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第4話 肥満児の復讐

初練習を終え、帰宅するはじめ。


はじめ「ただいま」


いおこ「おかえりなさい、はじめ。どうだった?初めての野球は?」


はじめ「しんどいけど、楽しかったよ。お友達もできたんだ」


いおこ「よかったじゃないの!どう?続けられそう?」


どこか元気のないはじめは、少しだけ間を置きながら、いおこに聞こえない程度の小さい声でこう答えた。


はじめ「わかんないけど、僕に痛いことをしてきたら100万倍返しにしてやる…」


いおこ「え?なんて?はじめ?」


はじめ「なんでもないよ。僕のお友達、武市慎太郎くんって名前なんだ!走るの凄く速いんだよ!明日練習終わったら一緒に特訓するんだ!」


いおこ「そう!」


いおこははじめに友達ができたことを喜んだ。


そして、いつものように晩御飯を食べていると、宗一郎が帰宅した。


宗一郎「ただいま。はじめー。今日の練習はどうだったんだ?」


いおこ「それがね!しんどかったけど、お友達ができたんだって!」


はじめではなく、いおこが答えた。


宗一郎「そうか!いいことじゃないか!どうだ?続けられそうか?」


宗一郎の問いかけにはじめは、少し顔色を曇らせ、そして”全く関係ない事”を宗一郎に話し始める。


はじめ「お父さん、僕声が小さいんだ。声を大きくする特訓もしたいから、声を録音できるものがほしい」


宗一郎「声?録音できるもの?」


これには宗一郎もいおこも困惑する。


宗一郎「ボイスレコーダーならあるけど、そんな物で声なんか大きくできないぞ」


するとはじめは食い気味に反応する。


はじめ「そう!それ!!それ貸して!!」


宗一郎「それは構わないが…何に使うんだ?」


はじめ「明日になったらわかるよ」


はじめは何を考えているのか全くわからなかった宗一郎といおこ。


翌日、練習を終えて慎太郎と公園で特訓を終えて帰宅したはじめの姿を見て、いおこは驚愕した。


はじめ「ただいま…」


いおこ「おかえ…り!?はじめっ!!!何があったの!?」


帰宅したはじめの姿は全身傷だらけで、服も所々破れていた。


はじめ「お母さん、ごめんなさい。お母さんがせっかく買ってくれた服なのに、破られちゃった」


いおこ「破られた?いったい誰に!?」


困惑するいおこは本気で心配しながらはじめに問いかける。


はじめ「昨日の野球チームにいた4年生の増井と古川と柳だよ」


いおこ「4年生が3人で?!なんで?はじめ、何か言ったの?」


はじめ「何も言ってないよ。でも昨日練習してる時に僕の悪口を言ってるの聞こえたんだ。それで、今日練習が終わったら野球やめさせてやろうって言ってたの」


いおこ「そんな酷いこと…」


いおこの顔はみるみるうちに鬼の形相になっていった。


すると、そこに宗一郎も帰宅してきた。


宗一郎「ただいま…!?はじめ!なんだその姿は!?」


いおこ「あなた、はじめ!今すぐに監督の所に行くよ!」


いおこは居ても立ってもいられず、武市監督へ抗議しに行こうとした。しかし、はじめがそれを止めた。


はじめ「待って!痛いことされたのは僕なんだ。僕が1人で、アイツら全員チームからも、この街からも追い出してやるんだ!だからお父さんとお母さんは絶対邪魔しないで!!!」


宗一郎といおこは驚いた。はじめがこれほど怒りを顕にして大声を出しているのは見たことがないからだ。


はじめ「絶対に許さない。お父さんとお母さんに買ってもらった服を破って、僕に痛いことをしたこと…泣いて謝ったって許さない…」


はじめの目は、復讐心に燃えていた。


その夜、はじめは徹夜で絶対に許さない…と呟きながら何やら作業をしていた。


翌朝、学校では”騒動”が起きていた。


慎太郎は学校に到着すると、異変に気付きます。


慎太郎「何?みんな、どうしたの?…!?」


慎太郎が目にしたのは、掲示板や廊下中に張り出された紙だった。

そこには

“1年生の沖田一を加古熊ドルズの4年生の増井、古川、柳が3人がかりで殴ってきた。野球で勝てないから、沖田一を3人がかりでボコボコに殴った。だから沖田一は学校やめて死にます”


と書かれていた。


同じ紙が校内の各教室のガラスに張り付けられており、学校は少しパニックになっていた。


増井、古川、柳も同じ学校に通っていた為、その張り紙を目にしていた。


増井「ふん。こんなのウソだよ。俺らが1年生相手に3人がかりでいじめるわけないじゃん!」


3人は鼻で笑ったが、次の瞬間校内放送が流れ、その3人の顔が一瞬で青ざめる事が起きる。


増井「おいデブ!お前ちょっと野球うまいからって良い気になるなよデブ!」


“ぼっ!ばん!”


はじめ「痛い!痛いよ!やめて!」


古川「はっははっ!弱いな!もう泣きやがった!!!」


はじめ「やめて!それだけは!だめ!!やめてぇ!」


柳「はは!やめてほしかったら、もう野球やめますって言えよ!!!」


はじめ「…野球やめるから、もうやめてよ!!」


3人の卑劣な行動は一瞬にして校内に広まった。


実は宗一郎から借りたボイスレコーダーはこの為に使用されたのだった。


その頃はじめは放送室に担任の菊田先生と一緒にいた。


菊田「こんな…沖田君、辛い目に遭ったんだね。3人にはきっちり謝らせるから」


はじめ「謝ったって絶対に許さないよ…僕今日は帰る」


菊田「そう…」


はじめはこっそり学校を出ると、ランドセルの中に入ったあの張り紙を、今度は街中の家一軒一軒のポストに配って回った。


当然のように菊田は3人を職員室に呼び出す。


菊田「なんでこんな事したの?」


増井「俺たちは何もしてない!あんなの嘘っぱちだ!」


柳「そうだよ!俺たちがやったって証拠…証拠…あっ!」


そう、証拠は既に校内放送で流出していた。


古川「…なぁ、素直に沖田に謝って許してもらおう」


菊田「古川くん、沖田君は謝ったって許さないって言ってたよ。それに先生も、これは謝ったって許される事じゃないと思うけど?」


次の瞬間、今度は職員室の電話が一斉に鳴り始めた。


教師A「はい、はい、それは大変失礼いたしました」


教師B「それは学校が悪いわけでは…」


3人は何が起こったのか理解できなかった。


菊田「これは、3人のご両親にも来てもらわないとダメね」


3人「!?」


ようやく事の重大さを理解したのか、3人は静かに泣き始めた。


しばらくして3人の母親が学校に到着する。


増井の母「あんたたち!なんてことしてくれたの!!!寄ってたかって、しかも相手の子はあの1年生っていうじゃない!!!」


柳の母「この度はこの子がご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした!!」


古川の母「沖田君のお宅にも誠心誠意謝罪させていただきます!」


校長「私も朝沖田君の顔を見ましたが、傷だらけで見るに堪えないほどでした。謝って済まされる問題ではありません」


一方その頃、はじめは帰宅していた。


そして、ご飯を食べていた。


実のところ、はじめの顔の傷は全く大したことはなく、学校へ行く前に、いおこの化粧道具を勝手に使い、巧みに大怪我に見せかけていたのだった。


この化粧道具の使い方はHDのメイクする様子を参考にしながらやっていたのだが、教師にメイクだと気付かれないほどのクオリティだった。



いおこ「あんたって子は…本当に恐ろしいわね…」


その時学校では騒ぎは留まるところを知らずに、授業どころではなくなり、臨時休校となった。


そして、自殺をほのめかしたはじめの手紙の対策をどうするのか、職員会議が開かれた。


沖田家にも3人の両親が謝罪に来るが、はじめもいおこも全く取り合わずに門前払いにした。


3人の両親を追い返したはじめといおこ。


はじめ「帰った?」


いおこ「帰したわよ。あんた、学校で何やったの?」


はじめ「これ使ったんだよ」


はじめはボイスレコーダーを取り出した。


はじめ「僕がいくらいじめられたって言っても信じてもらえないと思ったから、お父さんに借りたんだ。絶対いつかいじめられると思ったから。昨日慎太郎君と特訓した後に3人が来た時にこっそり録音したの。それを朝、学校で放送したんだよ」


これにはさすがに、母親のいおこも鳥肌が立った。我が子ながら恐ろしすぎる、そう思った。


そして、いおこは野球について質問する。


いおこ「で、野球はどうするの?続けるなら早く違うチームを探さなきゃね」


その質問にはじめは食い気味で答える。


はじめ「え?何で僕がドルズ辞めないといけないの?僕はドルズで野球やるの。辞めるのは、あの3人だよ」


いおこ「え?」


するとインターホンが鳴った。


いおこ「はい。」


武市監督「あー、沖田さん。監督の武市です。少しお話させてもらえませんか?」


するとはじめは待ってました!と言わんばかりに喜んだ。


そしていおこは武市監督を家の中に招き入れた。


武市監督「この度は私の監督不行き届きで、はじめ君に辛い思いをさせてしまい、大変申し訳ありません。あの3人はチームを辞めさせます。こんな事で許してもらえるとは思っていませんが…」


武市監督は2人に土下座で謝った。


はじめ「え?なんで監督が謝るの?僕をいじめたのは増井と古川と柳だよ。慎太郎君は僕の一番の友達だよ」


その言葉を聞いたいおこは、武市監督の元に近づく。


いおこ「武市さん、顔をあげてください。はじめはドルズで野球がやりたいと、はっきり言ったんですよ」


武市監督「え?」


はじめ「僕は慎太郎君と野球をやりたい!慎太郎君とじゃなきゃ嫌!」


武市監督「はじめくん…実は慎太郎も学校から帰ってきて、はじめくんを守ってあげて!って言ってたんだよ。はじめくんは僕の友達だってね」


いおこ「そうなんですか。食べることしか頭になかったこの子に、そんな素晴らしいお友達を作る環境を用意して下さった事、本当に感謝しています」


武市監督「沖田さん…はじめくん、チームに戻って来てくれたからって、練習で手加減はしないからな!」


はじめ「そうだよ!練習がしんどそうだからドルズに入ったんだ!手加減なんかしないでよ!」


その後、増井、古川、柳は学校に行くと…


生徒A「おい、あいつら1年生相手に3人がかりでいじめてた奴らだろ?どの面下げて学校来てんだよ!(笑)」


生徒B「あんなゴミクズ3人衆は無視しよっと」


生徒C「…きもっ」


3人は加古熊ドルズを追放され、学校での居場所も完全に無くしていた。


3人の両親も、”下級生1人に3人がかりでいじめた子の親”と、ヒソヒソされていた。


そして居づらくなったのか、3家族共、はじめの住む街から引っ越して行った。


その情報を聞いたはじめは、不敵な笑みを浮かべた。


はじめ「よし!アイツら3人、まとめて街から追い出せた!これでアイツらの顔見なくて済む!」


これで心置きなく野球ダイエットに、集中できると、はじめは喜んだ。


ところがそんなはじめにさらなる悲劇が起こる事になるとは、この時には想像もつかなかった。。。

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