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第5話 肥満児の大変身、そして絶望…

邪魔者を追い出して、野球に打ち込んだはじめ。


あれから時は経ち、はじめは小学3年生になった。


ある日の練習試合の様子。


武市監督「よし、メンバー発表する!1番ショート沖田!」


はじめ「はい!」


はじめはそのバットコントロールと守備範囲の広さと的確なコントロールを持つ強肩で、小学3年生ながらレギュラーを獲得していた。


そして、あれだけ大きかった体も、慎太郎との特訓でかなり絞られ、足もチームで2番目の早さになっていた。


また、友達の慎太郎も着実に成長していた。


武市監督「2番セカンド武市!」


慎太郎「はい!」


慎太郎はチームで一番足が速く、はじめと同じく小学3年生にしてレギュラーを獲得した。


上級生のボールを広角に打ち分ける技術と絶妙なセーフティバントの技術を持ち合わせており、攻める2番打者としてチームを引っ張っていた。


また、守備でも確実性のあるグラブ捌きで、イレギュラーバウンドの処理や、ベースカバー、ショートを守るはじめとのコンビプレー等で記録に残らない、目立たないファインプレーで投手を支えている。


試合開始早々、この1、2番コンビで得点を入れ、チームを勢いづけるのが、この年の加古熊ドルズの攻撃パターンになっていた。


相手チームも対策を考えるも、このコンビに苦手なコースや球種など存在しない為、次のクリーンナップを抑える以外に選択肢は無いが、2人のうち、どちらかがベースにいると、相手投手はバッターに集中できない。ただ、このコンビが打ち損じてくれるのを待つだけという、恐るべき小3として地元では有名になりつつあった。


このコンビは学校生活でもクラスメイトで宿題等の勉強も一緒に行うほど仲が良い。


そんな2人に、また新たな”仲間”が生まれます。


とある日の朝礼。


菊田先生「今日は新しいクラスメイトを紹介します。小林さん、自己紹介して」


小林祐衣「あ、はい、小林祐衣です。宜しくお願いします…」


彼女の名前は小林祐衣。祐衣は極度の人見知りで弱々しいが、、顔がめちゃくちゃ可愛い為、クラスの男子がざわついた。


慎太郎「ねぇ、はじめくん!めっちゃかわいい子が転校してきたよ!!!俺めっちゃタイプだよ!」


はじめ「え?…あ~確かにかわいいね」


菊田先生「席は…沖田君と武市くんの間の席に座りなさい。沖田君、武市君、仲良くしてあげてね」


はじめ「うぃーっす」

 

慎太郎「イエッサー!」


はじめは祐衣に全く興味を示さず、反対に慎太郎の気分は爆上がりだった。


慎太郎「俺武市慎太郎って言うんだ!宜しくね!」


祐衣「え…あ…よ、宜しく…」


慎太郎「ねぇ、祐衣ちゃんって呼んでもいいかな?」


祐衣「…うん…」


慎太郎のトークにあからさまに困った様子の祐衣を見たはじめは、気を利かせて、慎太郎に話をふる。


はじめ「あ~そうだ、慎太郎君、俺今度新しいスパイク買いに行くんだけど、よかったら一緒に見に行かない?」


慎太郎「え?本当に?でも俺スパイクよりグラブほしいんだけど」


はじめ「じゃあ慎太郎君はグラブを選んだらいいじゃん。俺はスパイク見るけどね」


慎太郎「おっけー!いつ行く?」


はじめ「え?あぁー、今日の練習終わりとかどうかな?」


慎太郎「あ!いいね!そうしよう!」


はじめが、機転を利かせてくれて、内心ホッとした祐衣。


きーん。こーん。かーん。こーん。


祐衣の転校初日、無事に1日が終わり、下校しようとした時に”ある物”が祐衣の目に入る。


それは、はじめのランドセルにこっそり貼ってあったYU-TOのギターのステッカーだった。


実は祐衣もHDの熱狂的なファン。見つけた瞬間に、それが、YU-TOのギターだとわかった。


祐衣は戸惑いながらも勇気を振り絞って、はじめに声をかける。


祐衣「あ、、、あの!」


はじめはいきなり声をかけられた為、少しビクッとした。


はじめ「え?、な、何?どうしたの?」


祐衣「え!あ、ご、ごめんなさい…その、そのステッカーって、YU-TOの?」


はじめは驚いた。ステッカーに気付かれたのは、はじめにとっても初めての事だったからだ。


はじめ「え!わかるの!?まじで!?」


先程までとは打って変わり、テンションが上がったはじめ。


そんなはじめに、恥ずかしがりながら、頷く祐衣。


はじめ「いやー、嬉しいよ!今までこれに気付いた人なんて1人もいなかったしHDやYU-TOの良さをわかってくれないんだよ!」


すると遠くから慎太郎がはじめを呼ぶ。


慎太郎「おーい!はじめくん!練習遅れちゃうよ!!早くいこーっ!」


はじめ「今行くよ!えっと、君の名前は確か小林祐衣ちゃんだったよね!?俺沖田一っていうんだ!じゃあ、俺野球の練習あるから、そろそろ行くね!」


急いで下校する2人を見送る祐衣。


祐衣「沖田くん…お友達になれそう」


祐衣は嬉しそうに帰宅した。


帰宅すると母親の小林留美子に、はじめの話を嬉しそうにする祐衣の姿があった。


祐衣「お母さん!私今度こそお友達できそうだよ!」


留美子「へぇ、そう。それは良いことね!で、どんな子なの?」


祐衣「それがね!YU-TOのファンなんだって!」


留美子「え!?まだ子供なのに変わってるわね!親の影響かしら?」


祐衣「それはわからないけど、でもYU-TOの話しをしてる時、凄く嬉しそうだったよ」


留美子「そうなの。お名前は何ていうの?」


祐衣「沖田一君だって。凄く逞しくて勉強もできるんだよ!先生に当てられても、全部答えてたよ!」


留美子「逞しいね!で、好きなの?笑」


祐衣は図星を突かれた。そして顔を真っ赤にしながら頷いた。


一方、練習が終わったはじめと慎太郎。


はじめ「慎太郎くん!今日も一緒に練習しよう!」


慎太郎「え?今日はこのあとスパイク見に行くって言ってなかったっけ?」


はじめはすっかり、その事を忘れていた。


はじめ「あ!そうだった!!じゃあ加古熊スポーツ行こう!」


はじめは慎太郎と武市監督と共に加古熊スポーツへ行き、はじめはスパイクを、慎太郎はグラブを見ていた。


はじめ「今のやつ小さいんだよなー。新しいのはもっと幅が広いやつほしいな…ん~良いのが無いな」


はじめはスパイク選びに飽きて、グラブを見る慎太郎と武市監督の元へ行った。


はじめ「慎太郎くん!良いの見つかった?」


慎太郎「うん。だけどいっぱいあって選べないんだ」


武市監督「そう言えば、はじめくんはスパイク見てたんじゃなかったのか?」


はじめ「はい。でも俺の足に合うスパイクなんて見つからなくて…」


武市監督「だったら少し大きめのスパイク選ぶと良い。好きなの持ってきなさい。買ってあげるから」


はじめ「ありがとうございます。でもお金は母さんから預かってますから大丈夫ですよ」


慎太郎は、グラブを選びながらはじめに問いかける。


慎太郎「ねぇねぇ、はじめくんのグラブ、何でそんなに綺麗なままなの?」


はじめ「え?グラブも手と一緒だから、ガサガサになってグラブが怪我しないように気をつけてるだけだよ。オイル塗るだけじゃ汚れは落ちないし、お母さんがお風呂上がりにしてる事をグラブにもしてるんだ」


慎太郎「えーっ!本当?!それすごいね!」


慎太郎には目から鱗が飛び出る程の衝撃だった。


そんなこんなで無事に新しいスパイクを手に入れたはじめ。


学校では祐衣と仲良くなり、会うといつもHDの話をしていた。


はじめ「でねでね!実は野球やってるのも、YU-TOみたいにかっこよくなりたいからなんだ!」


祐衣「そうなんだ!沖田くんって面白いね!沖田くんは何でYU-TOを好きになったの?」



はじめ「小さい時にテレビに出てるのを見て、かっこいいから好きになったんだ!祐衣ちゃんは?」


祐衣「私は、死んだお父さんに似てるからだよ」


はじめ「え?祐衣ちゃんのお父さん、死んじゃったんだ…ごめん」



祐衣「え!?いやいや、なんで謝るの?お父さん死んだの、幼稚園の時だったから気にしないで!沖田くんのお父さんやお母さんもHDが好きなの」


はじめ「いいや、嫌いみたいなんだ。だから俺はお母さんやお父さんの前でHDやYU-TOの事は話さないようにしてる」


祐衣「そうなんだ…」


はじめ「そうだ!今度の日曜日、久しぶりに野球が休みだからウチおいでよ!凄いの見せるから!」


祐衣「え?!いいの?」


はじめ「うん!きっとびっくりするよ!」


ところがそんな祐衣とはじめにとって悪夢の様な出来事が起こる。


ある日の金曜日、はじめはいつものように朝ご飯を食べながら朝の情報番組を見ていた。


いおこ「はじめ、いつまでも食べてないで、早く学校行きなさい。お母さん洗濯物してくるから」


はじめ「はーい」


“ここで、臨時ニュースです。人気ロックバンド、HDのギタリスト、YU-TOさんが本日午前4時、自宅マンションの一室で倒れているのが見つかり、先程死亡が確認されました。繰り返します、人気ロックバンド、HDのギタリスト、YU-TOさんが亡くなりました”


はじめ「え…」


はじめの思考は、完全に停止した。


いおこ「はじめ、ちゃんと鍵持った?」


はじめ「………」


いおこ「?はじめ?」


今のはじめには何も見えなかった。何も聞こえなかった。


心が無になったまま登校したはじめの元に、祐衣が慌てて駆けつけてくる。


祐衣「沖田くん!大変だよ!YU-TOが!YU-TOが死んだってニュースでやってた!!!」


はじめ「……うん」


祐衣「沖田…くん?」


生気の通ってない目をしていたはじめは、いつもとは明らかに様子が違っていた。


心配になり、祐衣はこっそり、はじめの後をつける。


するとはじめは屋上に来ていた。


そこではじめは”現実”に戻る。


尊敬するYU-TOの死。


はじめは大声で泣き始めた。


はじめ「わぁーっ!!あぁーっ!!!」


祐衣「!!沖田くん!!!だめーっ!!」


そして勢いそのまま屋上から飛び降りようとした。


祐衣は必死にはじめを止めた。


祐衣「沖田くん!!死んだらダメ!!!沖田くん!!!!ダメ!!!ダメだよ!!!!沖田くん!!!!」


祐衣は必死にはじめに抱きつき、はじめの行為を止める。


騒ぎを聞いてやってきたのは数人の教師と慎太郎だった。


慎太郎もはじめを止めに入る。


慎太郎「はじめくん!なにやってんだよ!!!ダメだ!!!!はじめくんっ!」


はじめ「いやだーっ!!YU-TOーっ!!ゆーとーっ!!!!」


菊田「沖田くん!目を覚ましなさい!!!やめなさい!!!!沖田くんっ!!!」


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