第35話 進化!!慎太郎、プロポーズ&新たな命!!
はじめは電話の後、一呼吸置いた。そして、自分が身を置く環境を冷静に考え始めた。
左の強打者沖田一との決別。
甲子園5期連続優勝の投手沖田一との決別。
今まで伝説を残し続けてきた“2人”の選手を、自分の意思で消し去ってしまった…
いや、違う!
この“2人”の選手が融合して今の自分になったんだ!
投手、沖田一は投手心理と打者を深く理解させる知識をくれた。
左の強打者、沖田一は打撃における力の使い方を教えてくれた。
祐衣が“希望”を教えてくれた。
慎太郎が捕手としての技術を目の前で見せ続けてくれた。
自分の決断は何一つ間違っちゃいない。
今ならやれる。
だから今からやるんだ。
はじめの目の色は、以前のそれとは違い並々ならぬ決意を宿し、自信や確信を持ちながらも冷静さを兼ね備えたオーラが一の全身から放たれた。
その翌日、キャンプ中のスタジアムでは、はじめの“変貌”を目の当たりにした全ての人からは、あまりの凄さに言葉を失った。
オープン戦では3試合のみに出場するが、実は特に目立った成績ではなかった。
しかし対戦した投手からは
“あんな恐ろしいバケモノとは二度とやりたくない。命があってマウンドを、下りられたことが奇跡だ”
と言われるほど圧倒的な存在感と威圧感があった。
一方の慎太郎も着実に成長を遂げていた。オープン戦でもまずまずの成績を収め、開幕戦を“指定席”の3番キャッチャーとして迎える事は既定路線だった。
開幕前夜、慎太郎はミットの手入れを入念に行いながら電話で誰かと話していた。
その電話の相手は麻生玲美。
日本を代表するトップ女優だ。
彼女は中学時代のはじめと慎太郎と祐衣の同級生で、中学3年の時に祐衣が家出をした時にはじめ達と一緒に探し回った人物。
慎太郎「まだ誰にも気付かれてないね、俺達の事」
玲美「うん…祐衣ちゃんのお母さん、本当に残念だったね…」
慎太郎「あぁ。俺もお通夜と告別式に参加したけど、祐衣ちゃん、かなり憔悴してたよ」
玲美「大丈夫かな…祐衣ちゃん」
慎太郎「俺達が支えるしかないよ。友達として、はじめの相棒として」
玲美「そうだね。私も久々に祐衣ちゃんに会いたいし、今年は仕事をセーブする」
慎太郎「けどビックリするぞ。今度は俺達が世間を騒がせるかもな」
玲美「慎くんは、もう十分騒がせてるじゃん」
慎太郎「そうか?まだまだだよ。今年俺は日本一になる。そしたら…」
玲美「待って!その先は日本一になってから聞きたいな」
慎太郎「……そうだね」
この2人の物語も静かに動き出していた。
慎太郎はこのシーズン、前年を上回る好成績を収める。
打率.376、65本塁打、154打点
なんと本塁打の日本記録を更新し、三冠王を獲得する活躍をこの20歳の若武者はやってのけたのだ。
さらに、チーム防御率1点台のチームの司令塔として異次元の才能を発揮しリーグ優勝に大きく貢献する。
そしてプレーオフ、日本シリーズでも勢いそのままに、一度も負けること無く難なく日本一となり、文句無しのシーズンMVPと日本シリーズMVPを同時受賞する。
そして運命の夜、慎太郎は玲美を呼び出す。
慎太郎「玲美ちゃん。俺日本一になったよ。だから結婚してください」
玲美「慎くん…うん。大好きだよ」
玲美は慎太郎にキスをした。
慎太郎は最高の形でプロポーズを成功させると雄叫びを上げ喜びを爆発させた。
玲美「ふふっ……慎くん。私からも1つ報告があるの」
慎太郎「報告?」
玲美「ありがとう。私に幸せをくれて」
そう言いながら、玲美は自分のお腹をさすった。
慎太郎「ま、まさか!あの時の!?」
玲美「ちょっと!やめてよその言い方(笑)!」
慎太郎「玲美ちゃん、最高だよ!!!」
そう言いながら優しく玲美を抱きしめる慎太郎。
慎太郎は今、幸せの最高潮にいるのだった。
慎太郎がプロポーズした日の少し前、アメリカでは……。
ドルズは2年連続でワールドシリーズへ進出、無傷のまま迎えた勝てば優勝という大一番の試合前、はじめはある人物と会話していた。
?「沖田、いよいよだな」
はじめ「そうですね」
?「まさかお前と組むことになるなんて、あの時は想像もできなかったよ」
はじめ「それも人生ですよ、小前さん」
そう、小前悠介だ。
はじめが高校1年生の時に小前は難舞高校のエースだったが、左肘のケガで最後の夏を終えたあの悲運の左腕とはじめが、この大一番でバッテリーを組むのだ。




