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第6話 母の涙と告白

混乱状態のまま暴れるはじめを、なんとか多目的教室まで連れていくことに成功した一同は、菊田先生と祐衣を残してその場を後にした。


菊田「沖田くん、落ち着いて答えて。いったい何があったの?」


はじめは俯き、瞳孔は開いたまま。はじめは今にも消えそうな声で答えた。


はじめ「YU-TOが死んだんだ……YU-TOみたいになりたかったんだ」


すると祐衣がはじめに話しかける。


祐衣「YU-TOが死んだから、沖田くんも死ぬの?YU-TOみたいになりたかったから、沖田くんは死のうとしたの?」


徐々に祐衣の怒りがヒートアップしていく。


祐衣「私だってYU-TOの事は大好きだし、YU-TOが死んで悲しいのは同じなの!なんで一緒に悲しんでくれないの!?それに沖田くんには友達がいるじゃん!武市くんだっているし、私だっている!!!せっかくお友達になれて嬉しかったのに…」


祐衣は怒りのあまり、目から涙をこぼす。


祐衣「自分勝手に死なないでよ!!!」


祐衣は多目的教室から走って出ていった。


菊田「小林さんっ!」



はじめ「…あーあ、祐衣ちゃんにも嫌われちゃった…死のっと」


菊田「ダメ!このままじゃ埒が明かない!沖田くん!今日は家に帰ろう!送っていくから」


一方教室にいた慎太郎も、気が気じゃなかった。


慎太郎「どうしちゃったんだよ…はじめくん…まさか、またイジメられたんじゃ!?」


慎太郎が悩んでいると、祐衣が目を腫らしながら席に着く。


慎太郎「祐衣ちゃん?どうしたの!?はじめくんは?」


教師B「こら!武市くん!授業中ですよ!」


慎太郎「はい!ごめんなさい!」


休み時間になると、慎太郎はすぐに祐衣にはじめのことを聞く。


慎太郎「祐衣ちゃん、いったい何があったの?」


祐衣「…武市くん…」


祐衣ははじめのことを話そうか迷ったが、慎太郎ははじめの友達だからと、事の経緯を話すことにした。


祐衣「武市くんHDって知ってる?」


慎太郎「え?あー、なんかテレビで見たことある。派手なバンド」


祐衣「私も沖田くんもHDのファンなの。その中でも沖田くんは、YU-TOっていうギタリストが好きなんだ。沖田くん、そのYU-TOみたいにかっこよくなるために野球始めたんだって言ってた。だけど今朝ニュースでYU-TOが死んだって知って…」


祐衣は再び涙をこぼす。


祐衣「私、沖田くんが傷付いてるの知ってたのに、怒っちゃったの…沖田くん、また傷付いちゃったらどうしよう……」


慎太郎「祐衣ちゃん…」


慎太郎は慰めの言葉が思いつかなかった。だからあえて自分の本音を祐衣に伝えた。


慎太郎「はじめくんって幸せ者だね。祐衣ちゃんみたいな可愛い子に心配してもらえてさ」


祐衣「………」


慎太郎「支えるよ。俺もはじめくんを。親友として。あんまり自分を責めちゃダメだよ」


祐衣「武市くん…」


菊田先生と共に帰宅したはじめ。


するといおこは大急ぎではじめの元へ駆けつける。


自宅にいたいおこの元にも学校から騒動の詳細の連絡が入っていた。


いおこ「はじめっ!」


いおこははじめを強く抱きしめた。



菊田「沖田さん、はじめくんは」


いおこ「ご迷惑おかけしてしまい、申し訳ありませんでした。そしてこの子の命を救っていただいて、本当にありがとうございます」


いおこは菊田先生に深々と頭を下げる。


菊田「沖田くんの命を救ったのは私たち教師ではなく、お友達の小林祐衣さんですよ」


いおこ「小林祐衣さん?武市慎太郎くんじゃなくてですか?」


菊田「武市くんも止めてくれてましたが、一番最初にはじめくんが飛び降りようとした時に体を張って守ったのは小林祐衣さんです」


いおこ「そうなんですか…ありがとうございます。あとはこちらで何とかします」


菊田「すみませんがよろしくお願いします」


いおこは菊田先生が帰ったあと、いおこははじめに語りかけます。


いおこ「…はじめ、ごめんなさい」


はじめ「え…?」


いきなりのいおこの謝罪に驚くはじめ。


いおこ「実ははじめがHDやYU-TOさんの事が大好きで、今でも追いかけてるって知ってたの。あの時は、またあんたが食べないなんて言わないようにって、つい意地になってあんたからHDやYU-TOさんを遠ざけようしてた」


いおこははじめが今もYU-TOを追いかけているのを知っていたのだった。


いおこ「野球をやるって言った時、あえて自分で道具を作らせた事も、実は私の意地悪だったの。だけど、あんたはへこたれるどころか、一生懸命に道具を作って、練習して、今3年生なのに、あんな強いチームのレギュラーにまでなって。勉強だって頑張ってる。YU-TOさんを追いかけて野球も勉強も一生懸命になれるなら、と思って黙ってたの」


はじめ「…母さん」


いおこ「今朝学校行くときのあんたを見て、何か様子がおかしいとは思ったの。そしたらテレビでYU-TOさんが亡くなったって知って…」


そしていおこは涙を流しながらはじめを優しく抱きしめた。


いおこ「はじめ、もうあなたから何も取り上げない。野球も勉強も無理に頑張らなくていい。音楽やりたいなら、音楽やったっていい。ギターが好きなら私がプレゼントする。好きにしていいから。だから、母さんや父さんより先に死にたいなんて…死にたいなんて言わないで…お願いだから…」


するとはじめは、自分は何て事をしてしまったんだと、後悔した。


そして静かに涙を流しながら、心配させてしまったいおこに謝る。


はじめ「ごめんなさい。母さん…俺、もう死なないから…」


ぐぅ~…


2人は泣きながらお腹を鳴らした。


気がつけば、もうお昼だった。


いおこ「ふふっ、お腹すいちゃったね。ご飯食べに行こっか」


はじめ「うん!」


泣き終えたはじめの目には生気が戻り、ファミレスで爆食いする、はじめのいつもの姿を見て、いおこは心の底から安心した。


はじめ「…俺野球やめないよ」


はじめは食べながらいおこに言った。


はじめ「慎太郎くんがいるから」


いおこ「そう…でも無理だけはしないでね」


はじめ「うん。母さん、ステーキも食べたい」


いおこ「まだ食べるの!?…」


はじめ「あっ!すいません、ステーキとハンバーグお願いします」


いおこ「…外食なんてするんじゃなかった…」


いおこは静かに後悔した。ランチ2人で15000円。今度はいおこの目から生気が無くなりそうだった。

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