」


いおこ「祐衣ちゃんですか?慎太郎くんなら、ついさっきまではじめとトレーニングしていましたが、祐衣ちゃんは来てませんね…祐衣ちゃん、帰ってないんですか?」


留美子「えぇ。それが学校からは帰ってきたみたいなんですが…突然家からいなくなってしまって…私も探してみたんですが、見つからないんです」


いおこ「ええ!…すみません、またかけなおしますね!」


“ガチャっ”


いおこ「はじめ!はじめーー!」


はじめ「なに?」


いおこ「祐衣ちゃん、トレーニングしてる時に、見に来てない?」


はじめ「祐衣?今日は俺と慎太郎と3人で帰っただけだけど?何かあったの?」


いおこ「そう…今祐衣ちゃんのお母さんから連絡があって、祐衣ちゃんが帰ってこないって」


はじめ「祐衣が!?」


はじめは急に顔が青くなった。


はじめ「やばい!探さなきゃ!母さんは父さんに祐衣がいなくなったって連絡して!俺も手当たり次第探すよ!」


はじめはそう言い残し、走り去ってしまった。


いおこ「…警察じゃなくて、父さんに?もしかしてあの子、何か知ってるんじゃ…いや、こんな事考えてる場合じゃない!早く連絡しないと!!!」


はじめは祐衣に電話をかけながら、心当たりを探しまくった。


“おかけになった電話番号は、電波の届かない所におられるか、電源が入っていないためかかりません”


はじめ「チクショー…祐衣。何処にいるんだ…」


はじめも祐衣の行き先がわからないまま、とにかく手当たり次第探していた。


するとそこへ、同級生の女の子の麻生玲美が現れた。


玲美「沖田くん?」


はじめ「ん?麻生玲美ちゃん?なにしてんのこんな時間に?」


玲美「いや、そこ私の家だから。そっちこそこんな真夜中になにしてんの?」


はじめ「あ!そうだ!祐衣…小林祐衣見なかった?」


玲美「小林祐衣ちゃん?見てないけど…どうかしたの?」


はじめ「…家出したみたいなんだ」


玲美「家出!?」


はじめ「とにかく早く見つけ出さないと、やばいんだ!玲美ちゃんも一緒に探してくれないか?こんな時間に女の子の君に頼むなんて非常識な事をしてるのはわかってる。でも、お願いだ、頼む!」


はじめは玲美に深々と頭を下げた。


玲美「頭上げて!今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ!?私の親も一緒になって探すから、とにかく何かあったら連絡しよう!」


玲美と連絡先を交換し、その場を後にしたはじめ。


玲美「…野球と勉強と食べる事以外にも興味あったんだ、アイツ…」


その後はじめは小学校の前に到着していた。


何処探しても見つからない状況に、はじめは膝から崩れ落ちた。


はじめ「祐衣…ごめん…俺のせいだ…俺が…俺が…」


そこに現れたのは慎太郎だった。


慎太郎「はじめ!!」


慎太郎ははじめに近付くが、はじめは何も気付かず、ただ自分を責めていた。


はじめ「祐衣…ごめん、祐衣…」


慎太郎「はじめ、あんま自分責めんなよ」


はじめ「………」


慎太郎「ほら!立てって!今日は夜も遅いし明日明るくなってからもう一回探そう。大丈夫だ!祐衣ちゃんなら必ず生きてる……」


そう言いながらはじめを無理矢理立たせる慎太郎。


はじめ「慎太郎?」


慎太郎「今日はもう帰るぞ。明日は一緒に学校休んで朝から探そう。いいな?」


はじめは静かに頷き、慎太郎と共に帰宅した。


慎太郎「おじさん、おばさん。明日は俺も一緒に探すよ」


宗一郎「そうか、慎太郎くんも知ってるんだね、あの事」


いおこ「でも、学校は?」


慎太郎「学校よりも友達の方が大事だから。それに、はじめの事も心配だしね。じゃ、帰るよ。おやすみなさい」


いおこ「なるほどね。相棒の慎太郎君とあなただけに先に相談してたってわけね」


宗一郎「そうみたいだな。あんな事、噂話でも無駄に広げたくはないと考えたんだろう。そーゆーことに気がつくのは、親としても誇らしいな」


いおこ「そうね…」


夜通し自分を責め続けたはじめ。


朝を迎え、急いで家を出ようとすると、いおこがそれを止める。


いおこ「はじめ!ご飯食べなさい!」


はじめ「飯なんか食ってる場合じゃねぇよ!祐衣が、祐衣が!!!」


宗一郎「いいから座って飯食えって言ってんだ!」


はじめ「!!」


初めて父に叱責されて驚くはじめ。


宗一郎「いいか?お前が祐衣ちゃんを心配する気持ちも自分を責める気持ちも痛いほどよく分かる。だけどな自分を責め続けるだけじゃ、祐衣ちゃんは救えないぞ」


はじめ「父さん…」


いおこ「それにお腹空いてちゃ、いざという時に頭働かないでしょ?まずはご飯食べて、頭冷やしなさい」


はじめ「わかった」


はじめは朝ご飯を少しだけ食べてから、すぐに走って祐衣を探しに行った。


すると20分後に慎太郎が沖田家を訪ねた。


いおこ「はい。あーおはよう。慎太郎くん」


慎太郎「おはよう、おばさん。はじめは?」


いおこ「はじめなら、ついさっき出ていったよ。きっと祐衣ちゃんが心配で気が気じゃなかったんだろうね」


慎太郎「マジか…あの野郎、俺も一緒に探すって言ったのに…わかった、ありがとう!」


慎太郎も走りながらはじめと祐衣を探しに行った。


慎太郎「あの野郎、どこ行きやがった!!」


慎太郎ははじめと祐衣が行きそうな、思い出の場所を頭の中で探し始めた。


すると慎太郎は、慎太郎のファンの生徒に見つかってしまう。


女子生徒D「あれ?武市先輩?武市先輩だ!!!武市せんぱーい♡」


慎太郎「ごめん!今は本当にそれどころじゃないんだ!…あぁ、学校に俺と沖田一は休むって伝えといてくれ!」


女子生徒D「え?学校休むんですか?なんで?」


慎太郎「人探しだ!学校の件、頼んだよ!休む理由は適当に考えといてくれ!じゃ、宜しく」


慎太郎はそう言って女子生徒Dの頭を撫でて走り去った。


女子生徒Dは何が何だかわからないが、憧れの慎太郎に頭を撫でられた事と頼られた事の嬉しさで興奮を飛び越えて、ボーッとしていた。


女子生徒D「…武市先輩に頼み事…しかも頭まで…わ、わ、わ、し、幸せ♡」


慎太郎は走りながら、ふと、小学生の時の祐衣の言葉を思い出す。


“武市くん、HDって知ってる?”


“沖田くんは、YU-TOっていうギタリストが好きなんだ”


慎太郎「あそこか!!」


慎太郎が向かったのはYU-TOの墓の前だった。


そこには、はじめ1人しかいなかった。


慎太郎「はじめ!」


はじめは、慎太郎に気が付くと、無言で横に首を振り、そこに祐衣はいなかったことを伝えた。


慎太郎「そっか…」


はじめ「…ここにいると思ったんだけど」


慎太郎「まいったな…」


するとはじめの自我が崩壊し始める。


そしてまた膝から崩れ落ちた。


はじめ「祐衣…祐衣がいないと俺…祐衣、嫌だ…」


すると慎太郎ははじめを抱きかかえた。


慎太郎「はじめ!まだ祐衣ちゃんが死んだって知らせが来たわけじゃないんだ!きっと無事に見つかる。弱音吐くのは何かあってからでも遅くないだろ……しっかりしろ!!お前が祐衣ちゃん信じねぇで、どうすんだよ!!」


その言葉にはじめは我に返り、立ち上がった。


はじめ「そうだ、まだ祐衣が死んだって連絡は来てないんだ」


慎太郎「あぁ!とにかく今は手当たり次第探すしかないだろ!」


はじめ「…ダメ元だけど、あの新人戦の全国大会で優勝した時の球場行ってみるか」


慎太郎「ネモフィラスタジアムか!」


はじめ「急ごう!」


2人はネモフィラスタジアムへ足を運んだ。


するとそこには、遠くから球場を眺める制服姿の祐衣がいた。



はじめ「祐衣!」


祐衣「!!」


祐衣は2人に気付くと2人に背を向けて走り出した。


はじめと慎太郎の距離が近くなると、急に立ち止まった。


祐衣「来ないでっ!!」


祐衣の言葉に2人も立ち止まる。そして祐衣がゆっくり2人の方に振り向いた。


その時の祐衣の目は涙で溢れていた。


祐衣「私、はじめを騙してたの。ずっと。はじめは野球の才能もあるし、勉強もできるし、将来たくさんお金稼げそうだったから…でもね、もう飽きちゃった。はじめのダサい部分たくさん見てきて、なんか幻滅しちゃった。だから2度と私に近寄らないで…あぁ、でも慎ちゃんはいいよ、気があるなら、付き合ってあげる。その代わり結婚したらお金全部ちょうだいね」


祐衣は声を震わせて涙をこぼしながら、2人に向かって言い放った。


祐衣の言葉が本心ではないことは誰の目から見ても明らかだった。


慎太郎「白々しい演技するなよ!俺らがそんな事信じないって事は祐衣ちゃんが1番わかってるじゃないか!それに俺らが何も知らないと思ってるのか?」


すると慎太郎の言葉をはじめが遮った。


はじめ「慎太郎!言うな」


慎太郎「はじめ?」


はじめ「わかった、祐衣の好きにすればいい」


慎太郎「おい」


はじめ「祐衣にとって、俺が邪魔だって言うなら、目の前から消えてやるよ」


慎太郎「はじめ、お前何を!お前知ってんだろ?祐衣ちゃんの」


はじめ「けど一つだけ!!一つだけ言っておく。俺は祐衣を苦しめるヤツは誰だろうと絶対に許さない。それがたとえ俺自身でもな。簡単には死なさねぇ。どんな手を使っても必ず地獄に叩き落としてやる。俺が死ぬことになっても。そん時は祐衣の事頼んだぞ、”相棒”」


はじめはそう言って慎太郎の胸を叩き、全力疾走で走りだした。


慎太郎「おい待て!はじめ!……やばい、アイツの目、完全に血走ってやがった!」


慎太郎は顔を青くしながら、はじめの後を追いかけた。


慎太郎の言葉が聞こえた祐衣も慌ててはじめを追いかけた。


しかし、今のはじめは50メートル5秒台前半の俊足。おまけにマラソン選手顔負けの持久力を持っていた為、2人がはじめを見失うのに時間はかからなかった。


殺気立ったはじめが向かったのは、父、宗一郎の会社だった。


はじめは宗一郎を見つけると、すぐに宗一郎の目の前に行き、祐衣を見つけた事を報告する。


はじめ「父さん、無事に祐衣見つかったよ」


宗一郎「そうか!無事だったか!それはよかった!」


はじめ「もう全部揃ってる?」


宗一郎「あぁ、バッチリだ!」


宗一郎ははじめに何やら分厚めの封筒を渡した。


中身を確認したはじめは、さらに宗一郎に確認した。


はじめ「あの人たちとは連絡とれそう?」


宗一郎「もう連絡済みだ。全員いつでも来られるそうだぞ」


はじめ「そう。あと、父さんの知り合いの人にもお願いしたい事があるんだけど」


宗一郎「大丈夫、手配済みだ!」


はじめ「さすが、俺の父さん!これで、地獄に叩き落とせる」


はじめは不敵な笑みを浮かべた。


一方の慎太郎と祐衣は、祐衣の自宅に帰ってきた。


そこには留美子と鈴木、そして担任の有村先生がいた。


留美子「祐衣!今まで何処に行ってたの?怪我はない?大丈夫だったの?」


本気で心配していた留美子は祐衣の無事を確かめると、祐衣を強く抱きしめた。


祐衣「お母さん…はじめは?はじめは来てないの?」


留美子「…え?はじめくん?来てないわよ?祐衣を探してくれてるって、はじめくんのお母さんが言ってたけど…」


慎太郎「はじめ…どういうことだよ…」


慎太郎も祐衣も、てっきり鈴木を殺しにここに来ると思っていた為、はじめが来てないことを知ると戸惑った。


すると次の瞬間、祐衣の家のインターホンが鬼の様に鳴り始める。


留美子「誰よ!…ってはじめくん?!と誰ですか、あなた達!!」


はじめ「よ!おばさん!こないだはカレーご馳走様!」


留美子「え?っていうか、こんな大勢…誰連れてきたの!?」


はじめはヒーローのお面と大きい布で全身を覆った14人の大人を引き連れて登場した。


はじめ「祐衣とおばさんを救いに来てくれた、俺たちの味方だよ。中入るよ」


そう言うと、14人のヒーローと共に強引に家の中に入るはじめ。


有村先生「沖田!お前何してんだ!?」


はじめ「祐衣と祐衣のおばさんを救いに来たんだよ」


慎太郎「これは…なんなんだ一体?」


祐衣「はじめ…」


はじめは留美子が戻ってくるのを待って、事の経緯を話し始めた。


はじめ「祐衣がいなくなって、自分を見失いそうになった。けど、そこにいる馬鹿みたいな顔した馬面のおかげで目が覚めたよ」


慎太郎「な!誰が馬面だテメェ!」


はじめ「で、実は何日か前にたまたまこんな所を発見して、つい写真に撮っちゃったんだ」


はじめは次の瞬間、手に持っていた封筒から、30枚近くの写真をテーブルに広げた。


そこには鈴木と、見知らぬ女性がホテルに入る写真が収められていた。


それも、それぞれ違う女性たちと共に。


鈴木「…沖田くん、これは何のいたずらだ?」


はじめ「うるせぇ!この結婚詐欺師野郎が!テメェだけは絶対に許さない!簡単に死ねると思うなよ!絶対に地獄に叩き落としてやる!!」


するとはじめのその言葉とともに、14人のヒーローたちはお面と布を外した。


それは鈴木に騙された女性たちだった。


鈴木はかつて騙してきた女性たちを前に、完全に腰を抜かし、立っていられなかった。


留美子「ちょっと…何よ…これ」



はじめ「おばさん、祐衣、ごめん、救うのが遅くなって。本当ならコイツはこの手で立てなくなるぐらいまでぶん殴って地獄に送ってやりたいところだけど」


はじめは自分のマメだらけで汚い両手を見つめて、強く握りしめた。


はじめ「それをやると、余計に祐衣とおばさんを傷付けると思って、でもちゃんとやらないと失敗しそうだったから、それで時間かかっちゃったんだ」


慎太郎「はじめ…」


慎太郎はホッとした。


鈴木は腰を抜かしながらも隙を見て逃げようとするが、目の前に鬼の形相で立ちはだかる祐衣がいた。


祐衣「許さない」


祐衣が右手を大きく振りかぶると、慎太郎がその右手を止める。


祐衣が慎太郎を見ると、慎太郎は黙って横に首を振り、祐衣の怒りを鎮めた。


すると次ははじめの父、宗一郎が警察官と共に現れた。


宗一郎「初めまして。息子がお世話になっております。私は沖田探偵事務所所長の沖田宗一郎と申します。実は今回息子から頼まれまして、そちらの鈴木さんの事を調査しておりました。そしてそちらにおられる方々に連絡を取らせてもらい、14人全員が被害届を提出されましたので、警察を連れて参上した次第です」


そして、鈴木はその場で逮捕され、警察官と、14人の被害女性達と、祐衣が帰ってきたことにより安心した有村先生は、その場を後にした。


はじめ「おばさん、突然こんな事して、驚かせてしまって、本当にごめん。俺、実は結構前から知ってたんだ。ランニング中にアイツがたまたま知らない女の人とホテルに入ってるの見ちゃってさ。そん時はランニング中だったからスマホなんて持ち歩いてなかった。だから証拠が抑えられなくて、ずっとモヤモヤしてたんだ」


留美子「はじめくん…」


はじめ「こんな事、証拠も無いのにおばさんや祐衣に話したって無駄に混乱させてしまうだけだって思った。でも、なんか耐えられなくて、慎太郎と父さんにだけは相談してたんだ…」


留美子は我に返り、はじめに謝罪する。


留美子「謝るのは私の方よ。今年受験で大変なのに余計なストレス与えてしまってごめんなさい。それから、救ってくれてありがとう」


はじめ「俺はいいよ。謝るなら俺よりも祐衣に謝ってあげて。祐衣は俺よりも先にアイツのことに気付いてたはずだよ。きっと祐衣もおばさんを傷付けたくないから、言えなかったんだ。祐衣、おばさんの事大好きだからね」


留美子「そうね。本当にありがとう、はじめくん…祐衣!」


祐衣「お母さん…」


留美子「ごめんね、辛い思いさせちゃったね。お母さん、もう騙されないようにするから」


留美子はそう言いながら祐衣を抱きしめた。


祐衣は静かに涙を流した。


祐衣「私、お母さんの事は大好き。お母さんには私がいるから…ずっと近くにいるから……」


2人のやりとりを見て安心した慎太郎と宗一郎、そしてはじめはその場を後にして帰宅する。



鈴木の末路は、一旦は逮捕され拘留されるも、敏腕弁護士が鈴木に付き、執行猶予がつけられ、すぐに釈放される。が、実はそれもはじめの計画の内だった。その敏腕弁護士は、宗一郎の幼なじみだった。はじめは祐衣を見つけて宗一郎の事務所を訪ねた後に、鈴木が作った借金の債権者の闇金へ行き、鈴木の情報をリークしていた。


釈放された鈴木はすぐに債権者の闇金に捕まり、当然返せる金など持っていない為、今は想像を絶するような過酷な労働環境で闇金監視の元、長時間、最低限の食料と水のみ与えられ、寝る間なく働かされている。


そしてその情報リークのお礼代わりに、結婚詐欺の被害女性達への慰謝料を鈴木に返させる為に監視する事を約束された。


帰宅途中、はじめは慎太郎に鈴木の末路について語った。


慎太郎「まじか!お前ってやつはどこまでも恐ろしいよ…敵じゃなくて本当によかった」


はじめ「お前がいてくれて助かったよ。あそこでお前が来なかったら俺も正気に戻れなかったしな。サンキュー」


慎太郎「何いってんだよ、気持ちわりぃな!でもネモフィラスタジアムでのお前の顔は本当に怖かったぞ。ホントに殺しに行くんじゃないかって心配したよ」


はじめ「あそこで、あぁしたら、お前たちは祐衣の家に戻ってくるってわかってたからな。あの状況でお前が祐衣を置いて行けるわけないって思ったから安心して行動できたってわけだ」


慎太郎「は!全部お前の手の平で踊らされてたってわけか!」


はじめ「そんな言い方すんな!お前に対しては絶対的な信用があったって事だよ!!」


翌日、2人は学校に前日休んだ事について呼び出されたが、有村先生からの説明があり、2人は逆に学校から感謝された。


しかし、学校に祐衣の姿は無かった。


慎太郎「祐衣ちゃん来てねぇな」


はじめ「そうだな」


玲美「来づらいんじゃない?家出してスター2人を心配させちゃったわけだしね。私も心配してたけどね」


慎太郎「玲美ちゃん!」


玲美「でもよかったね!小林祐衣ちゃん無事だったわけでしょ?それに沖田くん、聞いたよ!アンタ、本当頭良いよね!はい、牛乳!」


はじめ「ん?あぁ、牛乳か!ありがとう!助かるよ!」


はじめは玲美にもらった牛乳でプロテインを作り一気飲みした。


はじめ「くぅ~、染みるぅ!」


その日の練習終わりに、はじめと慎太郎と玲美は祐衣の家へ行く。


慎太郎「で、何で玲美ちゃんまで来るの?」


玲美「えぇ?私だって一緒に探したんだよ?」


慎太郎「でも、大丈夫なの?帰らなくて」


玲美「大丈夫だよ。友達と遊んでたって言えばいいだけだし」


祐衣の家に到着した、3人。


祐衣「はい。はじめ、慎ちゃん…麻生さん?」


玲美「祐衣ちゃん…良かった、無事じゃん!落ち着いたら学校来なよ。はーあ、祐衣ちゃんの顔見たら安心してお腹すいちゃった。って事で私帰るね!ばいばーい」



慎太郎「え?もう帰るの?何しに来たんだよ」


玲美「祐衣ちゃんの顔見に来たの!じゃあね」


玲美は帰っていった。


はじめ「祐衣、ごめん!」


祐衣「え?」


はじめ「祐衣が苦しんでるの知ってたのに、なかなか救い出せなかった。情けないよ本当に」


祐衣は俯き横に首を振る。


祐衣「…ごめんなさい。私はじめにも慎ちゃんにもひどい事言っちゃった。2人に会わせる顔がないって思って…」


祐衣は震えながら、小さい声で謝罪した。


慎太郎「もういいって。あれが本心じゃないことなんて俺たちはわかってるから。だから顔上げてよ、な!」


慎太郎が祐衣の背中を優しく叩こうとした瞬間、はじめは慌てて慎太郎の手を叩き落とす。


はじめ「テメェどさくさに紛れて祐衣に触ろうとしてんじゃねぇぞ!変態野郎!」


慎太郎「いてぇな!これは慰めの、自然なヤツだろうがよ!」


はじめ「そう言えば昨日は祐衣の右手を握ってやがったな!?誰の許可得て祐衣に触ってんだよコラァ!!」


慎太郎「あれは祐衣ちゃんを救ったんだろうがよ!何キレてんだ馬鹿野郎!」


はじめ「やめてもらえませんかね?!テメェのエロいやらしい手で彼女に触れられる彼氏の気持ちにもなってくださいよ!!」


慎太郎「はぁー?!テメェ昨日は信用とか信頼とか言ってたくせに、何なんだよ!!」


祐衣はこのやりとりを見て、自然と笑顔が戻ってきた。


祐衣「ふふっ、バカみたい」


それからは、野球に勉強に全力で取り組む事ができたはじめ。野球では慎太郎とともに、当然のように最後の全国大会の切符を手にした。


はじめは県大会の決勝でストレートのMAX153キロを何度もたたき出し、ノーヒットノーランを達成し、打つ方でも4安打3本塁打を記録。慎太郎も負けじと、サイクルヒットを達成し、19対0で快勝した。


はじめは勉強でも常に全教科満点という誰も文句のつけようがない成績を残し、慎太郎も満点ではないが、勉強で特待生になれるほどの成績を残す。


そんなある日、今度ははじめの身に危険が迫る事になる………



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