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第27話 エースの形

はじめ「ぅ、うぁーー!疲れたぁーーー!」


慣れない捕手として戦ったこの県大会ははじめにとって大変なものだった。


甲子園への切符を手に入れた日、帰宅すると部屋で叫びながら倒れ込むはじめ。


はじめ「疲れたよー!!!しんどいよー!!!」


いおこ「うるさい!」


はじめ「すんませーん。“俺の気も知らねぇで、えらそうに”」


するとそんなはじめの元を祐衣が訪ねる。


祐衣「はじめー。お疲れ様。大変だったね、慎ちゃんの代わり」


祐衣の労いの言葉にはじめは意外な言葉を口にする。


はじめ「……慎太郎の代わりは務まらなかったよ。どう頑張ってもな。だから俺なりにキャプテンとキャッチャーやってみたんだ。勝てたから良かったけど、アイツやっぱりすげーよ」


祐衣「そうなの?でもすごかったよ?」


すると、何か思い立ったようにはじめは立ち始める。


はじめ「そうだ!忘れてた!祐衣、今日店って空いてる?」


祐衣「何の店?」


はじめ「祐衣が働いてるフラワーショップ」


祐衣「うん」


はじめ「よし!早くしないと面会時間過ぎちまう!祐衣も行こう!母さーん!慎太郎の病院まで運転して!」



いおこに送迎をお願いするはじめ。


病院に着いたはじめと祐衣は病室に行くと、もう慎太郎はいなかった。


はじめ「あの野郎……」


はじめは慎太郎に電話かけた。


慎太郎「ん?…はじめ?…なんだよ」


はじめ「今何処にいるんだよ」


慎太郎「家だけど」


はじめ「家にいるんだな?今から行くからそこから動くなよ!!」


慌てて慎太郎の自宅まで向かった。


慎太郎の自宅に到着するはじめと祐衣。


はじめ「退院したんなら一言ぐらい言えよ」


慎太郎「何言ってんだよ退院日は教えてただろうが、あ!祐衣も来てくれたんだ!」


慎太郎は祐衣が花を持っているのに気づく。


慎太郎「祐衣ちゃん、ありがとう!気が利くな本当に」


そう言いながら花を受け取る。


祐衣「それ、はじめが買ったんだよ」


慎太郎「え?そうなの??」


はじめ「ってか、甲子園は間に合うのか?」


慎太郎「あぁ、明後日からチームに合流するよ。甲子園まで引っ張ってくれてありがとうな、はじめ」


はじめ「だったら、これ返すよ」


そういって返したのは背番号2だ。


はじめ「俺は保村から背番号取り返さなきゃならねぇから、忙しいんだ。だからもう行くよ。祐衣も帰ろう」


そう言い残して、はじめは慎太郎の家を後にした。


それから慎太郎がチームに合流する。


そしてブルペンに行くと、黙々と準備を進めるはじめの姿があった。


はじめ「慎太郎、早く防具つけてこっち来いよ!」


慎太郎「あぁ」


そしてその投球練習中に慎太郎はある”違和感”を覚える。


“ビュルルルルルルルルルッ!!!”


“スパァーーーンッ!!!”


慎太郎「こ、この真っすぐは……」


はじめ「次、ラスト真っすぐ、ど真ん中行くぞ!」


その違和感は甲子園の決勝で、またしても驚きの結果として表れることになる。



一方、この県大会でエースとして全試合に登板した保村は複雑な心境だった。


約3ヶ月のブランクがありながら全てにおいて自分より勝っているはじめのピッチングに圧倒されている自分がいたからだ。


保村「そうだ。このチームのエースは沖田さんなんだ。自分じゃない。自分なんて130キロの真っすぐしか投げられない並のピッチャーなんだ……」


保村は再び自信を喪失する。


その翌日の投球練習中に保村のピッチングを遠くから見守るはじめと、保村のピッチングの相手をする慎太郎の姿があった。


慎太郎「どうした?県大会のお前のピッチングはこんなもんじゃなかったぞ。何処か痛めてるんじゃないのか?」


保村「いえ、何処も痛くありません…」


慎太郎「保村?」


すると遠くで見守っていたはじめは保村に声を掛ける。


はじめ「保村!ちょっとこっち来い!」


はじめの声に少しビクッとした保村だったが、すぐにはじめの元に小走りで向かう。



はじめ「すまない」


保村に謝罪するはじめ。


困惑する保村にはじめは話す。


はじめ「理不尽だよな。県大会で背番号1背負って1人で投げぬいたのに、甲子園では3に変更されちまって。せっかく自信を取り戻した矢先で登板機会失うのって本当に理不尽だと思う」


保村は俯き、目線を下ろす。


はじめ「でもな、もしも、もしも俺に万が一の事があった時に難舞のマウンドに立てるのはお前しかいないんだ。俺だって完璧じゃない。日によってコンディションは変わるんだ。打ち込まれることだってあるかもしれねぇ。そん時に頼れるピッチャーはお前しかいないんだよ。何も先発して完投することだけがエースの形じゃない、本当のピンチの時に頼れる奴だって立派なエースの形だと、俺は思う。だから一番近いファーストのポジションで支えてくれ。それで俺が崩れた時は、お前がマウンドに立ってくれ」


そう保村に声をかける。


保村「……気休め言わないでください。沖田さんに抑えれない相手に僕の球なんて通用するはずないじゃないですか」


保村はすっかり自信を喪失していた。



はじめ「そんな事無い。お前の球は、、、お前の球は小前さんに似てるんだ。1回戦からずっと、お前の球を捕ってた俺が言うんだ。この沖田一がそう言ってんだよ。だからつべこべ言わずに自信持て!そして偉そうに威張ってろ!わかったな!」


保村を鼓舞するような声掛けをし、その場を後にする。


保村「……どうせマウンド譲る気なんか無いくせに……」


保村はそう呟くと、その場を後にする。

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